研究課題/領域番号 |
22K01596
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
森田 陽子 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00326159)
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研究分担者 |
山本 千映 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (10388415)
攝津 斉彦 武蔵大学, 経済学部, 教授 (30613393)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 女性労働 / 男性稼ぎ主型モデル / 19世紀英国 / 19世紀 / イングランド |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、19世紀後半から20世紀初頭にかけての英国における既婚女性の労働市場を分析対象とし、男性稼ぎ主型モデルが労働市場においてどのような役割を果たしていたのかについてセンサスの個票を用いた実証分析により明らかにする。主に、男性稼ぎ主型モデルが定着していたのか、また、位置付けは変化したのか、男性稼ぎ主型モデルが社会的規範として機能していたのか、という点について分析おこない、19世紀後半の英国における既婚女性の労働供給の決定要因を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では19世紀後半の英国で有配偶女性の労働力率が大幅に低下したことについて、この労働力率低下の背後にあるメカニズムは何か、また、性別役割分業意識というビクトリア時代の社会規範がどのような影響を与えたかを検証する。 分析には、1851年、1881年、1911年のセンサス個票全数サンプルを用いる。センサス・データに加え、妻及び夫の賃金データとして、HISCAMと呼ばれる数値化された職業ランキングの指標を用いる。更に、賃金データについては以下の2つの方法を追加的に取り入れた。1つ目は推計賃金による補完である。1881年について800弱の職業の男女別地域別賃金率を推計し、これを用いた分析をおこなった。もう1つは同時代の農業労働者の賃金推移を用いた分析である。分析単位は夫が世帯主となっている有配偶女性の世帯であり、サンプル数は1851年が約220万世帯、1881年が約340万世帯、1911年が約500万世帯である。 実証分析の結果、以下のことが明らかとなった。(1)妻の賃金は妻の就業確率に対して正の影響を与え、夫の賃金は負の影響を与える。これらの影響は3時点を通じて減少する。(2)0-4歳子供がいることは妻の就業確率を低下させる。この影響は3時点を通じて増加する。(3)5-14歳の働く子供の存在は妻の就業確率を高める。(4)14歳以上の働く息子の存在は妻の就業確率を低下させるが、14歳以上の働く娘の存在は妻の就業確率を上昇させる。これらの結果から、19世紀後半のイングランドにおいても、男性稼ぎ主型モデルが適応されること、同時に、ビクトリア時代の性別役割分業意識が、妻の労働供給を抑制した可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね当初の研究計画通りに進んでいる。初年度はまず分析データの整備をおこなった。まず、Integrated Census Microdata (I-CeM) と呼ばれる英国のセンサスをデジタル化したデータセットを入手し、1851年と1881年の個票データを分析に使用できるように整備をした。研究の2年目には、1911年のデータについても整備をおこない、分析期間を拡張した。 加えて、賃金データについても整備をおこおなった。まず、HISCAMを整備し、センサスデータとのマッチングをおこなった。また、1881年については推計賃金をセンサスデータとマッチングし、実証分析ができるように整備をおこなった。加えて、同時代の農業労働者の賃金データを利用することで分析の頑強性を高めることを試みた。 上記データを用いた分析結果は論文としてまとめをおこなっている。分析の途中経過は学会において報告をしており、今後は実証分析の改良と学術研究としての完成を目指す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、これまでにおこなった実証分析をまとめ、改良をすべきところは改良をし、学術研究としてまとめることである。また、実証分析の精緻化もおこなう予定である。夫の所得階層による妻の労働供給の違いや、夫の職業による妻の労働供給の違いなどを明らかにする必要がある。これらの結果を論文としてまとめ、研究会および学会で報告をおこない、学術雑誌への掲載を目指す。
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