研究課題/領域番号 |
22K01568
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
高屋 定美 関西大学, 商学部, 教授 (60236362)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 脱炭素移行 / 欧州グリーンディール / 欧州中央銀行 / 金融政策 / ESG / 環境金融 / 環境投資 / 欧州金融機関 / 気候変動対策 / タクソノミー / 脱炭素社会 / 金融政策のグリーン化 / 気候変動 / プルーデンス政策 / 金融安定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、欧州中央銀行(以下、ECB)による気候変動リスクへの対応への関与をどの程度まで行うべきなのかを理論的に明らかにし、また実証的に明らかにする。本来、中央銀行はより短期的な物価上昇を重視して金融政策を行うべきであり、気候変動への対応はECBに過重な負荷を与えることになるとの主張がある反面、気候変動対応は長期的なインフレリスクを抑制させる可能性もある。本研究は、未解決な課題である中央銀行の気候変動への取り組みの是非に関してECBを対象にし、同行が気候変動リスクへの対応を行うことが適切なのか、さらにその対応が最適となる条件とはどのようなものなのかを理論的ならびに実証的に検討するものである。
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研究実績の概要 |
欧州中央銀行の気候変動への取り組みを検討する前提として、EUの気候変動対策であるグリーンディールに関する研究を、昨年に引き続き進めている。欧州グリーンディールでは、EUからの復興強靱化基金だけでは、資金調達が十分でないため、金融市場からの調達も重視されている。金融市場での従来の資金配分では、化石燃料を多く用いる産業を温存させることになりかねず、資金供給の面からグリーンへの移行を促しつつ、グリーンイノベーションを促す産業や、脱炭素に移行する産業への資金供給を潤沢にすることが狙いである。本研究との関連では、欧州中央銀行が、そのような金融市場のグリーン化を促すべきなのか、促すとすればその手法はどのようなものがあるのかを検討することである。そのため、欧州中央銀行が監督し、そして金融政策を直接に実行する欧州金融市場のグリーン化の程度や、その方向性を探求しておく必要がある。そのため、2022年度に引き続き、2023年度も欧州金融市場のグリーン化の程度や金融機関のグリーンディールへの取り組みを検討してきた。 さらに、欧州中央銀行の気候変動への取り組みとして、二つの側面からアプローチしている。すなわち、1)ユーロ圏での金融政策のグリーン化の是非と、2)EUの大手金融機関の監督を通じた金融市場のグリーン化の是非を検討している。欧州中央銀行も1)について検討しているが、アカデミックな研究でも徐々に行われており、その先行研究をけんとうしながら、実証的なモデルの構築を試みている。2)に関しても多くはないものの先行研究があるため、それらの検討をしている。2)に関しては、欧州だけでなくわが国を含めた先進国への示唆を与えるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、欧州中央銀行の脱炭素への取り組みを検討する前提としての、EUの気候変動対策である欧州グリーンディールと欧州金融機関の取り組みを、各種論文、レポートなどを通じて検討を重ねてきた。それらにより、グリーンディールへの金融機関の取り組みと欧州金融市場の変容を熟知することができた。また、中央銀行が気候変動対策に取り組むべきかどうかの、理論的検討をするための関連論文も昨年に引き続き検討している。概ね、研究の背景ならびに先行研究の検討を終えている。 また、欧州中央銀行の気候変動対策の実証的な効果を検証するための実証モデルの開発も先行研究を参考に進め、近年のデータを用いて実証分析を行っている。特に従来のVARモデルに加え、グリーンディールの実施というこれまでの金融市場、経済構造を大きく変貌させるであろう期間も対象可能とするため、推定される変数が可変的な可変係数ベイジアンVARモデルの開発を進め、気候変動への配慮を行った後の金融政策の効果も検証している。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度のとなる2024年度は、現在までの研究をさらに発展させる予定である。すなわち、欧州中央銀行の金融政策ならびに金融監督の双方で、グリーンディールに関与すべきかどうかの理論的な結論を導く予定である。中央銀行が環境への関与は中立であるべきとする考えがある一方で、脱炭素移行を促すための中央銀行が関与し、経済政策すべてを用いてでも脱炭素経済を実現すべきという考え方もある。本研究では、脱炭素経済移行への便益と費用を衡量し、また金融市場の安定性への影響も考慮して、その結論を出す予定である。 さらに、欧州中央銀行が金融政策を実行する際に、脱炭素経済移行を考慮した場合の実証研究を進める。現段階では、まだまだ二酸化炭素を排出産業が多い中で、厳密に金融政策をグリーン化すると、金融機関の融資も間接的に減少し、それが経済を阻害し、金融安定を阻害する可能性もある。それを量的に検討する予定である。
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