研究課題/領域番号 |
22K01618
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
本内 直樹 中部大学, 人文学部, 教授 (10454365)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | イギリス / 戦後改革 / 経済調査 / G.D.H.コール / ケインズ / 完全雇用 / 第二次世界大戦 / ケインジアン / 戦時経済調査 / 戦後再建 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、イギリス戦後改革史研究の一環として、第二次世界大戦期イギリスの政府と大学が戦後改革を目的とした「経済調査」の実態解明と、調査結果に基づく経済学者・官僚・企業家らの戦後再建議論における政策合意形成の過程を官民双方の視点から分析し、イギリス戦後改革における社会科学研究の意義と限界を明らかにするものである。 具体的には1941年にオックスフォード大学のG.D.H.コールが開始した「ナフィールド・コレッジ社会再建調査」の具体的調査事実と再建議論の関連性、官僚と経済学者の協調・対立関係を解明し、コール流の社会主義的改革構想が戦後改革にどの程度反映したのか分析し、新たな戦後改革像の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は,第二次世界大戦期のイギリス政府と大学が戦後改革を目的として実施した「経済調査」の実態解明と,調査結果に基づく経済学者・官僚・企業家らの戦後再建議論における政策合意形成のあり方を官民双方の視点から分析することで,イギリス戦後改革における社会科学研究の意義と限界を明らかにするものである。具体的には,1941年にオックスフォード大学の経済学者G.D.H.コールが政府と全国23大学と連携・組織した「ナフィールド・コレッジ社会再建調査」の活動に焦点を当て,経済復興の重要課題とみなした (1) 雇用・産業配置 (2) 地方行政府 (3) 都市計画 (4) イギリス帝国植民地・ナチス経済の計4つの経済調査を各論レベルで分析する。 本年度は,上記(1)雇用(完全雇用政策)の検討を開始した。2022年の8~9月にイギリス現地での未公刊一次史料の収集を行った。成果としては,ナフィールド・コレッジ図書館にてG.D.H. コールの個人文書,ナフィールド・コレッジ社会再建調査の一次利用(調査原票)など約1,000枚程度複写することができた。またLSE図書館,英国国立公文書館にて完全雇用白書を準備していた再建省・商務庁の未公刊資料の所在を確認し,その政策立案の一端を明らかにすることができた。またケインズとコールの往復書簡を発見,戦後の完全雇用政策や復興計画(行政機構の樹立)に関する貴重な資料を入手することができた。渡英した際には,イギリス人歴史研究者ニック・ティラッソー教授,ディルウィン・ポーター教授,マーク・クラプソン教授らから一次資料の解釈について有益なアドヴァイスを頂戴することもできた。また帰国後は研究協力者である松村高夫氏(慶應義塾大学名誉教授)と収集してきた資料の情報共有を行い,学術雑誌への投稿に向けて一次草稿を完成するところまで進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年半ぶりに現地イギリスでの一次史料の収集はできたものの,戦時下の経済学理論と経済学会の動向の把握に想定以上の時間がかかった。草稿を完成することはできたが年度内の論文公刊に間に合わなかったため,やや遅れていると考えている。 本研究では,イギリス戦後改革の全体像を把握することを目的に,1940年代イギリスの経済復興・戦後再建に関する諸問題(完全雇用、地方行政府、都市計画、植民地経済)を順番に取り上げ各論ごとに調査分析を進めていくことが計画されている。そこで本年度(初年度)は「完全雇用」の問題を扱った。(1)まず研究史の整理を目的として,第二次大戦下イギリスの完全雇用問題に関連する同時代文献の収集を行い,1940年代の時代背景と先行研究上の論点を把握した。(2)その上で2022年8月~9月にイギリス現地(英国国立公文書館,ナフィールド・コレッジ図書館等)での「オックスフォード大学ナフィールド・コレッジ社会再建調査」が扱った完全雇用問題に関する未公刊一次史料の収集を行った。(3)そこで収集できた資料の分析を基に,完全雇用政策をめぐる非公開討論会での経済学者,ケインジアン,資本家の発言内容(主張)を分析し論点を目下整理中である。G.D.H.コールがそれらの議論を集約し作成した政府への提言書の内容を考察し,戦後の完全雇用政策(雇用白書)に対するコールの「経済調査」が戦後改革(経済再建)にどの程度重要な貢献をなしたのかを解明していくことが待たれる。渡英した際には,イギリス人の歴史研究者と会合の場を持ち,本研究に関する有益な意見交換ができた。また帰国後は研究協力者である松村高夫氏(慶應義塾大学名誉教授)と収集してきた資料の情報共有を行い,学術雑誌への投稿に向けて現在草稿を完成するところまで進んでおり,次年度には学会発表の後に学術雑誌への投稿を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針は,目下執筆中の論文完成を目指して学会発表を行い,そこで更なる有益な知見を得た上で学術雑誌に投稿する予定である。次の各論テーマは「地方行政の再編」についての問題を扱うことから2023年夏季にイギリス資料調査を実施し,関連する一次文献の収集を行う。前回の資料調査で,ある程度の関連一次資料を収集しているが,他方で地方行政府に関連する同時代文献の収集と内容理解が今後の課題といえる。戦時下のイギリス地方行政府の再編について行政学者,行政官,専門家らの同時代出版物を収集・分析し,戦時期の地方行財政を含む経済計画の総合的把握が目指される。さしあたりG.D.H.コールのナフィールド調査の「地方行政調査」に関する全国調査と地方調査の実態を検証し,「ナフィールド・コレッジ社会再建調査」の下部組織の「地方行政委員会」の議事録やコールの見解などを跡付けていくことが課題となる。そのためにはさらなる現地調査が必要であり,2023年夏季にイギリス資料調査を予定している。
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