研究課題/領域番号 |
22K01368
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
五十嵐 元道 関西大学, 政策創造学部, 教授 (20706759)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 国際人道法 / 国際組織 / 武力紛争 / ビッグデータ / 国際刑事裁判 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、デジタル・ウィットネスが武力紛争に関するデータの生成にいかなる影響を与えているのかを分析する。デジタル・ウィットネスとは、武力紛争で目撃した一次情報などをデジタル・データとして発信すること、または発信する人々のことである。今日の紛争では、市民などがSNSを通じて無数の情報を発信しており、それが武力紛争に関する膨大なデータ群となっている。そうしたデータ群が国際組織による事実調査や国際刑事裁判にどのような影響を与えているのか。本研究は社会学の理論を援用し、国際政治学の立場からこの問いに答えることを目指す。
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研究実績の概要 |
今年度は、大きな成果があった。まず、戦争データを生成するエコシステムについて、その基本的な構造がかなり解明できた。戦争データは、戦争の現実をいくつかの認識フィルターにかけることで生成される。主要なフィルターとして、本研究は2つのフィルターを分析した。第一に、国際規範のフィルターである。このフィルターは、戦争の現実から、どの要素を抽出するべきなのかを決定する要因のひとつである。具体的には、戦死者保護規範や文民保護規範などがあり、国際人道法として明文化されている。第二に、科学的分析フィルターである。このフィルターでは、データの生成に関係する分野の専門家が、科学的なルールに則って戦争の現実をデータに変換する。たとえば、統計学、法医学、化学の領域が関係する。 これら2つのフィルターを通じて戦争のデータを生成する際、重要なのが人道ネットワークと呼ぶべき存在である。人道ネットワークは、国際組織、大小さまざまなNGO、科学研究に関係する専門機関などが、戦争被害について調査し、データを生成するものである。このネットワークは、複数の領域の専門家や実務家をアドホックにつなぐことで形成される。もちろん、主権国家も戦争データの生成では重要な役割を果たすことは多いが、近年では、人道ネットワークの存在は不可欠になりつつある。 以上のような研究成果を今年度は、『戦争とデータ』(中央公論新社、2023年)というかたちで出版することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、元々の計画どおり、戦争データの生成に関するエコシステムについて、基本的な構造を明らかにすることができた。その点で、非常に順調な進展と言える。このエコシステムの根幹をなす、認識フィルターの構造、ならびにデータ生成に関与する人道ネットワークの分析が十分に進み、その研究成果を単著として発表できた。さらに言えば、その単著『戦争とデータ』によって大佛次郎論壇賞を受賞することになり、研究は非常に満足いく成果を出したと考える。 次年度では、いよいよ戦争データのなかでも、デジタルデータについて本格的な研究成果の発信を計画している。現在、戦争のデジタルデータに関する分析が進んでいる。まず、戦争のデジタルデータの全体像を明らかにし、分類がある程度済んだ。さらにデジタルデータから生成されるデジタル証拠について、国際刑事裁判の観点からその性質を分析している最中である。この研究の本丸は、デジタルデータからデジタル証拠を生成する際のエコシステムの解明であり、とりわけ、主要なアクターの様態を明らかにすることである。この点について、2024年の7月と11月に専門家が集まる研究会にて、未発表ペーパーを報告する予定になっている。その日程に沿って、現在ペーパーを執筆中である。 以上から、本研究は、おおむね順調に進展していると結論することができる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、何よりまず戦争のデジタルデータの性質を先行研究を超えて、より明確にすることが必要となる。そのためには、戦争のデジタルデータに関する具体的な事例の粘り強い分析が重要である。本研究では、主にシリア紛争に着目して研究を進めている。現状、この方針で問題ないと考える。 すでにデジタル証拠に関する国際刑事裁判の判例については、ある程度、整理・分析することができた。ここからは、いよいよデジタルデータとデジタル証拠をつなぐ、様々なアクターのネットワークを分析する段階である。ネットワークに関連する資料は、すでに収集しており、その分析と整理が課題である。他方、分析モデルもできあがっているため、予定通りの進度である。 この分析がある程度進んだところで、ペーパーを完成させ、2024年に予定されている2度の研究会にかけ、ブラッシュアップする。すでにそれぞれの研究会の予定が組んである。そして、ペーパーを最終的に公刊することで、この研究計画の総決算とする。
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