研究課題/領域番号 |
22K01819
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
奥村 雅史 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (30247241)
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研究分担者 |
金 奕群 早稲田大学, 商学学術院, 講師(任期付) (20879449)
張 瀟月 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (60961993)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 利益訂正 / 修正再表示 / 空売り / ショートセラー |
研究開始時の研究の概要 |
企業によって公表された会計利益が公表後に訂正される事象(利益訂正)は,投資家に不測の損害を与えたり,企業経営自体に影響したりする可能性がある。本研究は、日本企業の利益訂正事例を網羅的に収集し,その実態を調査し、資本市場と企業経営に対する影響を詳細に検証する。具体的には,年次利益および四半期利益について,訂正の特徴,訂正に関連する投機家行動,訂正企業の企業ガバナンス特性を調査することで,財務報告制度やガバナンス制度への有用な知見の獲得を目指す。
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研究実績の概要 |
2009年から2022年までの利益訂正のケースを日本経済新聞社が提供するFinancialQUESTから収集し,利益訂正における内容と利益訂正企業自体の特性について,その実態を調査した。そして,利益訂正公表直後およびその後の比較的長期の株価動向および財務パフォーマンスを分析した。以上の調査から,調査対象期間において利益訂正が多様な業種にわたって生じており,その件数は増加傾向であること,訂正の内容(原因,規模,範囲など)や利益訂正に関する公表プロセスと,利益訂正公表時点での株価反応,利益訂正公表後における比較的長期の株価の動向や財務パフォーマンスの動向が関連していることが明らかになった。 これに加えて,利益訂正企業における決算発表説明会について分析するために,Script ASIAが提供する決算説明会のトランスクリプトのデータを入手した。このデータを利用して,利益訂正企業の決算説明会における特性であるトーンをGoogleの大規模言語モデル(BERT)によって分析するため,当該モデルを利用した分析手順について整理した。また,利益訂正は投資家にとって重要な事象であるため,その予測は価値が大きい。そこで,同じトランスクリプトのデータを利用して利益訂正の予測可能性を分析するための基礎として,決算説明会のトランスクリプトを利用した売上高の予測可能性について分析し,予測モデルを公表した。 また,日本における財務諸表の訂正に関する実態について英文で公表するための準備として,訂正に関する取引所における適時開示制度上の開示ルールと金融商品取引法上の開示ルールについて整理し解説を作成し,順次英文化を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画に加えて,企業ガバナンスのより詳細なデータを利用した分析を行うこととした。そのために企業ガバナンスに関するデータを有価証券報告書からハンドコレクトする必要があり,その実施に追加的な時間がかかる予定である。また,決算説明会のトランスクリプトを利用したトーン分析および予測分析も当初の計画にプラスした分析であり,その準備をするために時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,(1)利益訂正とガバナンスの関係の分析,(2)決算説明会の内容と利益訂正の関係の分析,(3)日本企業の利益訂正の実態調査のまとめをすることを計画している。 (1)については,上場企業のガバナンス特性に関する詳細なデータベースを日経メディアマーケティング社が提供するCgesのデータにそれを補完するデータ(主に,会社役員の専門能力に関するデータ)を有価証券報告書から収集することによって作成し,これを利用して利益訂正企業と非訂正企業のガバナンス特性を比較・分析する。さらに,利益訂正企業における内部統制報告書を分析することによって,訂正の原因と内部統制報告書の内容の関係を分析する。 (2)については,Script ASIAが提供する決算説明会のトランスクリプトのデータを利用して,利益訂正企業の決算説明会のトーンの特性を調査するとともに,利益訂正の予測可能性について分析する予定である。 (3)については,収集した利益訂正のデータに関する分析を総括することによって,日本企業における利益訂正の特性を英文で文書化する。具体的には,これまで収集してきた利益訂正のケースを利用して,長期的な訂正件数の推移,利益訂正企業の基本特性,利益訂正の公表に対する株価反応などについてまとめる。
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