研究課題/領域番号 |
22K01905
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
魁生 由美子 愛媛大学, 教育学部, 教授 (70331858)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 100円モーニング事業 / 官民協働 / 隣保館 / 在日コリアン高齢者福祉 / コミュニティケア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は福祉社会学、地域福祉研究の先行研究を踏まえ、地域包括支援システムにおいて想定されている30分以内にサービス提供等の対応が可能な小地域に着目し、少子高齢化が進展する中で高齢者等ケアを必要とする住民を守り、地域を再創造するコミュニティケアの様態を把握する調査研究である。具体的な対象として、在日コリアン集住地域のデイサービス事業所および、隣保館を予定している。 本研究は、縮小社会を支えるコミュニティケアのあり方に福祉社会学の知見から指針を与えるとともに、既存の社会資源と地域活動を現行の福祉施策の中に再定義する作業を行い、「小さな官民協働」「小さな公的サービス」を活性化するために提言を行う。
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研究実績の概要 |
これまでの研究で、厚生労働省が推進する地域共生社会を実現するためには、地域単位での「小さな官民協働」「小さな公的サービス」が不可欠であることが明らかになった。家族の形態が変化し、不安定化した個人が「自助」「互助・共助」ベースで地域生活を継続できるようにするためには、公としての自治体と地域における多様な組織が連携して行う、細やかな地域生活支援が不可欠である。 事例として、1990年代以降、大阪市生野区における在日コリアンが中心となって取り組んでいる地域福祉活動について、現地調査を中心とした研究を進めてきた。2022年度は本務校の業務、コロナ感染状況により、現地調査を実施することができなかった。ただし、リモートによる参加が可能な「在日コリアン高齢者支援ネットワーク・ハナ」研修会等に参加し、関係の実務家、研究者と研究交流を行うことができた。 人口減により急激に縮小する地方の地域生活を支えるコミュニティケアの担い手として、隣保館に着目し、現地調査を進めている。とくに香川県下の隣保館28館中20館(2021年度実績)において取り組まれている「100円モーニング」事業に参加し、食事や会話等、ふだんの活動を通じて地域のつながりを再生する場を観察している。2022年度は、コロナ感染の沈静期に現地調査を実施する機会に恵まれ、高松市田村文化センター、小豆島町草壁会館で「100円モーニング」に参加することができた。これら現地調査については、2023年度中に日本社会福祉学会等で報告を行い、ブラッシュアップを経て、リサーチペーパーのかたちで公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はコロナ感染の沈静期に現地調査を実施することができた。 ただし、現地調査に向かう際の移動手段は、感染予防のため、原則として自家用車としたため、航空機利用等が必要になる大阪市生野区等で予定していた現地調査を実施することができなかった。代替として、web上で収集できる資料を精査し、リモート参加が可能な学会・研究会等に積極的に参加した。 ただし自家用車によるアクセスが比較的容易な香川県においては、各自治体の公立図書館における資料調査も含め、綿密な現地調査を実施することができた。具体的には、香川県隣保館連絡協議会が開催する研修会への参加、香川県下の隣保館が実施する100円モーニング―の参加、隣保館関係者への聞き取り等を行うことができた。本研究と関わって経年的に実施してきた地域社会で発生するヘイトスピーチ等事案に対する行政及び住民主体のアクションに関する研究については、北川真児・魁生由美子「ネットモニタリングの現状―ネット上の差別情報に対する行政機関の対応状況」金尚均・石塚武志・魁生由美子・濵口晶子・山本崇記編『インターネット時代のヘイトスピーチ問題の法的・社会学的捕捉』(日本評論社、2023年)にまとめて公表した。隣保館活動をつうじて促進される住民間の相互扶助は、万が一の防犯活動にも有効であることを確認できた。福祉コミュニティの防犯機能を確認できた点は、本研究にとって非常に重要である。
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今後の研究の推進方策 |
ひき続き香川県下の隣保館による「100円モーニング」等高齢者支援の活動について現地調査により資料収集を行うとともに、研修会への参加、関係者への聞き取りを続行する。香川県隣保館連絡協議会が県内の社会福祉協議会との協働で開催している「かけはしセミナー」も昨年度に引き続いて参加し、地域のさままざまな支援活動とその担い手のあり方について実態を把握したい。 2023年度は航空機利用による移動を含む現地調査を再開し、在日コリアン高齢者を対象とする地域福祉活動に実際に参加させていただくとともに、デイサービス等現場の状況と課題、行政の統計直近のデータ等を収集する予定である。 また、2023年度は、神奈川県川崎市、京都府京都市において経年的に取り組まれてきた在日コリアン高齢者福祉活動の交流事業も予定されているので、可能な限り参加する計画である。社会保障のすきまで公的支援がなかった時代から現在に至るまで継続している生活支援活動に学びたいと思う。
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