研究課題/領域番号 |
22K01883
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
阿部 るり 上智大学, 文学部, 教授 (60365682)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | メディア / イギリス / ダイバーシティ / レイシズム / 多文化社会 / 宗教的マイノリティ / 放送 / イスラーモフォビア / ジェンダー / イスラーム |
研究開始時の研究の概要 |
多様な価値観がせめぎ合う移民社会イギリスにおいて、メディアのダイバーシティの確保や実践が重要な課題となっている。イギリスのメディアは1990年代からダイバーシティに関する議論を積み重ねてきた。ただ、相次ぐテロなどにより、イスラームへの嫌悪感が強まるなか、メディアがマイノリティであるムスリムを多様な視点で報道できているかについては検証の必要がある。本研究ではダイバーシティの実践において先進的に取り組んできたイギリスのメディアが「ムスリムとの共生」という課題において、ダイバーシティの問題にどのように取り組んできたかを問い、多文化社会イギリスにおけるメディアの役割とその可能性について明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度においては、「多文化社会イギリス・メディアにおけるダイバーシティの実践とその批判的検討」を主要な研究テーマとして設定し、以下の3点から調査研究を行った。(1)2010年代以降、「ダイバーシティ」概念が打ち出された背景に、どのようなメディアをめぐる状況や社会状況があったのか。(2)ポスト「マルチカルチュラル放送」期、新たに打ち出された「ダイバーシティ・スキーム」はどのような「多様性」を志向するスキームであったのか。(3)放送メディア業界が志向するメディアにおける「ダイバーシティ・スキーム」は「表面的な改革」とも批判されてきたが、問題点はどのような点にあるのか。調査の結果、イギリス社会において「多文化主義の危機・破綻」後の新たなスキームが求められるなかで、放送メディア業界では「ダイバーシティ」を掲げた「改革」が行われた。しかし、モニタリングを通した数値的な指標の向上が実現されたものの、そのことが必ずしもメディア界における差別解消には至っていないことが明らかとなった。具体的には、a. オンスクリーンについての(画面上のキャスティング等の)決定権をもつ層が依然としてマジョリティによって占有されていること。b.民族的、人種的、宗教的マイノリティが、モニタリングにおいて「Black, Asian, Minority Ethnic」と一つのカテゴリーとして括られ、民族的、宗教的な多様性が数ある多様性の一つに過ぎない存在として位置づけられたこと。c. 数値上での向上が「改善」ととらえられ、今なお続く人種的不平等が「問題」とされづらく、社会やメディア業界に根強く存在するレイシズムが不可視化され、再生産され続けるという逆説的な状況に陥っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度は科研費応募時、想定していなかった学内業務(役職)に就くことになり、業務に割かなければならない時間が非常に長く、予定していた研究を計画通りに実施することが難しい状況にあった。
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今後の研究の推進方策 |
放送メディア界における「ダイバーシティ・スキーム」において民族的、人種的、宗教的マイノリティが「Black, Asian, Minority Ethnic」として「多様性」の一部を構成する存在と位置付けられたことで、看過されてきた問題の一つでもあるメディアにおけるイスラモフォビアの問題について調査を行う予定である。
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