研究課題/領域番号 |
22K01550
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
武田 史子 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (70347285)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 企業統治 / アクティビスト / 株主提案 / 議決権行使助言会社 / 資本市場 / アクティビズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、2000年代以降、日本で存在感を増しているアクティビストに焦点を当て、その特徴と対象企業への影響を分析することが目的である。まず、アクティビストの株主提案に対する企業の対応や、資本市場の反応を定量的に分析する計画である。次に、アクティビストとの比較として、投資家に影響を与える議決権行使助言会社を採り上げ、その賛否推奨レポートの内容や資本市場への影響が、アクティビストとどのように異なるのかを分析したい。アクティビストに関する研究は、欧米では蓄積があるものの、日本における研究は少ない。企業統治構造が変化の途上にある日本というユニークな環境設定を活かし、学術的な貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、2000年代以降、日本で存在感を増しているアクティビストに焦点を当て、その特徴と対象企業への影響を分析することが目的である。アクティビストに関する研究は、欧米では蓄積があるものの、日本における研究は少ない。さらに、日本における先行研究は、2000年代前半を対象としたものが殆どであった。一方、2010年代半ばに企業統治に関わる制度が変化したため、その影響を反映する2010年代後半以降に焦点を当てた研究を行うことに、学術的な意義があると考える。
研究は当初の計画より早く進んでいる。2022年度には、前任校の卒業生との共同研究として進めてきた、① アクティビズム第1波と第2波の比較についての研究、②株主提案に対する対象企業の株価反応についての研究、③議決権行使助言会社の賛否推奨レポートが対象企業の株価に与える影響を分析した研究、の3つの研究を完成させた。①は慶應経営論集、②はInternational Review of Economics and Finance、③はFinance Research Lettersに掲載された。②は4つの国際学会で発表を行った。
2023年度以降は、議決権行使助言会社の推奨が議案賛成率に与える影響についての研究を完成させる予定である。この研究は、前任校の卒業生との共同研究として準備を進めている。具体的には、2010年3月~2022年3月に議決権行使助言会社による推奨があった株主総会の議案1025件を対象とし、以下の3つの分析を進めている。一つは、議決権行使助言会社の推奨が議案賛成率に与える影響について重回帰分析を行っている。次に、議決権行使助言会社の推奨に対する企業の声明が、議案賛成率に与える影響について重回帰分析を行う。第三に、2017年以降の議決権行使助言会社の影響力が強まったのかどうかについて測定するため、チャウ・テストを行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前任校の研究室の修士2年生と卒業生との共同研究として進めてきた、アクティビズム第1波と第2波の比較についての研究を完成させ、慶應経営論集に掲載された。具体的には、第2波における、アクティビストによる株式の大量保有報告が、対象企業の株価に与える影響、対象企業の特性、対象企業の財務パフォーマンスへの影響を計測し、第1波を分析した先行研究の結果と比較した。
次に、前任校の研究室の卒業生との共同研究として、アクティビストの株主提案に対する対象企業の株価反応についての研究を完成させ、4つの国際学会での発表を行い、ジャーナル(International Review of Economics and Finance)に掲載された。具体的には、株主提案受領の開示、株主による議決権が行使される株主総会、という2つのイベントに着目し、株主提案が対象企業の株価に与える影響について分析した。対象期間は、アクティビスト第2波に該当する2017年~2021年とし、株価反応の測定には、Buy-and-Hold Abnormal Return (BHAR)を用いた。分析の結果、株主提案の受領に対しては、株価反応はポジティブだったが、提案の否決に対してはネガティブだった。
最後に、前任校の研究室の卒業生との共同研究として、議決権行使助言会社の賛否推奨レポートが対象企業の株価に与える影響を分析した研究を完成させ、ジャーナル(Finance Research Letters)に掲載された。分析期間は、2001年~2021年の20年間とし、日経テレコンを用いて、2大議決権行使会社であるInstitutional Shareholder Servicesとグラスルイスについて報道された、125件の賛否推奨を対象とし、BHARで株価反応を測定した。分析の結果、会社提案と逆の推奨がされた場合、株価反応はポジティブだった。
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今後の研究の推進方策 |
研究は当初の計画より早く進んでいる。2022年度に、① アクティビズム第1波と第2波の比較についての研究、②株主提案に対する対象企業の株価反応についての研究、③議決権行使助言会社の賛否推奨レポートが対象企業の株価に与える影響を分析した研究、の3つの研究を完成させた。
このため、2023年度以降は、議決権行使助言会社の推奨が議案賛成率に与える影響についての研究を完成させる予定である。この研究は、前任校の卒業生との共同研究として準備を進めている。具体的には、2010年3月~2022年3月に議決権行使助言会社による推奨があった株主総会の議案1025件を対象とし、以下の3つの分析を進めている。一つは、議決権行使助言会社の推奨が議案賛成率に与える影響について重回帰分析を行っている。次に、議決権行使助言会社の推奨に対する企業の声明が、議案賛成率に与える影響について重回帰分析を行う。第三に、2017年以降の議決権行使助言会社の影響力が強まったのかどうかについて測定するため、チャウ・テストを行う。
議決権行使助言会社の推奨の賛否は、日経テレコンと「企業の議決権行使助言会社への反論プレスリリース」から取得した。次に、議決権行使助言会社の推奨の賛否については、賛成推奨、反対推奨で分類を行った。株主総会の各議案の属性(会社提案議案、株主提案議案、取締役選任議案、株主還元議案等)、賛成率については、各社HPの臨時報告書の決議結果報告から取得した。各社の財務及びガバナンスについての情報は、日経NEEDS-Financial QUEST及び日経NEEDS-Cges コーポレート・ガバナンス評価システムから取得した。機関投資家の議決権行使結果については、円谷研究室HP*から取得した。 *円谷昭一研究室:http://tsumuraya.hub.hit-u.ac.jp/special02/index.html
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