研究課題/領域番号 |
22K01714
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
太田原 準 同志社大学, 商学部, 教授 (40351192)
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研究分担者 |
安達 晃史 大阪産業大学, 経営学部, 准教授 (30844534)
野田 遊 同志社大学, 政策学部, 教授 (20552839)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | DX / 地方自治体 / 行政サービス / 効率性評価 / 人口集積 / 垂直連携 / 二重ブートストラップ法 / DEA / 自治体効率性分析 / 人口集積の弊害 / 自治体経営のDX / 自治体組織の構造 / 東京一極集中 / TQM / 生産性 / 構造方程式モデリング / 包括分析法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,①自治体経営における生産性の決定要因,②NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)の一環であるTQM(総合的品質経営)など行政改革の取組レベルが地方自治体の経営効率性や生産性に及ぼす影響,を定量的に明らかにすることを目的とする。SEM(構造方程式モデリング)を用いてモデル化し,DEAやSFAといったベンチマーキング手法によって,最終的に地方自治体におけるTQMをはじめとする行政改革の取り組みが効率性に与える影響を明らかにするという極めて新規性の高い試みである。昨今の行政改革の有効な手段としてTQMの導入が広がるなか,取組成果の客観的・体系的な測定手法の開発は緊急性の高い課題である。
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研究実績の概要 |
2023年度は市区町村における行政サービスの効率性評価を行い,非効率をもたらす要因を特定することができた。2015(平成27)年の市区町村を対象として非効率性の要因分析を行なった結果,東京23区においては,人口密度の増加が自治体の効率性を阻害する要因となっている可能性が示された。その他多くの自治体では,人口密度の増加が自治体の効率性に寄与していることも明らかとなった。この分析結果は,安達晃史・野田遊・太田原準「市区町村の効率性評価:東京の一極集中の限界」『日本経済研究』(受付番号5030)に掲載が決定している。 次に自治体の総合経営品質活動を評価するため,DX(Digital Transformation),垂直連携、人口集積の効果を調査した。日本の1,738の市町村と東京23区を対象に、DEAとMIを用いて、自治体サービス生産の効率性と生産性について検討した結果,DX推進による効率化効果は確認できず、ガバメントクラウド(政府推奨の自治体クラウドシステム)を早期に導入した自治体の生産性が相対的に低い点,第二に、自治体の財政改善努力を伴う垂直連携の強化は、自治体サービスの生産性向上と効率改善に寄与する可能性がある点,最後に、人口集積は自治体の効率性と逆U字型の関係にあり、人口集積による効率性のメリットと過密による流出が同時に発生している点である。この分析結果は,Koji Adachi and Jun Otahara,"Service Efficiency and Productivity with Digital Transformation in Japanese Local Governments," Yu Noda eds. Local Governance in Japan Ch.6, Springer(Forthcoming)に掲載が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二重ブートストラップ法を用いた市区町村の効率性評価をおこない,自治体のパフォーマンス評価をアップデートすることが出来ただけでなく,東京都における集積の不経済性という重要な知見を得ることもできた。さらに高知県庁,大分県庁,鳴門市へのフィールドワークにより,近年の自治体における品質経営に影響を与える焦点がDXや自治体の垂直連携にあることが示唆された。 以上から,DX(Digital Transformation),垂直連携、人口集積の効果を日本の1,738の市町村と東京23区を対象に、DEAとMIを用いて、自治体サービス生産の効率性と生産性について検討することができた。DX推進による効率化効果は確認できなかった点,早期に導入した自治体の生産性が相対的に低かった点は常識に反する結果となり,見かけ上のDX推進に警鐘を鳴らす結果となった。他方,自治体の財政改善努力を伴う垂直連携の強化は、自治体サービスの生産性向上と効率改善に寄与する可能性がある点がは研究課題に照らして新しい知見を得られたと言える。人口集積は自治体の効率性と逆U字型の関係にあり、人口集積による効率性のメリットと過密による流出が同時に発生している点も改めて確認することができた。 以上により,自治体における総合的品質経営とパフォーマンス評価に関する実証研究は計画通りに進んでおり,加えて当初は想定していなかった重要な知見も得られていることから,「当初の計画以上に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,いわゆる自治体DXに関する先行研究を広くサーベイしながら,フィールドワークを重ねることにより,地方自治体のDXとBPR(Business Prpcess Reengineering)を進める要因やプロセスについて実証研究を行う予定である。具体的には,構造方程式モデリングを用いて地方自治体のDX(Digital Transformation)およびBPR(Business Process Re-engineering)の推進と組織構造との関係に関する仮説について検証をおこない,首長のリーダーシップ,横断的組織構造,DXに対する職員の意識が,DX およびBPRによる行政改革の推進に与える効果について論文にまとめる。2025年度は以上の成果を地方自治体のDXとパフォーマンス評価に関する単著としてまとめ,広く世に問いたいと考えている。
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