研究課題/領域番号 |
22K01948
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
飯田 法子 大分大学, 福祉健康科学部, 准教授 (10612145)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 保育士 / 保育コーディネーター / 気になる子ども / 児童虐待 / 発達障害 / 保護者支援 / 専門機関連携 / 保育ソーシャルワーク / 気になる子 / ソーシャルサポート / 大分県保育コーディネーター / 制度検証 / 虐待 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、児童虐待や発達障害などの児童家庭福祉上の課題に積極的に取り組む自治体のモデルシステムを検証するものである。現在、自治体が行う保育園・保育士へのソーシャルサポートに関する研究報告は乏しい。このような中、大分県は全国に先駆けて平成26年から「保育コ―ディネーター」制度を導入している。保育コーディネーター(以下保C)は園内の児童家庭福祉に係る問題に関与し、他機関と保育園をつなぐ保育ソーシャルワークを行う役割をもつ専門的保育士であり(大分県HP)、大分県独自の制度で他に類をみない。そこで、本研究では「大分県保育コーディネータ―制度」の導入効果を保育関係者への質問紙調査によって検証する。
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研究実績の概要 |
近年、虐待や発達障害への支援など児童家庭福祉上の問題が山積しており、ひっ迫する保育現場をサポートするためのシステムを地方自治体が構築することは、子どもの福祉や社会にとって喫緊の課題である。その中で大分県では全国に先駆けて、2014年より保育コ―ディネーターを養成する制度を導入し県内で約700名の保育コーディネーターが活動している。この認定者は所属する保育園において子どもや保護者への支援、専門機関との連携、園内の情報共有や役割分担、などの保育ソーシャルワークを行うことが期待されている。しかし、これまで、その活動についての調査研究は行われていない。 そこで研究者は、これまで、調査Ⅰとして、大分県内の保育園の施設管理者(園長・所長)に、保育コーディネーターの活動の様子や配置に関する考えなどを尋ね、効果を検証するための調査を行っている。この調査において配置園と非配置園の評価を比較した結果からは、保育コーディネーターはそれ以外の保育士に比べると「気になる子どもや家庭」への支援を精力的に行っており、管理者も有益であると評価していることがわかった。しかし、具体的にどの点が有益であるか、という点においては漠然としこの調査Ⅰは管理者のみの評価であり、管理者が臨床チームのリーダーでない可能性もあるため、評価に妥当性があるかという点については議論の余地があった。 そのため、本研究である調査Ⅱでは、保育コーディネーターと一般保育士を比較検討する調査を行うこととした。2023年に調査Ⅱである大分県内全域の保育園・認定こども園の全保育士を対象としたアンケートを実施し、回収やデータ入力も終えている。 現在はデータの詳細な分析と論文化に取り組んでいる段階にある。分析においては、保育コーディネーター配置園と非配置園の保育士(コーディネーター以外)の比較や配置園内のコーディネーターと保育士と比較している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年に大分県全域の保育園や認定こども園に対して保育士を対象としたアンケート調査を実施した。送付人数については、各園に余剰分を含めた6,927部を全園に郵送した。施設管理者から配付された依頼文等を読んだ保育士が、質問紙を投函することをもって、協力に同意する意思の表示とみなした。 その結果、1,913の回答が得られた(回収率=27,6%)。そのうち、保育コーディネーターの非配置園保育士有効回答数は399、配置園保育士(保育コーディネーター以外)の有効回答数は1,156、保育コーディネーターの有効回答数は371であった。有効回答の総数は、1,589であり,有効回答率は、22.9%であった。現在はこのデータについて詳細な分析を進めている途中である。 質問紙の項目は次のように作成した。1.施設概要(形態・園児数・職員数職員等)と保育コーディネーター配置の有無、2.「気になる子ども(家庭)」への園全体の支援状況※、3.保育士自身の支援状況※、4.職場環境(職業性ストレス簡易調査票のうち「コントロール度・対人関係」の計6項目と「サポート」の3項目、高橋らの研究による「保育実践」の1項目)。5.園全体でのCCC配置の有益感、6.配置保育士による保育コーディネーターの評価※、7.保育コーディネーター自身の配置有益感、8.研修内容。 ただし(※)では保育コーディネーターの3つの役割とされる(大分県HP)「相談技術向上による家庭支援」「園内のコーディネート」「専門機関との連携・協働」に基き、OECD国際幼児教育・保育従事者調査(2018)、木曽(2014,2016)、本郷ら(2005)の研究を参考に、「気になる子ども(家庭)」に関する、アセスメント、発達支援技術、相談支援技術、積極的支援、園内連携、及び園外連携、に関する質問8項目を独自に作成した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究である調査Ⅱにおいて得られたデータ(有効回答:1,913)は、現在分析の途中である。これまでの量的な分析においては、非配置園の保育士と配置園の保育コーディネータ以外の保育士と保育コーディネーターの3群で、それぞれの自身の支援状況(8項目:気になる子どもの把握、気になる保護者の把握、気になる子どもへの適切な支援、保護者への相談、家庭への積極支援、園内情報共有、園内役割分担、専門機関連携)に差があるかどうかをみたところ(ノンパラメトリック検定:Kruskal Wallis 検定)すべてにおいて有意差があることがわかっている。 今後はさらに、保育士個人の活動実態や、保育コーディネーターに対するする他の保育士の評価を明らかにするため、以下の目的にそってさらに分析を進める(SPSS、Ver.28)。 1)「気になる子ども(家庭)」に関して、保育コーディネーター配置園では保育コーディネーターが一般保育士に比べ配置の目的にかなった支援を行っているかどうか検討すること。2)配置園と非配置園の一般保育士を比較し保育コーディネータの配置が同僚(一般保育士)の働きに影響を及ぼしているかどうかを検討すること。3)配置園では非配置園に比べ園全体としてよい活動を実施できているかどうかを保育士の評価から検討すること。 さらに回答者が保育コーディネーターである場合には養成研修やフォローアップの経験についても自由記述を求めていることから、その結果を考察へいかす。 これらすべての分析を年度内に終えて、論文化を目指す予定である。また、調査Ⅰと調査Ⅱをまとめた論文については、本研究を終えた以降できるだけ早い時期に作成する予定である。
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