研究課題/領域番号 |
22K01918
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
前田 至剛 追手門学院大学, 社会学部, 准教授 (00454455)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | マイコン / 労働 / ゲーム文化 / メディア史 / メディア/コミュニケーション / 社会学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、マイコン雑誌の記事や関係者へのインタビューをもとに、マイコンの普及によって成立したメディア文化とその変容過程を明らかにする。マイコンは「一般家庭で」「学び・探求する」「雑誌でつながる」「グローバルに展開する最先端技術」の系譜にあると同時に、その最終局面にあたり、こんにちの多様なデバイスによるインターネット利用環境を生み出す素地を形成した重要な段階である。この時期に、いかなる知や理念が出現し、また適切な水路付けが得られずに活性を失っていったのかを考察することは、デジタルトランスフォーメーションが急務とされる現代社会における「人材育成」を考えるうえでも重要な示唆を得ることができる。
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研究実績の概要 |
本年度明らかとなったのは以下の点である。 1つ目は、マイコンユーザーの熱意が注がれる先としての労働が過酷であり、にもかかわらず労働組織がその苦境を充分に救い上げることができなかったということである。他方、日米貿易摩擦を背景として、労働や産業振興の観点からも、「世界」を意識した言説が語られるが、日米の雑誌記事に比較からは、マイコンと労働に関わる言説上の差異も明らかとなった。 2つ目は、昭和50年代以降のマイコン/パソコン文化を考える際にとりわけ重要な「ゲーム」という要素とのかかわりについてである。ゲーム市場の拡大は娯楽としてのマイコン/パソコン利用のみならず、ゲーム制作者というキャリア選択も強く意識される状況を生み出す。また、マイコンユーザーは誇大な夢をみる一方、過酷な労働など厳しい現実に直面したとき、それらが容易には解決しないという事実を反映するかたちで、様々な代償行為をおこなった。その一つがゲーム市場の拡大にともない、マイコン/パソコン・ゲーム雑誌上で作用しはじめる嗤いやおふざけといった「戯れ」である。ここでいう「戯れ」とは、単なる笑いを目的としたもののみならず、自らの苦悩を嗤い、茶化し、自虐的に楽しむ技法をさす。この「戯れ」は、その後のオタクやインターネット文化におけるそれときわめて似通ったものであった。 上記の内容について、日本メディア学会2023年度秋季大会にて「マイコンブーム――『雑誌でつながる』『家庭で触れる』『先端技術のメディア文化』の最終局面」と題するワークショップを企画し、問題提起者として発表をおこなった。また「マイコン文化は何を受け継ぎ、何を受け渡したのか?」(追手門学院大学社会学部紀要)として成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収集する雑誌資料の範囲を拡大し、日米マイコン雑誌の比較およびゲーム文化へと受け継がれるマイコン文化の諸要素について明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに収集する資料の範囲を拡大し、より技術職・専門職よりのマイコン言説と、他方でより大衆化、娯楽志向を強めるマイコン・パソコン言説との対応や断絶の状況について分析をおこなう。
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