研究課題/領域番号 |
22K01889
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
関 礼子 立教大学, 社会学部, 教授 (80301018)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ふるさと剥奪 / ふるさと損傷 / 土地に根ざして生きる権利 / 原発事故 / 公害 / 裁判 / 社会運動 / 環境思想 / ふるさと / 法と社会 / 福島原発事故 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、福島原発事故がもたらした「ふるさと」被害の根底に「総有」をおき、もともと地域にあった環境思想・倫理ともいうべき「暮らし方」の剥奪・損傷の実態を明らかにするとともに、被害地域をめぐる現実を法に接合させていくことを試みる。具体的には、(1)放射能による環境汚染が原状回復を免れる論理を環境的公正に引き戻すこと、(2)復興を事業という器ではなく、地域社会のエンパワーメントの側に引き寄せること、(3)「ふるさと」という概念から福島原発事故後の環境思想を理論として描き出す。
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研究実績の概要 |
本研究は、現在進行形で係争中の問題であり続けている公害問題(原発公害を含む)について、環境社会学の〈加害―被害〉構造や生活環境論の観点から検討し、新たな環境思想の生成を目指すものである。 原発事故に関しては、避難指示との関係で、避難指示等区域における「ふるさと剥奪」被害とその継続について、自主的避難等対象区域における「ふるさと損傷」被害について明らかにした(なお、ここでの「ふるさと」は「人と自然のかかわり」、「人と人とのつながり」、それらの「持続性・永続性」が三位一体になったものと定義する)。これら「ふるさと」の被害は当該地域の共通被害として示され、集合的環境権にかかわる思想的展開を示し得る。それを「土地に根ざして生きる権利」として議論を深めた。「ふるさと剥奪」に関しては、避難指示区域の解除によっても「ふるさと剥奪」被害は持続するという観点が裁判で認容された(確定判決)。 自主避難等対象区域については、健康被害の有無を重視して被害が論じられがちであるが、原発問題を特徴づける<中心ー周辺>構造同様に、一般人・普通人の観点から「未除染下での生活(滞在)」被害がそもそも環境的不公正であることを明らかにした。 産業公害に関しては、新潟水俣病の被害が地域を母数にして水俣病罹患の有無を論じる必要があること、地域の生活文化(人と自然とのかかわり、人と人とのつながり)という集合的環境条件が被害の状況および被害者運動を解く鍵になることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
公害問題における<加害ー被害>構造の解明は、裁判における損害論と親和性があり、研究内容の社会的承認が判決において得られ、法学と社会学を接続する思想の切り口を集合的環境権の発想に求めることの適切性に裏打ちを得た。
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今後の研究の推進方策 |
原発事故問題に関しては、いわゆる「中間地域」といわれ、国の避難指示等区域と自主的避難等対象区域の双方の特徴を持つ地域(南相馬市鹿島区)をいかに捉え、位置付けるかが、次なる課題となる。集合的環境権という発想から理論的に原発公害被害の全体像を明らかにし、生活環境主義の理論を展開していく必要があるので、引き続き、フィールド調査を軸に研究を進めていく。 産業公害に関しては、「ノーモア・ミナマタ」を冠する3つの裁判(近畿訴訟、熊本訴訟、新潟訴訟)が2023年9月から2024年4月に出そろった(東京訴訟は審理が遅れている)。これら判決を参照しつつ、既に発生した公害被害の解決に必要な制度的視点を考察する。 また、最終年度にあたることから、本研究課題について、とりまとめをする。
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