研究課題/領域番号 |
22K01911
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
|
研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
稲川 郁子 日本体育大学, 保健医療学部, 准教授 (10736250)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 柔道整復師 / 熟達柔道整復師 / ほねつぎ / 骨接ぎ / 修羅場の経験 |
研究開始時の研究の概要 |
柔道整復師は別名を「ほねつぎ」「接骨師」といい、国家資格である。現在、整形外科医の充足や熟達者の高齢化により、純然な「ほねつぎ」という意味においての柔道整復師は激減し、英知伝承も危機的状況にある。本研究は、かつて日本における重要な社会資源として存在した「ほねつぎ」としての柔道整復師の姿を記述し、質的に記録・保存することを目的とする。絶滅の危機に瀕する熟達した柔道整復師へのインタビュー調査および分析により、彼らが「ほねつぎ」として克服してきた「修羅場の経験」extreme experiences の記述により質的に記録し、暗黙知に立脚した言語化困難な技術のアーカイブ化を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究は、「ほねつぎ」としての柔道整復師の技術、およびその周囲の知識の総体を記述し、質的に記録・保存することを目的とする。具体的には、複数の「熟達の柔道整復師」の「修羅場の経験」についての語りを、個別性、一回起性を重視しながら、詳細に記述、保存することを目的とし進行中である。熟達者がその経験を、どのような言葉で語ったのか、記録そのものが主眼となる。2022年度は、感染症拡大の状況を見ながら、5件程度の取材(ヒアリング)ならびに逐語録の作成、学会発表、特筆すべきことがあれば短報として発表することを予定していた。2022年度の実績は以下のとおりである。 1)学会発表1件:日本柔道整復接骨医学会学術大会において「熟達柔道整復師による「修羅場の経験」の語りに関する予備的研究」と題し一般発表を行った。柔道整復師の中でもとりわけ「ほねつぎ」としての高度な専門性を持つ熟達柔道整復師 expert judo therapists の語りanecdotes に着目し、彼らの「修羅場の経験」の語りを記述することによる英知伝承の可能性について先行研究の整理を中心とした考察を行った。 2)取材3件:熟達柔道整復師3名に対する初回ヒアリングを行った。「修羅場の経験」に関する語りのほか、運動器のcommon injury である肩関節脱臼および橈骨遠位端骨折に関する語りの採録が中心となった。また、次回取材に関する許諾を得た。 3)研究協力依頼:2名の熟達柔道整復師に対し、2023年度中の取材許可を得た。 4)関連領域における論文発表1件:稲川郁子.柔道整復師国家試験と嘉納治五郎の思想:2022年版主題基準小項目「柔道の理念」より. 柔道整復接骨医学. 2023, 31(3), 128-136. 十分な経験を積むことなく開業する柔道整復師の問題について、国家試験出題基準から検討したものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度に取材協力を要請していた6名の柔道整復師のうち、3名が辞退の意向を示された。いずれも高齢であり、感染症への不安、また記憶が曖昧であったりきちんとした意思伝達に不安があったりすることから取材を受けられないとの理由であった。改めて「英知伝承の危機的状況」に直面することとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
複数の熟達柔道整復師の研究協力辞退を受け、インフォーマントの範囲拡大の必要が生じた。辞退はいずれも高齢の柔道整復師であったため、今後は、「門弟」へのヒアリングも視野に取材を推進する予定である。また、初回取材が終了した柔道整復師に対しても、語られる「修羅場の経験」が膨大で、また語りのうちに記憶が鮮明化することもあり、次回取材時により具体的事象に特化した語りの採録が期待できるものと思われた。
|