研究課題/領域番号 |
22K01476
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々木 啓明 京都大学, 経済学研究科, 教授 (70534840)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 自動化技術 / 経済成長 / 2部門モデル / 所得分配 / 経済厚生 / 所得格差 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,2部門内生的成長モデルを構築して,自動化技術の進展が,経済成長,雇用,賃金,所得分配,そして所得格差に与える影響を理論的に分析し,さらに,数値シミュレーションに基づく将来予測を行い,自動化技術が進展する経済社会のより良きあり方を経済学の視点から政策提言することである.昨今,自動化技術の進展が経済成長等に与える影響が盛んに分析されているが,先行研究の多くは,1部門・1財モデルに基づいており,最終財と自動化資本の差異を十分に考慮していない.自動化技術の進展が経済に与える本質的影響を分析するためには,最終財と自動化資本の異質性を考慮した2部門モデルが必要となる.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、2部門内生的成長モデルを構築して、人口知能(AI)やロボットに代表される自動化技術の進展が、経済成長、雇用、賃金、所得分配、そして所得格差に与える影響を理論的に分析し、さらに、数値シミュレーションに基づく将来予測を行い、自動化技術が進展する経済社会のより良きあり方を経済学の視点から政策提言することである。昨今、自動化技術の進展が経済成長等に与える影響が盛んに分析されている。しかし、先行研究の多くは、生産された最終財が費用ゼロで自動化技術(自動化資本)に転用可能な1部門・1財モデルに基づいており、最終財と自動化資本の差異を十分に考慮していない。自動化技術の進展が経済に与える本質的影響を分析するためには、最終財と自動化資本の異質性を考慮した2部門モデルが必要となる。 本年度は、前年度に引き続きモデル構築およびモデル分析を進めた。前年度は最終財生産部門と自動化資本生産部門の双方の生産関数がコブ=ダグラス型である場合のモデルを構築したのに対して、本年度は代替の弾力性が一定のCES型生産関数を用いたモデル構築を行った。コブ=ダグラス型生産関数の場合は解析的分析を行うことができたが、CES型生産関数の場合は解析的分析は困難であったため、現実的に妥当なパラメーターの下で、数値計算を行い、一定の成果を得た。当初予想していた通り、代替の弾力性の大きさに応じて、異なる結果が得られることがわかった。 コブ=ダグラス型生産関数の場合には、自動化資本の蓄積とともに労働分配率が急速に低下していったが、CES型生産関数を用いて労働と自動化資本の代替の弾力性が1より大きいと設定すると、自動化資本の蓄積とともに労働分配率は低下していくが、その低下は緩やかになり、より現実的な結果を生み出すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、2部門内生的成長モデルを構築して、自動化技術の進展が、経済成長、雇用、賃金、所得分配、そして所得格差に与える影響を理論的に分析し、さらに、数値シミュレーションに基づく将来予測を行うことが目的である。そして、本年度は、既存の2部門内生的成長モデルを参考にしつつ、最終財生産部門と自動化資本生産部門が存在する2部門成長モデルを構築し、そのモデルを分析することが当初計画であった。
前年度の研究成果を踏まえて、CES型生産関数を用いた分析を行うことが本年度の課題であり、研究実績の概要に記したように、その課題に対して一定の成果を得ることができた。ただし、分析結果は数値計算に大きく依存しているので、パラメーターの設定次第では異なる結果が得られる可能性があり、頑健な結果とは言えない。そこで今後は、数値計算で得られた結果を目安として、可能な限り解析的手法による分析を進め、より頑健な結果を得ることが検討課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、現在までの進捗状況に記したように、両部門の生産関数がCES型である場合の解析的分析を進めることが必要である。これにより、頑健な結果が得られる。 次に、所得分配および所得格差の分析を進めることが必要である。これまでに得られた結果は、代表的家計という1種類の消費者が動学的最適化を行うモデルに基づくものであった。そして、自動化資本の蓄積に伴って労働分配率が低下していくという結果は、現実と矛盾するものではない。しかし、所得格差という観点からすると、代表的家計の想定には限界がある。なぜなら、家計は賃金所得と資本所得の双方を獲得することになるので、労働分配率が低下しても資本分配率は上昇するため、それは家計にとって大きな問題とはならないからである。 そこで、交付申請書に記したように、予算制約と貯蓄行動の異なる2種類の家計が動学的最適化を行う連続時間モデル、および、無限視野の家計と世代重複家計が共存する離散時間モデルを用いて、家計間の異質性を導入した分析を行うこととする。これにより、時間選好率の違いを考慮することが可能となり、所得格差の分析を行うことができる。それぞれのモデルを構築して解析的分析を行って結果を得た後には、各国のデータに基づい てモデルのパラメーターを推定し、数値シミュレーションによる将来予測を行う。
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