研究課題/領域番号 |
22K01571
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
室井 芳史 東北大学, 経済学研究科, 教授 (90448051)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 数理ファイナンス / 応用数学 / 数値計算 / オプション価格理論 / 確率過程 |
研究開始時の研究の概要 |
既に「研究の目的」で述べた通り、ツリー法を用いたレビ過程モデルにおける派生商品評価の可能性を目指す研究を行う。古典的なブラック・ショールズモデルにおいて派生商品価格を求める研究が始まりすでに半世紀以上が経ったが、原証券価格を記述するより正確なモデルとしてレビ過程によるモデルが注目を集めている。過去には、分布のモーメントをマッチングさせるなどして特定のレビ過程モデルでツリーを構築する方法について研究が行われてきたが、一般のツリーで派生商品価格を計算する方法は知られていないようである。簡便に価格計算をする手法を提案し、金融実務の現場でも簡単に一般的なレビ過程を扱うことを可能とする技術を開発をする。
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研究実績の概要 |
原証券価格過程が指数レビ過程に従う場合に効率的にアメリカン・オプション価格を計算する方法について研究を進めてきた。そのために、特に、ツリー法を用いた効率的な計算方法について考察を行ってきた。指数レビ過程において高精度にオプション価格計算するためのもツリーの構築法はすでに前年度まで研究が終わっており、レビ過程が有界変動過程であるかどうかに関わらず安定的にオプション価格を計算するためのツリーの構築が可能となっている。ところで、レビ過程モデルにおいてツリーを用いてオプション価格を計算しようと思えば、多項定理を利用することで数値的に特性関数を計算することとができる。よって、一旦、オプション価格などを高精度で計算することが可能なツリーを構築することができれば、離散フーリエ解析の諸手法を用いて高速にオプション価格が計算することができるものと考えられる。このアイデアを用いたヨーロピアン・オプション価格の計算はすでに実施したことがある一方で、アメリカン・オプション価格で計算が実施できるかについてはあまり考えてこなかった。アメリカン・オプション価格は最適停止問題を用いて定式化されるので、バックワード・インダクションを利用すれば価格の計算ができることは簡単に予想はされるが、得られた価格が正しい価格に収束することを数学的に示すことは未解決な問題であった。本年度は、この問題について数理的な証明を与え、それと同時に、数値計算を行うことで提案手法の優位性を示すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にある通り、原証券価格過程が指数レビ過程に従う場合においてツリーと離散フーリエ解析の諸手法を用いてアメリカン・オプション価格の計算を行う手順について考察を行った。ここでは、COS法と呼ばれる手法を用いて価格計算を行っている。COS法は画像処理において多用される離散コサイン変換と呼ばれる数値計算法である。特性関数が数値計算により、一旦、計算されてしまえばオプション価格を計算する方法は離散コサイン変換以外にも考えうるが、数値積分を必要としないなどのメリットを考え、ここではすでにヨーロピアン・オプション価格の計算で実績のある離散コサイン変換を用いてアメリカン・オプションの価格を導出することとした。また、同時に、提案手法による数値計算も行い、アメリカン・オプション価格を極めて高速かつ高精度に計算できることを確認した。また、懸案となっていた真値への収束については、計算されたオプション価格と同様に誤差についてもバックワード・インダクションにより満期から現在に向かって積み上げていくことができることを示し、数学的に厳密な形で誤差評価ができることを示すことに成功した。本研究はすでに論文として纏めており、現在論文誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
すでに研究課題に対して最低限必要な研究は終了しているものと考えられる。今後は、さらなる応用があるかどうかについて考察を行いたい。特性関数が不明な一般のレビ過程モデルについての簡便なオプション価格評価法はあまり研究が進んでいない。今回の提案手法では、特性関数を数値計算した上で離散フーリエ変換手法を用いることにより一般のレビ過程モデルにおいてもオプション価格評価が可能となった。ここから、過去にあまり扱われてこなかったより広いレビ過程のクラスに対しても様々な数値計算手法の提案が可能となる可能性を感じている。例えば、提案手法を用いて一般のレビ過程に対する分布関数を数値計算し乱数生成器を作ってみることや、より広いクラスのレビ過程モデルに対するパラメータの統計的推測法の提案などが考えられる。今後は、投稿している論文をブラッシュ・アップする方法について考察をしつつ、提案手法をオプション価格評価以外の分野に対してどのように応用するかについても考えていきたいと考えている。
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