研究課題/領域番号 |
22K01692
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安田 聡子 九州大学, 経済学研究院, 教授 (90376666)
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研究分担者 |
玉田 俊平太 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (60312790)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 高度人材の国際移動 / 知識移転 / 内発的な知識移転モデル / 産学連携 / 非公式な知識移転ルート / 公式の知識移転 / 知識移転のスペクトラム |
研究開始時の研究の概要 |
産学官連携の主要アクター(「大学」「産業界」「政府」)は、バラエティに富んだ複数の知識移転チャネルを使いながら、イノベーションの実現・普及・実装を進めていることを明らかにする。日本に豊富に残されている一次資料(研究者の自叙伝、エッセイ、関係者による追悼集など)から「大学研究者と企業研究者・政策担当者の長期にわたる継続的な交流の軌跡」を再現し、同時に特許等を使った公式ルートも示すことで、知識移転の全体像に迫る。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は「知識移転の非公式な経路」を明らかにすることであるため、初年度にあたる2022年度は次の①および②について資料を収集して調査を行った: ①アメリカ産業の発展経路を19世紀から現代まで調査し、人材の国際移動が知識移転経路のコアであることを歴史資料から確認した。とくに、第2次世界大戦(WW2)前後の欧州諸国とアメリカの高度人材移動を綿密に調査し、「戦前~戦中は人材の国際移動により科学研究の中心が欧州からアメリカに移ってきたこと」、「戦後は国際移動により科学研究におけるアメリカの優位性が一層高まっていったこと」を定性的に明らかにした。 さらに1980年代~現代にかけて、アメリカのコンピューター産業の発展にもフォーカスし、台湾およびインドとアメリカを往来する高度人材の流れそのものが知識移転経路を形成していき、同産業におけるサプライチェーンの形成にも関係していることを、定性的に明らかにした。 加えて、国際政治の変化が知識移転に及ぼす影響に関しても、アメリカ・トランプ政権下の「チャイナ・イニシアチブ」にフォーカスして詳細に調査した。国際政治における変化―とくにヘゲモニーを争うような国際紛争が起こると、「非公式な知識移転」がたちまち犯罪行為と結び付けられることを明らかにした。これは既存研究には出てこない現象であり、知識移転に強いインパクトを及ぼす重要な要素である。これらの成果は、以下の書籍にまとめて2023年4月に出版した:宮田由紀夫・安田聡子(編著)『アメリカ産業イノベーション論』、晃洋書房、2023年。 ②日本の産学官連携と知識移転経路については、アメリカ型(=バイ・ドール型)の産学連携モデルが普及・定着する以前の時期(とくに1970~1980年代)の資料を集中的に収集して、日本独自の内発的な知識移転モデルが存在したことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究がフォーカスする「知識移転の非公式な経路」の存在理由に関しては、アメリカとそれ以外の先進国(欧州や日本など)では捉え方が若干異なる。アメリカでは知識移転機関(TLOやTTO)が知識移転に関与することに対して、研究者が何らかの不満を持つことが非公式経路の存在と関連していると説明することが多い。対照的に欧州(とくに大陸系の国々)や日本では、アメリカ型(=バイ・ドール型)の産学連携モデルが普及・定着する以前から独自の、内発的な知識移転モデルが広く受け入れられており、そうした中でアメリカ型を移植したことが関係している。つまり、一口に「非公式な経路」と言っても、アメリカと欧州・日本では、非公式経路の存在理由が異なると考えられる。 初年度は研究の参照点として、現在もっとも広く普及しているアメリカ型の知識移転(公式経路と非公式経路)の誕生から普及、そして変容について詳しく調べることが出来たうえ、書籍として出版することもできた。この成果は、2年目以降の研究の土台でもあり、また国際比較を行ううえでの参照点として活用できることから、「おおむね順調に進展している」とした。 また、日本の非公式経路についても多くの資料を収集することが出来た。今後は、さらに資料を収集しながら同時に、アメリカの事例と比較して、日本における内発的な知識移転モデルの誕生から発展、そして(アメリカ型の移植以降の)変質について調査・分析を進めていく。このように、次年度以降の調査に役立つ成果が出たことから、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は研究の参照点として、現在もっとも広く普及しているアメリカ型の知識移転(公式経路と非公式経路)の誕生から普及、そして変容について詳しく調べることが出来たうえ、書籍として出版することもできた。この成果は、2年目以降の研究の土台でもあり、また国際比較を行ううえでの参照点として活用できることから、「おおむね順調に進展している」とした。 また、日本の非公式経路についても多くの資料を収集することが出来た。今後は、さらに資料を収集しながら同時に、アメリカの事例と比較して、日本における内発的な知識移転モデルの誕生から発展、そして(アメリカ型の移植以降の)変質について調査・分析を進めていく。
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