研究課題/領域番号 |
22K01836
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
山下 祐介 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (90253369)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 環境 / 自然保護 / 世界遺産 / 過疎化・人口減少 / 地域社会 / 過疎問題 / 過疎 |
研究開始時の研究の概要 |
この研究では白神山地を題材に、世界自然遺産登録がもたらした地域社会への社会的影響を、この間の地域社会の変化のうちに検証する。その中で自然保護と地域政策のあいだに生じたジレンマを探り、その解決に向けた社会的課題を抽出するとともに、持続可能な地域社会を実現するための地域政策のあるべき姿を社会学的観点から考察する視座について考察する。この目的を達成するために当該遺産の周辺地域の歴史・地誌を収集し、また現地調査を行う。得られた成果は出版などを通じて広く発信していきたい。
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研究実績の概要 |
今年度は白神山地周辺地域(環白神地域)について、とくに秋田県側の産業史に注目して調査検討を行った。調査地としては、秋田県八峰町、藤里町、能代市とともに、状況比較として深浦町、鰺ヶ沢町、弘前市を検討した。調査では各地について総合的な視点から、地域的歴史的資料の収集を図った。 結果として以下のことを確認した。①秋田県側の開発圧力と、青森県側のそれとのあいだに大きな違いが見られ、それは近世に遡るものである。②明治以降の近代史においてもこの差が大きく、このことが青秋林道開発の八峰町側からのルート設定につながっている。③他方で、八峰町に関しては本来、林業開発の圧力は低い。これに対し、藤里町の調査から、鉱山開発と林業開発の交錯が各地に固有の事情を引き起こした可能性が析出され、その検討が次年度以降の課題となる。④産業史の検討は、最終的には平成期までのこの地における産業空洞化を明確にすることにつながるが、その原因がグローバル化であることを考えると、それがこの先にどう変転するのかを見据えてこの変動論は提示されなければならない。 なおとくに本年度の調査では、この数年の風水害の結果、入山が事実上禁じられている事情も生じており、また獣害が深刻化している。入山規制/自由化の議論の先に、国民の山林からの撤退が色濃く表れている事情があり、次年度はこれらをふまえ、前年度までの調査の結果とあわせて総合的な環白神の社会史の構築を試みたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白神山地周辺の調査では、あいつぐ風水害による交通の問題により、調査実施の計画変更を迫られたが、これまでに環白神地域の全体で調査・検討は進められており、おおむね順調といえる。 他方で、過疎/人口減少問題が加速度的に進行し、2024年4月末の人口戦略会議のレポートでは、青森/秋田両県は全面的に消滅可能性が指摘されている。 しかしながらまた、環白神圏内でも、移住による集落再開の事例が拾えており、限界集落とよばれる地域でもいま何かが崩れていくというような状況にはない。 本研究が試行するように、研究の時間のスパンを広げ、また広域的な比較の視点で見直すことで、この問題への新たなアプローチの仕方がないか検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでの研究の成果を改めて見直し、総合的な環白神の社会史を構築する予定である。それをもとに、その先の社会状況を、社会学的預見として提示することを試みていきたい。ただしこの点もまた現実の地域社会の動きと連動するものである。2024年度は白神山地30周年の成果事業が地元自治体の間で行われる予定であり、その観察/精査も含めて、本研究の結論を出していきたい。
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