研究課題/領域番号 |
22K01565
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
小林 武 名古屋商科大学, 経済学部, 教授 (70751486)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 金利の期間構造 / グローバル因子 / 地域因子 / 債券市場 / スパニングパズル / 投資戦略 / グローバル債券モデル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では先進国と新興国を分析対象に「グローバル債券モデル」を開発し、各国のイールドカーブをグローバル因子と国固有の因子に分解することにより、「スパニングパズル」の解明を試みる。さらにグローバルな金利変動リスクと各国債券市場とのリンケージ、金利やタームプレミアムの予測可能性ならびに債券投資戦略の有効性を明らかにすることを目的とする。本研究により世界的な金利変動リスクが各国債券市場へ及ぼす影響やマクロ経済変数との関係が明確になれば、金融政策対応を考察する上で意義を持つ。さらに効率的な運用手法の開発は、外国債券ポートフォリオのリスク管理の高度化ならびに投資戦略の多様化に貢献できる。
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研究実績の概要 |
本研究課題に関して2023年度の実績は以下の3点が挙げられる。 1点目は、2022年度に開発した、「グローバル債券モデル」からタームプレミアムを推定した。具体的には、モデルからグローバル因子およびローカル因子を用いたタームプレミアムに関する解析解を導き、推定されたパラメータから、先進4カ国のタームプレミアムを推定した。本アプローチのより、各国のタームプレミアムを「グローバル」「ローカル」因子ならびに「水準」・「傾き」・「曲率」因子に分解することでタームプレミアムのメカニズムを明らかにした。分析の結果、「曲率」因子がタームプレミアムを押し下げていることが分かった。また、これらの研究成果を内外の学会で発表し、潜在因子の経済的解釈や、イールド予測精度の重要性など論文改訂に向けての示唆を得た。 2点目は、昨年度で検討した「グローバル因子」および「地域因子」(「水準」・「傾き」・「曲率」)とマクロ経済変数との関係について追加的な分析を行った。具体的には、地域因子に関しては、アジア新興国内の経済成長率、インフレ率、政策金利、株価リターンおよびボラティリティ、外国為替リターンおよびボラティリティに加え、信用リスクや流動性リスクを候補変数として検討した。分析の結果、これら追加指標も地域因子との相関が高いことを確認した。 3点目は、「グローバル債券モデル」をアジア新興国に拡張したモデルに関してイールドカーブの予測精度について分析を深めた。分析の結果、単一国でイールド予測モデルよりも「グローバル因子」および「地域因子」がイールドカーブの予測に貢献することが示された。さらに、これらの研究成果を論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は当初計画通り、「グローバル債券モデル」の開発と各因子の経済的解釈に取り組んだ。パラメータ推定手法として、Doshi et al(2006)などで提案された動的ファクターモデルに関するEMアルゴリズムとカルマンフィルタを組み合わせた疑似最尤法を期間構造モデルの推定に応用した。2023年度は,当初計画通り、「グローバル債券モデル」を用いたタームプレミアムの分解とイールドカーブの予測に取り組んだ。タームプレミアムを「グローバル」「ローカル」要因ならびに「水準」・「傾き」・「曲率」要因に分解することで先進国のタームプレミアムの解明に新たな知見を得ることができた。さらに、「グローバル債券モデル」をアジア新興国に拡張したモデルに関してイールドカーブの予測精度を検証した。また、先行研究のサーベイを通じて、無裁定条件を課した「グローバル債券モデル」の推定には、マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)が有効であることを確認した。 2022および2023年度を通じて、学会発表を積極的に行い、研究の方向性について、研究者と意見交換を行った。一方、アンスパンファクターであるCPファクター(フォワードレートの結合)とグローバル因子の予測精度を比較や無裁定条件を課さない「グローバル債券モデル」と提案モデルの予測精度の比較は、次年度の研究課題となった。以上の点を総括すると、2023年度に関しては、「グローバル債券モデル」アジア新興国に拡張した分析と論文投稿に時間がかかってしまった。2024年度に予定していた外国債券ポートフォリオのヘッジ手法の開発にも着手できているとは言え、上記の積み残しの課題があるため、やや計画対比遅延していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の本研究の推進方策は以下のとおりである。研究計画に従い、2023年度に積み起こした、「スパニングパズル」の検証・金利予測・投資戦略の応用に取り組む。具体的には、無裁定条件を課さない「グローバル債券モデル」と提案モデルの予測精度の比較を行うことで、無裁定条件が金利予測に与える影響を多面的に考察することができる。また、イールドカーブの予測に関しては、Diebold Marianoが提唱した検定指標を用いて予測精度の検証や債券市場環境の違いが予測精度にどの程度影響を与えるかを分析する。タームプレミアム予測の頑健性を確認するために、代表的なアンスパンファクターであるCPファクター(フォワードレートの結合)とグローバル因子の予測精度を比較する。なお、無裁定条件を課した「グローバル債券モデル」の未知パラメータの推定に関して、マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)を検討する。外国債券ポートフォリオ戦略については、2024年度に取り組んだ外国債券ポートフォリオのヘッジ手法の開発を再検討する。具体的には、学会で発表し指摘された、ヘッジ対象資産の金利感応度を考慮しながら「グローバルイールド」部分に関するヘッジ比率を検討する。また、研究計画に従い、「グローバルファクター債券モデル」から推定される因子の予測値から、各戦略のリターンを予測し、当該戦略のパフォーマンスを計測する。さらに2022年度から継続している研究結果を内外の学会で発表し、学術誌投稿へ向けて準備する。
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