研究課題/領域番号 |
22K01595
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
岩間 俊彦 東京都立大学, 経営学研究科, 教授 (20336506)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ジョン・ブライト / 伝記 / イギリス / 消費 / 民主主義 / 統治体の構造 / 平和主義 / 自由貿易 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、1840年代から1880年代のイギリスにおいて政治経済改革を主導したジョン・ブライトについて、反穀物法運動、反帝国主義を主導する急進主義者、自由貿易運動、選挙法改正、インド問題、アイルランド問題の中核に位置した自由主義者、そして男女の領域分離論により家父長的かつ女性参政権への批判を展開するジェンダー化の擁護者といった、いまだ評価が定まらない先行研究に対して、資料(未刊行の手稿、同時代の出版物)を系統的に調査・分析し、近年展開してきた新しい伝記研究方法を援用しつつ、ブライトの見解と行動が、急進主義、自由主義、ジェンダーを相互作用的に結びつけた人物として包括的に再評価する。
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研究実績の概要 |
研究報告「ジョン・ブライトと消費社会の形成 ver. 3―伝記論的転回からの接近」を、2022年6月4日に専修大学で開催されたイギリス都市・農村共同体研究会にて行った。報告後の質疑応答から、研究内容の改善点を確認した。 ブライトと消費主義の関係は、1840年代の反穀物法運動、1850年代の金融改革運動、「知識への課税」反対運動、1860年代の「自由な朝食/税抜きの朝飯」運動、閣僚として食品不正防止法に関与といった注目点だけでなく、禁酒運動や生活協同組合との結びつきから形作られた。つまり、ブライトと消費社会の形成は、以下のような複数の回路・過程、多様な形の影響や結果による。言い換えれば、①社会運動+公論形成→議会での議論・実現(穀物法廃止までの1840年代)、②社会運動+公論形成→公論での対立・孤立+議会での孤立(1850年代の政治経済改革運動)、③社会運動+公論形成→議会での議論(南北戦争、1860年代)、④公論形成→公論での対立、議会での議論(1870年代の消費団体、活動への言及)、と示される。結論として、ブライトと消費主義の関わりは、自由貿易や営業の自由を堅持しつつ、E.P.トムスンのモラル・エコノミーとは異なる「個のモラル」によって支えられる消費の擁護、1860年代末以降の個の消費と結社や公共制度を結びつけた主張、という形で示すことが可能である。 上記の研究とあわせて、ジョン・ブライトの伝記や関連する先行研究の精査、調査済みの資料の整理・再検討について、民主主義、平和主義の観点から進めた。その結果、特に、パトリック・ジョイスが示した既存の支配的解釈、ブライトを「民主的主体」として想像する、あるいは、描くという見解は、constitutionと呼ばれる国制の統治体という視点や平和主義の観点から再検討される必要性があることを発見し、次年度の研究計画の改良を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症(COVID19)の展開、ウクライナ情勢(ロシアによる侵攻)他の影響により、渡英しての資料調査計画を2022年度度後半に計画していたが、研究遂行者の長期入院等もあり、英国現地での資料調査について実施できなかった。 他方で、先行研究のサーベイと綿密な再検討、入手済み資料の整理や確認、これらの資料を消費主義、民主主義、平和主義の視点から再読解と分析を進めることができた。 さらに、上記の研究遂行だけでなく、研究報告とフィードバックにより、消費主義からの分析に続く研究視点として、まず、ブライトと平和主義の関わりについて研究を進める必要性が判明した。また、研究当初には、注目点とされたブライトと民主主義の関わりについては、constitutionと記される統治体の構造からの考察が有効であることが判明し、ブライトと統治体の構造、について研究を進める計画に変更し、研究内容や計画の改善を行うことができた。加えて、消費主義、平和主義、統治体の構造といった視点からジョン・ブライトを研究する際に、常に、ジェンダーとの関わりも分析視角として取り入れる必要性も確認できたため、ブライトとジェンダーの証言や資料の整理も並行して進めるという研究遂行上の改善も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、学会報告が決定した社会経済史学会全国大会にて、5月27日に研究報告「ジョン・ブライトと平和主義―モラル・戦争・自由貿易・帝国」を行う。質疑応答等のフィードバックを得た後に、論文原稿を作成し、まず、所属機関のresearch paper seriesにて公開できるように作業を進める。 2022年度に研究報告を行った「ジョン・ブライトと消費社会の形成」については、研究会でのフィードバックを反映させた論文原稿を作成、推敲し、投稿原稿としての完成を目指す。 これらの学会報告や原稿作成準備作業を行いながら、ジョン・ブライトとconstitutionの関わりに関する証言と資料の読解につとめる。また、歴史学研究会で依頼をうけた歴史学とジェンダーをめぐる議論や歴史学の方法論の整理という課題と成果を本研究にも応用して、ジョン・ブライトとジェンダーの関係についての分析視角に活かすようにする。同時に、ブライトジェンダーに関わる証言の収集と分析を進める。 2023年度後半には、これまでの研究から判明した注目点や証言に関する資料について、イギリスにおける英国図書館の手稿部、アルフレッド・ジレット・トラストにて資料調査を行い、収集した資料についての整理、読解につとめる。
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