研究課題/領域番号 |
22K01555
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
葉 聰明 九州大学, 経済学研究院, 教授 (20404858)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | M&A / IFRS / 買収プレミアム / クロスボーダー / 文化 / 時間選好 / リスク選好 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではクロスボーダーM&A(企業合併買収)において,文化的な差異はどのように影響を及ぼしているかについて実証分析を行い解明する。具体的にはクロスボーダーM&Aにおいて,買収プレミアムはどのようにM&A当事者企業の間の「文化的距離」,「時間選好」と「リスク選好」の差異によって影響されるのか,全世界のクロスボーダーM&Aを対象に実証分析を行う。さらに,その影響は存在する場合,M&Aの特徴,例えばM&Aの強度(買収か資本提携か)によって異なるか,また,そうである場合,どのような解釈が成り立つのか,などの問題を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究は,国際的なM&A(クロスボーダーM&A)において,当事者企業の所在国のあいだに存在する制度上,社会文化上,その他心理上の要因の違いは,M&Aのアウトカム(例えば,成否など)にどのような影響をあたえているのか,実証的に行うものである。最初の実証研究においては,国の間に存在する「会計制度」の相違に着目し,その違いがM&Aの買収価格プレミアムに与える影響を検証している。具体的に国際会計報告基準の導入で会計制度の相違を表す。サンプルのバランスの関係上,ASEANの企業がかかわるM&Aを分析の対象としている。国際会計報告基準(IFRS)の導入と非導入の国とでは,また,導入前と導入とでは,M&Aの買収プレミアムへの影響が正のものか,負のものか,仮説を立てたうえで統計分析を行った。
その結果,IFRSの導入は買収プレミアムの増加につながる効果が観察された。その他の関連要因を考慮に入れても結果は同様である。その理由ついては,会計情報の有用性や透明性の向上により,買収企業は(選定,交渉,Due diligence,統合などの)買収の段階において被買収企業の価値をより引き出すことが可能になり,したがってより高い買収価格を支払ってもいいと考えられる。すなわち,開示制度の完備と情報の透明性は被買収企業の株主にとっても有益なものであることが示された。本研究結果が示したように,国の制度をめぐる環境とその違いは企業の交際的な投資活動に影響を及ぼしていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通り,データを集めており,さらに統計分析を行う予定であり,現在のところおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次の実証研究においては,国の間に存在する「文化・社会」及び「心理的な要因」の相違に着目し,その違いがM&Aの買収価格プレミアムに与える影響を検証する。具体的に「文化距離」や「時間割引率」「リスク許容度」といった指標を計算し,それらにおける国の間の相違を定量化する。サンプルとしてグローバルなM&A案件を分析の対象とする予定である。サンプルやデータについてはすでにある程度そろっている段階である。その後は,M&Aの買収プレミアムに与える影響の方向について関連理論や先行研究を参考しながら仮説を立てたうえで統計分析を行う。統計分析について重回帰分析を中心に活用する予定であるが,それに関連する計量上の諸問題に留意しながら適切な対策を行っていく予定である。
論文の初稿をまとめた段階で,国際的な学会で結果を報告するなどして,さらなる改善を図りたいと考えている。
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