研究課題/領域番号 |
22K01620
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
熊谷 幸久 関西大学, 経済学部, 准教授 (20570253)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | スコットランド / 東インド貿易 / 中国貿易 / 広東 / 代理商 / イギリス帝国 / 中国 / インド / アヘン貿易 |
研究開始時の研究の概要 |
英国北部のスコットランドの人々は、世界各地でコミュニティとネットワークを形成し、イギリス帝国内の諸活動において大きな存在感を示したことが知られている。しかし、スコットランドの国内産業とアジアとのつながりについては、あまり注目されてこなかった。本研究では、19世紀のグラスゴーの貿易商・製造者であったJ・フィンリイ商会によるアジアとの交易やビジネス・ネットワークのほかに、同商会を率いたK・フィンリイの活動を再現する。これにより、従来考えられてきたよりも、アジアとの貿易はスコットランドの産業にとって重要であったことや、スコットランドの国内産業の意向が英国の通商政策にも影響を与えたことを明らかにする。
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研究実績の概要 |
2年目にあたる2023年度においては、既存文献や過去に収集した一次資料の調査だけでなく、夏季休暇中に渡英し、ハワーデンのグラッドストン図書館(北東ウェールズ公文書館からアーカイブが移管)およびケンブリッジ大学の図書館において、カークマン・フィンリイならびに他のグラスゴーの東インド利害関係者に関連する史料の調査・収集をおこなった。特に、前者には、1812年から1841年にかけてカークマン・フィンリイがジョン・グラッドストンに宛てた大量の書簡が所蔵されており、その内の1834年までを閲覧し、デジタルカメラで撮影することができた。現在もそれらを解読する作業を継続しているが、中間の成果として、1833年から34年にかけての書簡には、1834年の東インド会社の貿易独占権の完全撤廃直後に、フィンリイ商会がジョン・グラッドストン商会と共同でおこなった中国との直接貿易の詳細が含まれていることが判明した。調査日程の関係で閲覧することが出来なかった1835年以降の書簡を次年度に調査・分析することで、これまでほとんど論じられてこなかった中国貿易開放直後のイギリス本国の地方貿易商人による同貿易への参入の詳細が明らかになると考えられる。 また、1820年代から30年代初頭にかけてのジェームズ・フィンレイ商会による中国貿易を分析することで、(1)1814年の東インド貿易の部分的開放以降も東インド会社船による交易活動が一定のアドバンテージを持ち続けていたこと、(2)初期の中国貿易においてマニアック商会のような代理商が重要な役割を担っていたこと、(3)1834年の中国貿易の開放が、これまで考えられてきたよりも重要な出来事ではなかったことが明らかになった。そして、これらの内容を含む論文を海外の学術雑誌に投稿していたが、それが査読を通過し、次巻に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
もともと2024年度に予定していたハワーデンのグラッドストン図書館およびケンブリッジ大学の図書館おける史料の調査・収集を2023年度の予定と入れ替えるかたちで実施することができた。ただし、グラッドストン図書館に所蔵されている膨大な量のカークマン・フィンレイの書簡に関しては、限られた現地調査の日程の中で、全てを閲覧することができなかったため、再度の調査が必要である。また、これまでの研究成果も反映させるかたちで執筆した論文が、海外の学術雑誌に掲載されることが決まったことは、大きな成果である。以上のことから研究全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、先ず、1834年の中国貿易開放からアヘン戦争にかけての時期におけるカークマン・フィンリイおよびジェームズ・フィンリイ商会の動向をいっそう明らかにすることを目指す。そのためには、グラッドストン図書館を再度訪問し、1835年以降の書簡を調査することが必要である。ただし現地調査のための航空運賃や滞在費用が高騰していることもあり、ウェールズのグラッドストン図書館を再度訪問した上で、スコットランドのグラスゴー大学におけるジェームズ・フィンレイ・アーカイブの調査を当初の計画通りに実施することは、予算的に困難である。そのため、前者を優先し、予算が許す範囲で後者における調査を実施することが最善と考えられる。 また、これらの史料を過去の研究の際に収集したグラスゴー東インド協会の史料等と照らし合わせながら分析することで、グラスゴーの東インド利害関係者が、アヘン戦争などを含む東インド貿易・中国貿易に関連する様々な問題にどのように関与したのかについて評価することも目指す。
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