研究課題/領域番号 |
22K01833
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
永谷 健 三重大学, 人文学部, 教授 (50273305)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 金銭観 / 経済エリート / 近代教育制度 / 戦後日本 / 歴史社会学 / 金銭 |
研究開始時の研究の概要 |
現代日本においては、経済的豊かさの差異の拡大に伴って蓄財・散財に関わる意識の多様化が進行している。また、非正規雇用の拡大に伴い、若年層の金銭的な野心の減退が指摘される。本研究では、そうした状況を踏まえ、金銭の扱いや金銭に媒介されたライフスタイルが多様化していると仮定し、金銭に関わるハビトゥスの現代的な生成過程とその多様化のプロセスについて検討する。具体的には、戦後から現代にかけて正統な金銭観や金銭的な作法がいかに形成されていったのかをメディア・教育・経済政策の各分野に関わる資料を分析し、それらがいかなる出来事や諸主体の関係性の下で変容したのかを歴史社会学的な視角から明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の初年度にあたる2022年度は、スタートアップとしての総合的な考察を行った。すなわち、近現代日本の金銭観や金銭作法の形成に大きな影響力を持った経済エリートの社会や文化における位置取りについてである。具体的には、日本の近代化に特徴的な階層の再編過程における彼らの階層的な位置取り、そして、彼らの文化的な影響力である。考察で明らかになった点は次の通りである。 1.彼らは殖産興業という国策の優等生であったが、その点と封建期由来の賤商意識のあいだの齟齬は、彼らの社会的な位置取りを不安定なものとした。そうした不安定さゆえに、多様な差異化の戦略が彼ら自身によって講じられた。彼らがいわば作為的に、また急ごしらえで生み出そうとしたエリートとしてのアイデンティティは、それらの差異化に依存していた。それは学問や学校世界に対する意図的な貶価、そして、既成の正統文化(封建期に由来する伝統文化)への接近によって支えられていた。 2.前者は「虚文」や「虚学」を排する思想の延長線上にあるが、明治期においては近代教育制度への懐疑がその内容となる。雨宮や渋沢、そしてその後の実業家たちが反学歴主義や高等教育不要論を唱えるのはその現れである。 3.後者にあっては、明治の前半期においてエリート文化を彼らが探索するなかで伝統文化をその核として採用したことである。 4.二つの差異化はプレモダンへの志向という特徴を共有している。彼らは革新性と反知性主義・伝統主義を持ち合わせる集団であった。この点は、日本の経済エリートのその後の社会的な位置取りに少なからず影響した。 5.経済エリートによる思想表明が近代教育制度への懐疑や伝統文化擁護に傾いていたことは、戦後日本の金銭観や金銭作法のあり方に大きな影響を与えたと推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在は戦後の金銭観や金銭作法に関わる資料の収集に力を入れており、収集作業は順調に進みつつある。ただし、研究期間の初年度ということもあり、研究成果はまだ充実していない。
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今後の研究の推進方策 |
当初予算に前年度からの繰り越し分が加わることで研究費を余裕をもって使用できることになったので、戦後日本の金銭観や金銭作法に関する資料の収集をまずは充実させる。とくに雑誌・新聞記事、金銭教育に携わる教育機関関係の資料、貯蓄動向・消費動向に関係する資料の収集に努める。また、中間的な研究成果を論文として公表したい。
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