研究課題/領域番号 |
22K01643
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
金綱 基志 南山大学, 総合政策学部, 教授 (50298064)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | R&Dネットワーク / 研究開発のグローバル化 / 埋め込み理論 / トヨタ自動車 / ゼネラルモーターズ / 現代自動車 / 研究開発 / 埋め込み / LoO / 知識共有 / 製品開発 / 企業間関係 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、研究開発段階に焦点をあて、国内におけるネットワークのインサイダーシップが、海外におけるネットワークのインサイダーシップの獲得に与える影響について、産業間の比較に国ごとの比較を加えながら探究していく。この研究を通じて、国内において強いインサイダーシップを獲得しながら、企業間で知識を共有してきた企業が、海外のネットワークでインサイダーシップを獲得し、現地のパートナーと知識を共有することが可能なのかを明らかにしていく。
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研究実績の概要 |
本研究では、国内R&Dネットワークにおける高いレベルの埋め込みが、R&D活動のグローバル化の障害となるのかという点について、トヨタ自動車、ゼネラルモーターズ社(GM)、現代自動車3社の研究者による科学技術論文誌に掲載された共同研究のデータを用いて検証を試みている。その結果は以下の通りである。 トヨタ自動車の国内R&D拠点を中心とするR&Dネットワークは、2008年頃から国内の研究機関・企業との共同研究が増加し、同時に海外の研究機関・企業との共同研究も増加している。また、トヨタの海外R&D拠点を中心とするR&Dネットワークは、2013年頃から海外R&D拠点が立地する国の研究機関・企業との共同研究と、海外R&D拠点が立地する国を越えた研究機関・企業との共同研究がともに増加してきている。 GMのアメリカ国内R&D拠点を中心とするR&Dネットワークは、2000年代に入りアメリカ国内の研究機関・企業との共同研究が増加し、同時にアメリカ国外の研究機関・企業との共同研究も増加している。また、GMの海外R&D拠点を中心とするR&Dネットワークは、2013年頃からGMの海外R&D拠点の立地する国の研究機関・企業との共同研究を中心に拡大してきている。 現代自動車の韓国国内R&D拠点を中心とするR&Dネットワークは、2013年頃から韓国国内の研究機関・企業との共同研究を中心に増加してきている。一方で、韓国国内R&D拠点と海外の研究機関・企業との共同研究、及び海外R&D拠点における研究開発ネットワークは低水準で推移してきている。 国内において高い埋め込みの下で研究開発を行ってきたトヨタ自動車のR&Dネットワークが、GMや現代自動車と比較してもグローバルに拡大してきていることは、国内における高いレベルの埋め込みの下でのネットワークが国際的なR&Dネットワーク拡大の障害となるという見解には留意が必要であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、海外へのR&Dネットワークの拡大に、多国籍企業の本国内R&Dネットワークの在り方が影響を与えるのかという点を明らかにすることを目的としている。これまで埋め込み理論において、既存のネットワークにおける埋め込みレベルが過度に高い場合(over-embeddedness)には、ネットワーク外部と新たな関係性を構築することが難しくなること、そのためネットワーク内部のアクター間で共有される知識が同質化するデメリットが生じるとの指摘がされてきた(Portes and Sensenbrenner,1993; Gargiulo and Benassi,2000)。こうした議論を多国籍企業のR&Dネットワークに適用するならば、本国内において埋め込みレベルの高いR&Dネットワークを築いてきた多国籍企業は、R&Dネットワークを海外に拡大しながらR&D活動をグローバルに展開させることが困難ということになる。このように、国内での高いレベルの埋め込みで特徴づけられるネットワークを築いてきた多国籍企業は、いかなる状況の変化の下でもネットワーク外部との新たな関係性を構築することが難しいということになるのだろうか。 本研究では、これまでトヨタ自動車、米国ゼネラルモーターズ社、韓国現代自動車所属の研究者による国際的な共同研究の拡がりの推移を、科学技術論文誌のデータベースであるINSPECのデータを用いて検証してきた。その結果、国内において高いレベルの埋め込みの下で研究開発を行ってきたトヨタ自動車の国際的な共同研究の拡がりは、ゼネラルモーターズ社、現代自動車と比較してもグローバルに拡大してきていることが明らかとなっている。こうした点を明らかにしたことは、本研究が順調に進展していていることを示していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、本研究の最終年度となる。2024年度は、IT産業や半導体産業を中心に、これまで取り組んできた国内R&Dネットワークの拡がりと、国際的なR&Dネットワークの拡がりとの関連について検証していく。データは、科学技術論文誌のデータベースであるINSPECを用いるのと同時に、米国特許データも利用していく。科学技術論文誌のデータは、企業の基礎研究レベルにおけるR&Dネットワークの拡大を見るのに適しており、特許データは企業の工業技術レベルにおけるR&Dネットワークの拡大を見るのに適している。2024年度は、この二つのデータを利用することで、本研究の目的である海外へのR&Dネットワークの拡大に、多国籍企業の本国内R&Dネットワークの在り方が影響を与えるのかという点について、IT産業や半導体産業に焦点をあてながら明らかにしていく。
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