研究課題/領域番号 |
22K01935
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 日本女子体育大学 |
研究代表者 |
青木 純一 日本女子体育大学, 体育学部, 特任教授 (10389869)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 療養所 / 結核 / 生活 / 証言 / 療養方法 / 治療法 / 患者運動 / 結核療養所 / 元入所者 / 療養生活 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は結核療養所元入所者に対する聞き取り調査がその概要である。調査期間は4年を予定するが、毎年5人程度の元入所者から聞き取りを実施したいと考える。結核療養所は全国に存在したことから、対象者も全国各地にいると思われるが、予算の関係から関東近辺を中心に調査を進める予定である。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、かつて結核療養所や病院に入院経験のある患者や療養所で働く医師、看護師、職員等の証言を通して、当時の結核療養所や結核病院の実態を質的に明らかにし、結核史の中にアーカイブ化することである。 本年度は5人の関係者にインタビューを実施した。以下、今年度のインタビューから抜粋・要約する。たとえば、Aさんは長年、大規模な結核療養所のケースワーカーとして働いた経験から当時の患者や療養所の様子を証言した。家庭の働き手が入院すると、長期の療養生活は貧困化を招く。こうした患者の不安定な生活をどう支えるかが、結核療養所で働くケースワーカーの大切な仕事であった。患者がみな医師や看護師の指示に従って療養生活を送るわけではない。ときに療養中に飲酒し、あるいは脱柵(無断外出)を繰り返す患者もいた。こうした行動が目に余ると、強制退院に処される場合もあるが、それは患者の治療を放棄することでもある。治療の場を失う患者をつくらないために、様々な方法を模索するケースワーカーの実態を知ることができた。 Bさんは重症病棟で8年の療養生活を送った経験をもつ。厳重な隔離の下、食事、トイレなど生活のすべても病室の中で行う。この8年間は風呂に入ることさえ叶わず、部屋の中で頭を洗い、身体を拭く生活が続いた。ときどき家族が見舞いに来ると「帰りたい」と泣くことも多かったと証言した。 病室から見える庭にはその周囲を巨木が取り囲んでいた。いずれの木も手の届く範囲の下枝が切り落とされていた。患者の首つり自殺防止がそのためである。この証言ひとつをとっても、当日の患者や病院の様子をうかがい知ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で高齢者へのインタビューを中断する日々が続いたが、この1年はようやく順調に取組めるようになる。しかし、これまでのブランクを十分に埋めるまでにはいたらなかった。そのため研究の進捗状況は「やや遅れている」と判断した。 本調査研究は、インタビュー対象者が高齢であり、予定したインタビューを中止・延期することもあった。その場合は適当な時期にあらためて実施するが、協力者の体調やその他のスケジュールに配慮しながら進めるため、かなりの時間を要した。こうした点も遅れた理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の開始の頃とは異なり、コロナ禍にもようやく落ち着きがみられる。今後は結核予防会のネットワークや協力者の紹介などを頼りに、さらに対象者の掘り起こしに努めたいと考える。
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