研究課題/領域番号 |
22K01564
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 嘉悦大学 |
研究代表者 |
眞鍋 雅史 嘉悦大学, 経営経済学部, 教授 (20537071)
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研究分担者 |
植杉 威一郎 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40371182)
平賀 一希 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40528923)
吉野 直行 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 名誉教授 (50128584)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 地域金融 / 地域間資金循環 / 競争度 / 信用保証 / 市場集中度 / 地域金融市場 / COVID-19 / 金融市場 / 金融サービス / 地域経済 |
研究開始時の研究の概要 |
少子高齢化とグローバル化に加えて、COVID-19に伴うデジタル化の急加速は社会経済構造を大きく変化させている。特に、COVID-19を契機としたデジタル化により、地理的な制約は薄まりつつある。また、地域金融機関は貸出資金供給だけではなく、経営改善、事業再生や事業転換支援といった役割を期待されている。そこで本研究では、(i)地域金融市場の再定義、(ii)地域金融サービスの再定義、という新たな2つの視点に基づいた研究を推進する。本研究課題における「問い」は、COVID-19を経て変化が加速する中で、現行の地域金融機関、及び地域金融機関が中心的な役割を担う地域経済は持続可能なのか、という点である。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、具体的には下記の研究を推進した。 まず地域金融市場のファクトファインディングである。ここでは、COVID-19の影響下にある2020年から2022年の地域間資金循環及び都道府県別競争度(HHI)の推計を行った。この間、政府による様々なCOVID-19に対する諸施策(例えば、定額給付金、持続化給付金、雇用調整助成金など)によって各金融機関の預金は多く積み増されている。一方で、地域間資金循環の全体的な傾向はCOVID-19以前とは大きく変化することはなかった。このことは、預金の増加があったその地域で資金が需要されたか、あるいはそのまま現金や金融資産として積みあがったことが示唆される。また競争度を評価すると、その変化はまばらである。すなわち、競争度が厳しくなった地域がある一方で、競争度が緩やかになった地域も存在する。預金の増加は全国一律的な変化であるので、そのショックへの反応は、その地域の金融機関の個別の特性に影響されたものであることが示唆される。すなわち、ある地域では信金や信組が持続化給付金、雇用調整助成金などを背景として、積極的な貸出行動を行い、そのことが競争度を厳しくさせている。一方である地域では、従来の金融機関と企業との取引関係が継続されたまま、競争度が同程度あるいは緩やかになっている。このような変化の要因については、引き続き検討が必要であろう。 次に地域金融市場における信用保証の影響を検討した。ここでは、都道府県境を越境した場合とそうでない場合とで、信用保証付き貸し出しのデフォルト率に違いがあるかどうか、またCOVID-19下とそれ以前とで変化があるかについて検証を行った。結果として、越境と本拠地貸出の間ではデフォルト確率の差異が観測されたものの、COVID-19下ではその差異がなくなる、という変化がとらえられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域金融機関に関するデータ整備(特にデータクレンジング)に非常に多くの時間を要していたが、データクレンジングについては一定の解決がされており、概ねデータ整備は終了している。整備されたデータについていくつかの分析を開始しており、進捗状況はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究活動によって、地域金融機関に関するデータ整備及び一次的な分析(地域間資金循環や競争度に関する分析)を推進してきている。 令和6年度は、以下の研究を推進する。すなわち、地域間資金循環及び競争度のより詳細な研究である。地域間資金循環については、地域を超えた資金循環(移動)の要因を分析し、東京都などの都市部の資金需要と地方部の資金需要の動向と合わせた地域金融市場の在り方について示唆を得たい。競争度については、長崎県における十八銀行と親和銀行の経営統合など、比較的ショックの大きい経営統合の事例などもあり、これらの地域金融機関の変化と競争度の変化の関係性について、分析を行っていきたい。これまで競争度については、貸出市場の競争度が多く分析されてきているが、足下の金利上昇傾向に伴って、預金市場の競争度についても重要になってきており、この点についても分析を続けていきたい。 その上で、特に都道府県境を超えた越境貸出についての金融機関行動の実証分析を進めていきたい。具体的には、金融機関の費用関数を推定し、本拠地貸出と越境貸出の費用の差異あるいは効率性の差異を捉えたい。特に越境貸出が観察される地方銀行を取り上げ、その行動を詳細に分析する他、経営統合などの影響についても検証を試みたい。 以上のような分析を通じて、本研究課題の中心となる「問い」である、COVID-19を経て変化が加速する中で、現行の地域金融機関、及び地域金融機関が中心的な役割を担う地域経済は持続可能なのか、という点について示唆を得ていきたい。
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