研究課題/領域番号 |
22K01517
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小原 美紀 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 教授 (80304046)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 若年就業率 / 定着率 / キャリア教育 / 高卒就職 / ジョブマッチング / 就業困難者 / ランダム比較試験 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は次の3つの質問に答える。(1)高校で行われるキャリア教育により高校生の就職確率を改善できるか、(2)高校におけるキャリア教育により、高卒就労者の定着率を改善できるか、(3)一人一社制といった日本特有の制度や習慣は高校生・高卒生のジョブマッチングにどう影響しているか、である。就職困難層として高卒予定就労者に注目し、そのような学生の多い高校において、様々なキャリア教育を実験的に導入し効果を検証する。効果はジョブマッチングの良さとして、就職意欲や就職率だけでなく、就職後の定着率や生産性(賃金や働きぶり等)を捉える。分析全体として、若者の働く意欲を引き出すキャリア教育の在り方を議論する。
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研究実績の概要 |
本研究は、若年就職困難層として高卒就労者に注目し、彼らのジョブマッチングを良くする就労支援策を明らかにすることを目的としている。複数年の研究全体を通じて以下の3つの問いに答えることが目標である。1)高校で行われるキャリア教育により高校生の就職確率を改善できるか、2)高校におけるキャリア教育により、高卒就労者の定着率を改善できるか、3)一人一社制といった日本特有の制度や習慣は高校生・高卒生のジョブマッチングにどう影響しているか。これらの問いに答えるためにマイクロデータに基づいた統計分析を行う。とくに収集が難しいと考えられるのが、実在している高校において行う実験調査データである。これに基づきキャリアプログラムの効果を計測し、可能であれば、対象者を追跡することでジョブマッチングへの影響を考察する。 本年度は、第一に、上記の3つの疑問のうち最初の問いに答えるための準備を行った。最初の問いに答えるために、教育現場での実験調査を企画しているが、実施のためにはいくつもの準備プロセスを踏まなければならない。本年度は、第一に、実施機関を選定するための説明会の開催、現場との打ち合わせ、実施内容の検討を行った。なお、このプロセスの中で研究遂行上の問題があることがわかった。研究企画の修正については、次項目以降に記す。本年度は第二に、対象校および対象者となり得る範囲について、そのキャリア教育環境を捉えるためのパイロット調査の実施を行った。現状の把握である。これを受けて今後メインとなる調査を企画した。 これらに加えて、第三に、他大学の教育研究機関のセミナー等に参加したり、関連論文を読むことで、高校生の「教育から就労への橋渡し」に係る問題について学術研究を整理した。社会現場での問題点の洗い出しと、このテーマの学術研究としての展開の可能性を探ることで、学術価値の高い研究成果を残したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、教育現場での実験調査を実施することにより、最初の問いである「高校でのキャリア教育により高校生の就業確率を高められるか」に答えようとする。2番目、3番目の問いは、この対象者を追跡することでも明らかにできるため、重要な実験調査となる。 本年度は、第一に、この実験調査の下準備を行った。具体的には、まず、実施校の選定を行った。キャリア教育プログラムを実施してくれる機関の抽出である。行政機関に聞き取りを行い、複数回にわたって調査の説明を行い、参加校にランダムにキャリア教育を与え(答えてもらう)可能性を探った。しかしながら、高校ではコロナ感染症拡大後、多くの行事が中止されており、2022年度になりようやく様々な対面プログラムが再開されるようになったばかりで、新しいキャリア教育の実施に参加してくれる機関は予想以上に少ないことがわかった。研究計画を変更せざるを得ない状況である(次項に書くように研究計画を変更して当初の目的に答えられるように企画中である)。 本年度は、第二に、参加を表明しくれた機関との打ち合わせを行い、現在行われているキャリアプログラムの実態やそれを受ける学生の調査と、これから行う新しいプログラムに関する簡単なパイロット調査を実施した。受講する学生と同時に、進路指導の先生や学校の先生の反応も重要であると考えられる。そこで、先生を対象にキャリア教育の難しさに関する調査を行った。そして、これらの調査結果を受けて、今後何ができるかを再構築した。 本年度は、また、この研究を学術研究成果として国内外に知らせるための手段として、国内外で行われている教育研究機関のセミナーなどに参加して、ネットワークを構築することにも取り組んだ。そこで得られた情報や、蓄積された分析結果を読むことで、今後どのような分析をすべきかを整理した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最初の分析の土台となるのが、実在する学校によって行うキャリア教育プログラムの実証実験である。先に述べた通り、どの学校においてもコロナ後の対面プログラムが再開したばかりで、新しいキャリア教育プログラムを実施してもらうのは極めて難しい状況にある。教育機関と話し合う中で分かった問題は大きく2つある。1つ目は、多くの学校に参加してもらうことの難しさである。当初は一定数の学校に参加してもらい、学校をランダムに選びプログラムを実施することを考えていた。これにより、学校内での不公平感はなくなるため倫理的な問題が起こりにくく、また、教師にとって実施する複雑さが軽減するため実施可能性が高まると考えていた。しかしながら、これは不可能だとわかったため、選ばれた学校において幾つかのプログラムをランダムに実施することを企画している(今後の分析に影響するため詳細の記述は控える)。 2つ目の問題は、学校を卒業後の学生を追跡することは予想以上に難しいということである。当初は、卒業前にリンクを作り、同時に就職後にイベントなどを実施して就職後も追跡するとしていたが、卒業前から多くの人とのリンクは切れてしまうことや、就職すれば就職イベントにはほぼ興味が無いことがわかり、これも計画を変更せざるを得ない状況となった。現在、別のアプローチとして、企業に就職している高卒者を捕捉することを企画している(今後の分析に影響するため詳細の記述は控える)。1つ目、2つ目のどちらの問題についても、協力が必要な教員や企業の人事部などと交渉しているが、実現可能性は十分あると考えている。 なお、今年度に入り、多くの主要雑誌で、高校生のジョブマッチングに関する研究論文が公刊されている。日本の例はまだ紹介されておらず、本研究の成果をまとめて公表することの価値は高いと感じている。
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