研究課題/領域番号 |
22K01750
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07090:商学関連
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
仁平 京子 千葉商科大学, サービス創造学部, 准教授 (70714492)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 老舗企業 / 価値共創 / 価値共破壊 / 環境不確実性 / 戦略的柔軟性 / フロントライン従業員教育 / インターナル・サービス・リカバリー / 主意主義的行為 / サービス・リカバリー / サービスと製品の失敗 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、従来のサービス・リカバリー研究にサービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)の発想を応用し、老舗企業と顧客の価値共創と価値共破壊の相互作用プロセスについて理論を構築することを目的とする。 第一に、本研究では、日本の長寿企業や老舗企業において企業不祥事を経験したサービス業と製造業を調査対象に、リカバリー戦略におけるリカバリー満足やリカバリー不満足に関する実証研究を行う。 第二に、本研究では、S-Dロジックの視点から伝統的なサービスと製品の概念・分類の再定義を行い、サービスの失敗と製品の失敗におけるリカバリー戦略の特質の差異、サービス・リカバリーと製品リカバリーの理論を構築する。
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研究実績の概要 |
従来のサービス・ドミナント・ロジック(SDL、S-Dロジック)の研究では、企業と顧客の「価値共創」の関係性を核として、企業と顧客がともに価値創造の主体となることを前提に捉えられてきた。 しかし、企業不祥事やトラブル、事故の発覚は、企業と顧客とのマイナスの価値共創として、「価値共破壊」の相互作用をもたらすリスクを示唆している。 現代のVUCA時代(ブーカ時代)におけるリスク社会の高まりから、老舗企業は、「企業不祥事の事後対応を含めて最悪のリスクを計画的に想定し、事前予防型の危機管理の実践的シミュレーションによる対策が必要である」という前提のもとに、「環境不確実性」と「戦略的柔軟性」の視点からリスクマネジメントやリスク・コミュニケーションを検討する必要性がある。 本研究では、現代のリスク社会におけるマクロ環境要因とミクロ環境要因の戦略的柔軟性の多角性とリスクマネジメントの関連性に着目し、老舗企業と顧客の価値共破壊プロセスについて、アメリカと日本の企業不祥事の事例を分析することを目的とする。 第一に、本研究では、消費者の権利意識の向上によるネガティブくちコミ(NWOM)の情報的影響力に焦点を当て、サービス・リカバリー研究におけるサービスの失敗と製品の失敗から顧客の信頼を回復するリカバリー力を戦略的柔軟性の視点から検討した。第二に、既存研究では、サービス・リカバリーの受益者である消費者心理と消費者行動に焦点を当てているが、本研究では、従業員に焦点を当て、「フロントライン従業員教育」としての「インターナル・サービス・リカバリー」の重要性を検討した。第三に、本研究では、従来のサービス・リカバリーのマニュアル教育だけではなく、日本型サービス・リカバリー・システムの構築に向けて、フロントライン従業員教育における日本の老舗企業の家訓、口伝による「主意主義的行為」の特質について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の研究計画では、老舗企業への企業インタビュー調査やフィールドワーク調査、学会参加のために、旅費交通費や企業インタビュー調査などを予算として計上していた。 しかし、コロナ禍における新型コロナウィルス感染症の全国的な曼延により、調査対象の老舗企業への出張による企業インタビューやフィールドワーク調査の実施が困難な状況にあった。 そのため、本研究の研究手法を再検討し、サービス・マーケティングやリスクマネジメント、老舗企業に関する文献調査や事例研究、インターネット・リサーチなどによる二次データの分析へと研究計画を変更した。 今年度は、前年度の研究成果を踏まえて、老舗企業への企業インタビュー調査や消費者調査などの実証研究の実施を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の検討課題として、以下の3点が挙げられる。第一に、本研究では、企業不祥事後の日本の老舗企業のロングセラー商品の不祥事報道やブランドリスク・マネジメントについて、製品事故発生の際の初期対応、不祥事報道後の信頼回復の取組みなど、品質管理システムにおける製品の安全性と企業の社会的責任(CSR)について検討する必要性がある。 第二に、老舗企業は、「『欠陥商品を作らない』のではなく、あらゆる企業活動において、大なり小なりの企業不祥事が起きる可能性、欠陥商品や事故、リスクは発生するものである」という前提で捉え直し、消費者発信型メディアによるネガティブくちコミ(NWOM)やSNSクレーム、ネット炎上、風評被害などを計画的に念頭に置いた事前予防型の全社的リスクマネジメントやリスク・コミュニケーションを導入する必要性がある。 第三に、老舗企業は、災害時における企業の事業活動の継続を図る「事業継続計画(BCP)」の策定率が高いため、危機意識が高いことも老舗企業の特質の一つである。本研究では、日本の長寿企業や老舗企業のリカバリー力に着目し、企業リスクやブランドリスクに対する強さの源泉や老舗企業に対する消費者のブランド・ロイヤルティ、製造業とサービス業のリカバリー戦略の特質の違いを検証する必要性がある。 これらの研究成果は、日本経営診断学会や日本消費経済学会、サービス学会などで学会発表を行い、学会誌や大学紀要に論文投稿を行う予定である。
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