研究課題/領域番号 |
22K01933
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
嶋根 克己 専修大学, 人間科学部, 教授 (20235633)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | COVID-19 / 脱共同体化 / 日本 / ベトナム / 葬儀 / 縮小 / 葬送儀礼 / フランス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、各国の葬送儀礼にたいしてCOVID-19がどのような変容を与えたのか、国際比較を通じた実証研究によって現状を把握することにある。研究方法としては、日本、ベトナム、フランスの3カ国を選び、インタビューによる質的調査と大都市圏におけるアンケート調査を組み合わせながら、葬儀の縮小、簡略化、参加範囲の変動、そして悲嘆の度合いの変化などを実証的に明らかにする。 今後伝統的な様式は復活するのか、復活するならば何が残っていくのかを観察しながら、現代社会にとっての葬送儀礼の社会学的意義を再考する。
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研究実績の概要 |
採択決定後、コロナ禍で影響を受けた葬儀の事例調査に取り掛かった。事例調査は、日本とベトナムの葬儀がCOVID-19パンデミックの影響でどのような影響を被ったのかを、質的なアプローチで迫るために半構造化インタビューを行った。質問項目として、1.死亡者の名前、生没年月日、年齢、家族構成など、2. 死亡者のライフヒストリー、3. 死亡の原因、治療・入退院の経緯、4. 葬儀や四十九日などの、日程と内容、参加者について、5. もしCOVID-19でなければどのような葬儀をしたかったのか、心残りなど、などについて尋ねた。 調査はベトナムで2回、日本で2回行われた。これらのデータは全文書き起こされ、英文対訳とともにデータ化されて、ベトナム側の共同研究者と共有されている。 日本の葬儀については、もともと家族・親族・地域社会関係が脆弱であるために、家族葬や直葬が広がっていた。そこにCOVID-19による行動制限が直撃したために、葬儀がますます縮小したことが判明した。これにたいしてベトナムでは著しい経済発展と分厚い若年人口によって、近年葬儀は肥大化してきている。パンデミックによる行動制限は、「本来あるべき姿」とは大きく異なっており、家族・親族に心理的な影響を残したことが判明した。行動制限の解除は、葬儀の肥大化傾向に戻ると考えられる。 日本の事例をもとに2022年9月に ベトナム社会科学アカデミー東北アジア研究所主催の「ウイズコロナ時代における日韓台越の経験」において「日本の葬儀にCOVID-19が与えた影響」と題した研究報告を行った。 これらのデータをもとにIntenational Sociological Association のWorld Congressへ 'Death under the Pandemic: From Simplified Ceremonies to Shrinking' を申請した。この申請は2023年6月にメルボルンで行われる大会において口頭報告として受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで日本2例、ベトナム2例の事例研究を行った。1ケースにつき2-3時間行い、録音記録は全文書き起こしたうえで、英文対訳をつけてデータ化してある。ベトナムの共同研究者と情報を共有するためである。さらにインフォーマントから提供された映像データがストックされている。葬儀について調査は家族関係などプライバシーにかかわる部分が大きいために多くの事例を調査することは困難である。スノーボールサンプリングでえられた事例を丹念に掘り下げてきた。 日本の葬儀経験者に対する大量観察調査はコロナ禍の推移が予測できなかったために、現在まで実施を見合わせている。 これまでベトナムで開催された国際学会で研究報告を行った。またメルボルンで今年開催予定のISA国際大会へエントリーし、口頭報告として受理されている。 今後、日越両国の質的データの収集ののち、量的調査の再設計しての実施か、質的調査の継続かを見極めていきたい。 研究データの蓄積、口頭報告は順調に進んでいるが、まだ論文や著作として発行されていないため、概ね順調に推移していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き事例の収集に努めていきたい。日本とベトナムにおけるCOVID-19が葬儀に与えた影響については先行研究がなく、独自性の高い資料となることが予測される。 日本国内では全国葬祭業連合組合や日本消費者協会などと連携しながら、周辺事情についての情報収集に努めながら、コロナ禍における葬儀の実態についての大量観察調査をするか否かの判断を行っていきたい。葬儀についての大量観察調査は、内容がプライバシーに関するものであるために先行研究が少ない。コロナ禍における葬儀の実態についてはほとんど知られていない。少ない予算の中で大量観察調査を行えば精度が低くなる恐れがあるため、アンケート設計を考え直す必要がある。 申請が採択されたISA Congress において今回の研究であられた事例データをもとに'Death under the Pandemic: From Simplified Ceremonies to Shrinking' を報告することが予定されている。
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