研究課題/領域番号 |
22K01813
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 学校法人文京学院 文京学院大学 |
研究代表者 |
中島 真澄 学校法人文京学院 文京学院大学, 経営学部, 教授 (90249219)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 会計不正 / アーニングス・マネジメント / トーン・マネジメント / 印象管理 / テキスト分析 / CEOレター / MD&A開示 / 難解化仮説 / 経営者の裁量行動 / 不正表示 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、経営者は、Toneで印象管理理論に依拠して投資者をミスリードしようとしているのか、それともCommunicative Action 理論に基づいて情報伝達的であるのかを解明する。従来の研究は、ナラティブ情報のテキスト分析手法を用いて難解化仮説を検定することによって印象管理を検証していたが、本研究は、Huang et al.(2014)モデルから異常Toneを算出し、当該異常Toneと修正Jones モデル(1995)からの裁量的発生高との関連性を検証し、既存研究にはない、定性および定量情報の両方から経営者の裁量行動の新しい捉え方を提供可能となる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、不正表示の利益の裁量行動とナラティブ情報に対するTone Managementとの関係性を明らかにすることであった。2022年度の成果は次のとおりである。第1に、日本基準企業では、不正企業において異常トーンと異常アクルーアルの間に有意な関連性が観察されたことから、不正企業経営者が利益の裁量行動とトーン・マネジメントを同時に実施していること、すなわち、利益の裁量行動を隠蔽するためにトーン・マネジメントを行う必要があることを提示した。第2に、CEO(Chief Executive Officer: 最高経営責任者)レターのトーンやテキストの特徴が不正と非不正企業間に差異があるかを米国上場日本企業で検証し、不正企業のCEOレターはポジティブ用語に有意であること、トーンと財務ファンダメンタルズ間が無相関であること、特徴的な用語を使っていることがわかった。当該結果から、CEOレターのトーンおよびテキストの特徴に不正企業、非不正企業間で差異があること、すなわち、不正企業経営者はナラティブ情報を難解化させる印象管理をした可能性が高いことを示した。第3に、日本企業のManagement Discussion and Analysis(MD&A)を用い、不正と非不正企業の間で可読性(Readability)に有意差があるかどうかを検証し、学年(Grade)に有意差があることを明らかにした。 第1の成果としては、学会報告に、中島(2022)を日本経済会計学会で、Nakashima (2022a),Nakashima (2022b)を米国会計研究学会年次大会とアジア・パシフィック管理会計学会でそれぞれ報告した。第2の成果としては、中島(2022)、Nakashima (2022b)を刊行した、第3の成果としては、Nakashima et al.(2022)を公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究自体は順調に進展しているが、円安および学会出張関連費用の高騰により、海外での口頭報告が難しくなっている。国際学会報告は、自身の研究を広く公表できるだけではなく、海外研究者との議論や指摘等により、自身の研究の質を向上させる貴重な機会である。こうした国際学会報告が以前と同様に実施できなくなっていることが、研究の進捗に若干の影響があるかもしれない。しかしながら、国内での国際的な学会で報告することに替えることでこれまでの研究の進展度水準を維持していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、第1に、パンデミック(coronavirus; COVID-19)が経営者によるテキスト情報の開示アプローチに与えた影響について、日本における非不正企業および不正企業のManagement Discussion and Analysis: MD&A)開示情報について計量的分析に 基づいて考察する。 第2に、テキスト情報による不正検知手法研究に機械学習を入れていく。財務諸表不正に対してロジスティック回帰手法を用いた研究にNakashima(2021)がある。また、テキスト情報を用いた計量的分析としてNakashiama et al.(2022)、中島(2022)およびNakashima (2022b)がある。しかしながら、海外での不正検出の一連の研究と比較すると、日本における財務諸表不正検出研究は、遅れをとっている。そこで、本研究は、テキスト情報に対する財務諸表不正検出研究に対して機械学習を活用してすすめていく。また、機械学習手法の分析性能とモデルの解釈性にも着目し、テキスト情報に対する財務諸表不正検出における機械学習の可能性について考察を行う。
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