研究課題/領域番号 |
22K01436
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 和博 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (10362633)
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研究分担者 |
佐藤 泰裕 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30332703)
森田 忠士 近畿大学, 経済学部, 准教授 (50635175)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 不均一な生産性 / 独占的競争 / 都市経済学 / 多様性 / 生産性 / 経済厚生 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、企業の生産性が不均一な場合の独占的競争理論を都市経済学に取り込んだモデルの構築を行い、経済厚生の分析を行う。企業の生産性が不均一な場合、企業の集積は資源の再配分を通じて新たな集積のメリットを生み出す。また、最適都市規模における、独占的競争による価格の歪みが経済厚生に与える影響の分析を、既存研究(Abdel-Rahman and Fujita (1990)、Behrens and Murata (2009))よりも一般的な枠組みで行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、企業の生産性が不均一な場合の独占的競争理論を都市経済学に取り込んだモデルの構築を行い、経済厚生の分析を進めている。企業の生産性が不均一な場合、企業の集積は資源の再配分を通じて新たな集積のメリットを生み出す。また、最適都市規模における、独占的競争による価格の歪みが経済厚生に与える影響の分析を、既存研究(Abdel-Rahman and Fujita (1990)、Behrens and Murata (2009))よりも一般的な枠組みで行っている。 国際貿易、都市経済学の分野では、企業の生産性が均一な独占的競争モデルが伝統的に用いられてきたが、企業の生産性が不均一な場合の分析は、2000年代以降、国際貿易の分野で理論的、実証的に行われてきた。その結果、企業の生産性の不均一性は、新たな外部性をもたらし、経済厚生分析の結果を大きく変えうることがわかってきた。具体的には、生産性が異なる企業が競争することにより、生産性の低い企業が過剰に参入し、過大生産を行うことが示されてきたのである。 しかし、都市経済学の分野では、生産性が均一な独占的競争理論による分析が続けられてきた。これは、生産性が不均一な場合の理論的分析が難解なこと、及び都市経済学分野で不均一生産性が結果にもたらすことが必ずしも明確ではなかったことによるものである。 本研究では、企業の生産性が不均一な独占的競争モデルを都市経済学に取り込んだモデルの構築を行い、分析を進めている。その結果、生産性が不均一な場合は、都市規模が過少になる傾向があることを示した。理論的な分析はまだまだ進んでおり、今後も新たな結果が見いだされることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね予定通りに進展している。生産性が不均一な場合の都市経済学モデルは、解析の困難さからこれまで殆ど分析されてこなかった。しかし、本研究では、通常は2セクターのMeltiz and Ottaviano(2008)モデルを1セクターに変えると、分析が上手くいくことを発見した。解析を進めていくと、企業の生産性の不均一性によって、都市の企業数が過少になる傾向にあることが示された。通常の独占的競争の都市経済学のモデルでは、企業数は最適もしくは、過剰になることが多く、過少になる傾向にあることは新たな結果であるということができる。これは、生産性の不均一性が、生産性の低い企業の過剰参入をもたらし、生産性の高い企業の過少参入と過少生産をもたらすことによるものである。 さらに、大都市の人口が増加すると、多くの企業が参入し、参入がもたらす競争によって過少参入の傾向は緩和される。このことによって、大都市の人口の増加は、都市の経済厚生を改善させる傾向にあることが分かった。これは、人口、そして企業の集積が大都市の経済厚生を改善させる新たなチャンネルであり、これまで見つけられてこなかった集積の経済であるということができる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、現在のモデルの解析をさらに進め、いわゆる「ヘンリー=ジョージ定理」に対して、本研究が持つ意味を考察する。Abdel-Rahman and Fujita (1990)の研究は、Dixit and Stiglitzの独占的競争モデルを用いると、「最適都市規模においては独占的競争企業の固定費用の総和が都市の地代の総和に等しくなる」ことを示した。これは、ヘンリー=ジョージ定理が成り立っていることを示している。それに対し、Behrens and Murata (2009)の研究は、Dixit and Stiglitzモデルとは異なり、需要の価格弾力性が可変のケースにおいては、企業の過剰参入が発生し、ヘンリー=ジョージ定理が成立しえないことを示した。本研究は、Behrens and Murata(2009)の環境をさらに一般化し、企業の生産性に不均一性を導入すると、可変弾力性による過剰参入と、不均一性による過少参入が打ち消しあい、ヘンリー=ジョージ定理が成立する場合があることを見出したのである。これらは新たな結果であるということは出来るが、どれだけ一般的な関数形で成立する結果であるかは不明瞭である。 今後は、ヘンリー=ジョージ定理に関する結果の一般性、頑健性の検証を行っていく。それとともに、研究会、学会での報告を行い、そこで得られる意見を反映させていくことで、論文の内容を磨いていく計画である。
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