研究課題/領域番号 |
22K01585
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
蓮井 康平 愛知大学, 経済学部, 准教授 (90780619)
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研究分担者 |
星野 聡志 岡山商科大学, 経済学部, 准教授 (70850642)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ゼロ金利 / 確率的定常状態 / 決定的定常状態 / 消費の習慣形成 / デフレーション / 日本経済 / ゼロ金利制約 / 長期停滞 / デフレバイアス |
研究開始時の研究の概要 |
日本では政策金利を実質ゼロにするゼロ金利政策が長期間続いている。長期的な景気の低迷とゼロ金利政策について多くの研究がマクロ経済モデルを用いて分析を行っているが、こうしたモデル分析では、景気後退を引き起こす経済ショックが解消すると、その後必ず景気は回復し、ゼロ金利政策も終了する構造が組み込まれてしまっている。この問題に対し、本研究課題はゼロ金利制約の不確実性効果によって、確率的定常状態(RSS)が決定的定常状態(DSS)から乖離するDSGEモデルを用いて、ショック解消後にDSSに戻らないモデルを構築し、理論的かつ実証的に包括的分析によって日本の長期的なゼロ金利政策を描写するモデルを構築する。
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研究実績の概要 |
23年度は、マクロ経済モデルの推計と不確実性効果の数量分析を行った。推計するモデルは標準的なマクロモデルと金融要素として資産価格が組み込まれたモデルである。推計結果のパラメータを用いて、ゼロ金利制約の不確実性効果を数量的に分析したところ、モデルの構造に依存するものの、不確実性効果を補足することができる場合があり、インフレーションの確率的定常状態が、決定的定常状態よりも低くなる数量結果を得た。今後の課題は、確率的定常状態を考慮した推計になるが、これに関しては数量的かつ技術的な課題が大きく、次年度以降に分析することとした。 また、派生研究として、裁量政策におけるインフレバイアスと、消費の習慣形成、イールドカーブの関係を数量的に分析した。消費の習慣形成が強くなると、裁量政策のインフレバイアスが小さくなり、金利がゼロ下限にヒットしやすくなり、ゼロ金利制約の効果が大きくなることが判明した。この効果はイールドカーブやタームプレミアムにも影響することが示された。 以上の研究成果は以下の2点を示していると考えている:(1)日本の推計パラメータの下でゼロ金利制約の不確実性効果が強くなっている可能性がある。(2)ゼロ均斉制約の状態依存効果は、消費の習慣形成を通じてタームプレミアム等に影響を及ぼす可能性がある。 以上に加え、近年の物価の上昇に関して、先行研究の理論モデルを中心にサーベイを行い、学外の研究会で多数のコメントを受けた。また、前年度の消費の習慣形成とゼロ金利制約に関する分析結果を論文にし、海外査読付き雑誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マクロ経済モデルの推計を行い、そのパラメータのもとで確率的定常状態を数量的に分析できたため。また、前年度の分析結果を論文にし、海外査読付き雑誌に投稿することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、(1)推計の第2段階として、非線形性や不確実性を考慮したのモデルの推計を行い、引き続きゼロ金利制約の不確実性効果を数量的に行うこと、(2)ゼロ金利とイールドカーブやタームプレミアムへの影響の分析を論文にすること、(3)外生ショック以外に、不確実性効果を強くするモデルの構造を分析すること、である。(1)については、推計技術のハードルが高いため、24年度のみでの達成が難しい可能性もあるため、場合によっては、今年度の推計結果で分析をまとめることも検討する。(2)については、国際的な査読付き雑誌に投稿することを目標とする。(3)については、様々なマクロ経済構造を組み込む必要があるが、個別に拡張を行うことで、効率よく数量分析を行い、ゼロ金利制約の不確実性効果が強くなる場合を見出す。現段階では、家計の習慣形成がその一つの要因になる数量結果を得ているが、インフレーションの持続可能性等の他の要因も含め引き続き検討を行う。
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