研究課題/領域番号 |
22K01453
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
石川 大輔 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (50419454)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 裁量的財政政策 / 社会厚生 / 多国間パネルデータ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、世界の裁量的財政政策がマクロ経済の安定化ならびに社会厚生の向上に寄与しているかについて、その背後にあるメカニズムを含めて、新たな視点から再検証を行うことである。その目的を達成するため、本研究では最新の多国間パネルデータを用いて、どのような期間ならびに国々において裁量的財政政策による経済の安定化が機能していたかを詳細に分析する。
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研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、世界における裁量的財政政策がマクロ経済の安定化ならびに社会厚生の向上に寄与しているかについて、その背後にあるメカニズムを含めて、新たな視点から再検証を行うことである。 2023年度においては、特に世界における脆弱国の財政政策に関する実証分析を行った。脆弱国とは、大まかにいうと、低所得や紛争などに起因して財政政策を含む行政能力が著しく低い国々のことを指す。脆弱国は、一般的な新興国や発展途上国と比べて、より複雑な社会政治的な環境下に置かれていることから、それらの国々を対象として分析することは非常に意義があるといえる。 具体的な分析の流れは、被説明変数に裁量的財政政策の代理変数となり得る政府支出(対GDP比)を、説明変数に景気循環要因(実質GDP成長率)をとり、操作変数固定効果モデルに基づいてパネル推定を行うというものである。なお、実質経済成長率に内生性が存在する可能性を考慮し、操作変数として同変数の1期前のラグ値を採用した。また、構造変化が発生している可能性も考慮し、サンプル期間を前半(1985-1999)と後半(2000-2015)で分割した分析も行った。 その結果、脆弱国の裁量的財政政策は概ね景気順応的となっており、景気循環を不安定化させるように作用していたことが明らかになった。さらにサンプル期間を分割してみると、とても興味深い姿が見えてくる。前半期間(1985-1999)においては、係数推定値は統計的に有意ではなく、脆弱国の裁量的財政政策は景気と相関を有しないことが観察された。一方で、後半期間(2000-2015)においては、係数推定値は統計的に有意に正、つまり脆弱国の裁量的財政政策は景気順応的となっており、景気循環を不安定化させる程度が強まっていたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主な理由は二つある。第一に、2022年度(初年度)における研究の途上において、計量分析に係る技術的な困難(内生性や景気循環指標の抽出などに起因するバイアス等)に直面してしまい、そのことにより研究の進捗が遅れてしまったことがある。2023年度においては、それらの困難のうちいくつかは解決することができたが、未だに進捗の遅れを完全には取り戻せていない。第二に、所属機関において教員の退職者が続出した一方で、その補充が追い付いておらず、結果的に授業や学内業務の負担が増加し、研究に充てる時間が減少してしまったことがある。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては、対象国のカバレッジを拡張し、世界における地域別の財政政策に関して実証分析を進めていく予定である。先行研究を概観すると、中東・中央アジア地域やアフリカ地域を対象とした多国間パネルデータによる実証分析が少ないことから、同地域に関する分析に特に注力する予定である。 また、多くの先行研究において、固定効果推定等のパネル分析の枠組みの下で点推定が行われているところ、2024年度における本研究では財政政策の経済安定化効果に関する動学的な特性を明らかにするために、近年のマクロ計量分析の分野で注目を集めている最新の局所射影法(local projections method)に基づくインパルス応答関数による分析を試みる。なお、もし局所射影法において構造ショックを適切に識別することができれば、政府支出と経済成長率の間に存在し得る内生性バイアスに対しても適切に対処できる可能性があるため、そのことも本研究の重要な貢献になり得る。
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