研究課題/領域番号 |
22K01410
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07020:経済学説および経済思想関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鍋島 直樹 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (70251733)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 経済学史 / 経済思想 / 経済学説 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、学説史的展望にもとづき、ケインズ経済学の形成・発展の過程について考察するとともに、その今日的な意義と可能性を闡明しようとする点にある。その際には、ケインズと並ぶ「有効需要の理論」の提唱者として知られているミハウ・カレツキの貢献にも注目する。すなわち、ポスト・ケインズ派の理論的源泉となっているケインズとカレツキの原典に立ち返ることによって、ケインズ経済学の再生・発展の可能性を探究しようと試みる。これと併せて、現代政治経済学の諸学派のあいだの連携を通じて、代替的な経済理論を構築していくための糸口を探る。
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研究実績の概要 |
2023年度には、カレツキの経済学の再検討を中心に研究を進めた。とくに1943年の論文「完全雇用の政治的側面」に焦点を合わせ、資本主義経済において永続的な完全雇用を達成するための条件は何かについて、現代政治経済学の展開を踏まえて考察した。 カレツキは、1943年論文において、政府が経済政策を通じて完全雇用を達成することには重大な社会的・政治的障害が存在すると主張した。マルクスと同じくカレツキもまた、資本家が労働者を自らの支配・管理のもとにおくためには、「産業予備軍」という失業者のプールを必要とするに違いないと考えたのである。それゆえカレツキは、資本主義経済のもとで永続的な完全雇用がもたらされる可能性について懐疑的な見方を示した。このように資本主義経済の内部における政治的要因のはたらきに焦点を合わせつつ、その制度的構造と歴史的動態を解明しようと試みている点において、われわれは、この1943年の論文に政治経済学者としてのカレツキの真骨頂を垣間見ることができる。 1943年論文において提示された資本主義の長期的動態に関するカレツキのビジョンがどのような社会的・歴史的背景のもとで成立したのか、そしてそのビジョンが時とともにいかなる変遷をたどったのかを追跡した。またそれと併せて、資本主義の「黄金時代」とその崩壊から、新自由主義時代を経て、2008年の世界金融危機によって始まった新自由主義的資本主義の構造的危機に至るまでの第二次世界大戦後の資本主義の長期的動態を読み解いていくうえで、カレツキの洞察からどのような教訓を汲み取ることができるのかについても考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的は、ケインズ経済学の今日的可能性を明らかにすることにある。この目的を果たすべく、2023年度にはカレツキの経済学のついての検討を進めた。その成果については、近く論文の形にまとめて公表する予定である。これまでの成果にもとづき、今後はケインズ経済学の形成と発展に関する研究を、さらに深く進めていくことができるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を踏まえて、ケインズ、カレツキ、ポスト・ケインズ派経済学についての考察を進めていく。これと併せて、現代の異端派経済学の動向をなるべく広く把握するように努める。研究期間全体を通じて、経済学における過去と現在の往復作業を続けていくことになるであろう。
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