研究課題/領域番号 |
22K01751
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07090:商学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
加藤 一誠 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (60290269)
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研究分担者 |
中東 雅樹 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (30406714)
後藤 孝夫 中央大学, 経済学部, 教授 (60435097)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 道路 / 近隣効果 / 地理的近接性 / 相互参照行動 / 交通インフラ / ストック効果 / 地域間競争 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、交通政策の近隣効果と地理的近接性が交通インフラ整備・運営の効率性に与える影響を体系的に明らかにする。日本の地方空港を対象とした分析では、路線誘致における横並び意識に基づく自治体間の補助金競争の要因を分析し、効率性の改善策を提案する。道路を対象とした分析では、維持管理事業において地理的近接性を考慮に入れ、自治体間の政策の近隣効果(当該自治体と隣接する自治体の維持管理状態の関係)を検証する。そこから、道路の広域管理による効率的な整備水準の改善の可能性を探る。そして、自治体の交通インフラ整備・運営における意思決定要因を理論的・実証的に明らかにし、交通研究体系への学術的貢献につなげたい。
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研究実績の概要 |
本年度は以下の3つのテーマで研究を実施しており、それぞれの状況を説明する。 (1)日本の道路:国が2014年度以降とりまとめている道路・トンネル・橋梁の点検結果を収集し、道路の維持管理施策の実施状況を点検結果から捕捉する方法を検討した。そして、検討した方法に基づく予備調査として、道路施設の点検結果が相対的に悪い都道府県を抽出したうえで、当該都道府県の道路施設の点検結果を施設単位で統合する作業を実施中である。 (2)アメリカの道路:加藤(2021)における分析の改善も含めた数年間にわたる本研究の成果の一部を発表する機会を得て、加藤・中村(2022年12月)となった。そして、最新の関連文献のサーベイとともに州レベルのデータを収集し、それらの内容を論稿にまとめた(2022年11月)。また、アメリカでも燃料税関連の収入が大きく減少しており、各州は燃料税の引き上げ、道路利用課金(Road Usage Charging、RUC)の導入および有料制の導入によって対応していることがわかった。加藤・安部(2022)は、そのうちの有料道路の導入が増加している現状を紹介しており、23年度以降の分析のヒントとなっている。 (3)日本の行政活動における近隣効果(相互参照行動):本年度は邦語論文9編(社会保障4編、財政系4編、観光系1編)をサーベイした。近隣効果が生じる要因の有力な仮説として、当該自治体の投票権をもつ住民がサービス水準を他自治体と比較し評価することで、自治体政策決定者は他自治体のサービス水準を重要視することになり、政策に相互関係が生じるというメカニズムがあることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
条件が悪いなか、研究補助者を加えて対面で研究会を開催し、現状報告、今後の活動方針を決めることができた。その内容にもとづき、メンバーそれぞれが当初の目標としていたサーベイ、データ入力、分析方法の検討およびモデルの改善という課題の一定部分はクリアしたと考えている。もっとも、コロナ禍において海外学会はハイブリッド開催となったものの、諸条件が整わず、研究補助者とともにオンライン報告となったことは残念であった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降、新しい研究協力者を加え、4名で研究を実施する予定である。 道路を対象にした分析においては、現在進めている予備調査の結果を検討し、本格的に調査をはじめ、そこから、自治体の道路施設の維持管理の実施状況(健全性からみた改善状況)を明らかにする。そのうえで、別途実施している地理的近接性を考慮した理論研究をふまえた統計分析を実施する。また、北海道内の市町村管理の橋梁を対象に正の「近隣効果」が発現することを明らかにした中村(2023)の結果を補強するため、近隣効果が発現する要因をヒアリング調査により明らかにするとともに、理論的背景について文献レビューを通じて整理する。さらに、地域交通事業を対象として相互参照行動を分析する。あわせて、海外における相互参照行動をサーベイし、日本における近隣効果(相互参照行動)と比較する。そして、これらの研究結果をできる限り公表していきたい。 空港を対象にした分析では、成田・羽田・関西の3空港を除く国内空港を対象とするパネルデータ分析とサバイバル分析から近隣空港との競争が持続性を低下させうることを明らかにした中村(2022)を拡張し、実需要データによる分析に本格的に取り組むとともに、協力ゲームの観点から提携構造の考察を進める。さらに、提携形成シミュレーションなどにも取り組む予定である。
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