研究課題/領域番号 |
22K01968
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
小野 達也 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (30320419)
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研究分担者 |
朝倉 美江 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (00310269)
柴田 学 関西学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (20580666)
石川 久仁子 大阪人間科学大学, 人間科学部, 准教授 (40411730)
岡野 聡子 奈良学園大学, 人間教育学部, 准教授 (50623964)
渡辺 晴子 広島国際大学, 健康科学部, 准教授 (90326091)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 地域福祉 / 幸福 / 増進型 / 実践研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、増進型地域福祉の方法について探究し、実践モデルを構築することを目的にする。増進型地域福祉とは一人ひとりの幸せと地域の幸せをともに生み出すことを目指す福祉である。本研究では特に、地域の福祉活動や福祉組織を対象に増進型地域福祉の理論研究、実践研究、モデル構築を行う。実践研究では、先進的な実践事例を取り上げるとともに、いくつかの地域で試行実践にも取り組む。進め方の特徴としては、研究者と専門的実践者、住民が参加型評価の手法を活用して、モデルをともに構築していくことにある。
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研究実績の概要 |
本研究は、増進型地域福祉の方法を探究し実践モデルを構築することを目指している。増進型地域福祉は、幸福=well-beingを生み出すことを志向する地域福祉である。地域共生社会に示される地域福祉の政策化が進行しているにもかかわらず、福祉は生存への脅威と幸福への関心に二極化しているとされている。本研究はこの状況を超えて、一人ひとりの幸福と地域の持続可能性を実現する実践的な方法をつくり出そうとするものである。 研究の2年目となる2023年度は昨年度の理論的研究を基盤として、2つの柱で実践に関する研究を進めた。①試行実践を研究代表者がかかわる地域で進めた。②研究分担者のテーマに関する実践研究を進めた。このように2年目は地域福祉実践とのかかわりが重要な要素を占める。 2023年度の実績として①に関しては、主要なフィールドである富田林市で増進型地域福祉の住民の実践が進められ、その成果の報告会(「富田林市全体校区交流会議」2024年2月)が行われた。大阪市住吉区では小学校区での増進型ワークショップを開催、和泉市ではコミュニティソーシャルワーカーの増進型の事例検討会を年間を通して実施、大阪狭山市では行政と社協職員を対象とする連続的な研修を行った。 ②に関しては、多文化共生、居住支援、地域活動拠点、地域包括ケア、経済活動としての地域福祉等のテーマで、実践研究に取り組んだ。調査(海外調査含む)や実践からの学びをもとに学会発表や成果物の作成、発行が行われている。 これらの①、②を進める基盤となる研究者の増進型地域福祉研究会を年間6回開催した。さらに、実践者と研究者による増進型地域福祉交流研究会も開催し(2024年3月)、知見を深めることができた。また、2024年3月に開催された関西社会福祉学会では、シンポジウムのテーマとして増進型地域福祉を掲げ、研究と実践の成果を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年5月のコロナ感染症の5類移行を受け、地域での様々な実践が再始動しつつある。地域での実践に関わる本増進型地域福祉の研究では、具体的に実践から学んだり、また直接的に実践に関わりを持ったりする機会を増やすことができた 研究者による増進型地域福祉研究杯は隔月で合計6回開催し、研究成果を共有した。そのうち2回は増進型地域福祉の実践者(富田林行政担当者、元福祉施設運営者)からの報告を受けた。また、2024年3月に実施した増進型地域福祉交流研究会では、20人ほどの参加を得て研究者、実践者それぞれの成果を発表し、意見交換をする場を持った。さらに、2024年3月に開催された関西社会福祉学会では増進型地域福祉がテーマに取り上げられ、学会関係医者に周知を広めることができた。 研究代表者は、富田林市、堺市、大阪狭山市、大阪市住吉区、和泉市等の実践者や実践現場へのかかわりを継続し、研修会、ワークショップ、報告会、スーパーバイザー等の形式で増進型地域福祉の創出に努めた。各研究分担者は研究テーマに応じて、多文化共生に関する調査、居住支援に関する調査、協同組合に関する調査、地域での医療福祉の連携に関する調査、海外(カナダ)の地域拠点調査等に取り組んだ。そうした年間の研究活動の内容は報告書(『幸福を志向する増進型地域福祉の実践方法開発に関する研究 2023年度報告書』)にまとめた。 このように、研究2年目である2023年度は、実践から学ぶ機会や実践に関わる機会を意識的に設けることができ、増進型地域福祉の実践の具体的内容を蓄積することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本科研の最終となる2024年度は、これまでに蓄積をもとに研究を仕上げてその成果をまとめる。最終的な目標は、増進型地域福祉の実践方法に関するモデルの構築である。ベースとなる基本モデルと各研究テーマに関する実践方法のモデルを作っていく。そのために、初年度の理論的整理と2年目の実践からの学びを継承しつつ、それらを統合的に検討する。 実際の取り組みとして、①既存のソーシャルワークの展開のモデルを整理する。地域福祉に関わる援助技術として、コミュニティソーシャルワーク、地域を基盤としたソーシャルワーク、ジェネラリストソーシャルワーク、コミュニティワーク等のモデルを検討する。②増進型地域福祉の方法論の参考になる地域福祉実践を整理する。地域づくり型保健活動、オープンダイアローグの未来語り、ソリューション・フォーカストアプローチ(SFA)、ストレングスモデル等を方法という点から再検討する。③これまでの増進型地域福祉の研究の知見を整理する。特に2022年度に出版した『増進型地域福祉への展開』の実践編に示されている事例を検討し、増進型を進める要素を抽出する。④増進型地域福祉に親和性のある実践事例を収集して分析する。特に近年取り組まれている地域での諸実践に注目する。 これらを総合して⑤増進型地域福祉の実践方法に関するモデルの基本型を構築する。これは、様々な実践の基礎になる性格を持つ。この基本型の展開として、⑥テーマ別の増進型地域福祉の実践方法に関するモデルの構築を目指す。「テーマごとの増進型地域福祉実践モデル」である。テーマは、多文化共生、地域包括ケア、居住支援、地域福祉拠点、社会経済型地域福祉等である。 進め方としては研究者による定例的な研究会を基盤として、さらに実践者と研究者が合同で検討する場も設けていく。これによって、増進型地域福祉の具体性のある実践モデルを構築する。
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