研究課題/領域番号 |
22K02015
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
本多 勇 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (80296201)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 援助観の変化 / 身体拘束廃止 / 施設虐待防止 / 運営管理 / チームアプローチ / 施設運営 / 認知症高齢者 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、要介護高齢者の施設(病院含む)ケアにおいて、その施設経営者と、そこで直接援助従事スタッフの「援助観の変化」に着目する。本研究で明らかにしたいことは、次の通りである。 第一に、施設経営者および直接援助従事者の要介護高齢者に対する「援助観の変化や転換のきっかけ」がどのようなものであったか、ということである。とりわけ介護保険法制定前に身体拘束廃止運動をすすめ、認知症高齢者に対する質の高いケアをリードしたキーパーソンへのヒアリング調査を含める。第二に、「援助観の変化や転換」を契機に、施設全体がより質の高い高齢者ケアにどう転換し、それをどのような方法で実践・維持しているか、ということである。
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研究実績の概要 |
厚生労働省は、「高齢者虐待防止法」に基づく全国での調査の結果(前年度の件数累計)について例年発表している。2023年度に発表された、2022年度の養介護施設従事者による高齢者虐待の認定件数は全国で856件、相談・通報件数は全国で2,795件と、集計を始めた平成18(2006)年から最高値となった。また、2023年度の後半には、北海道内での劣悪な介護と身体拘束の状況、雇用と解雇の問題が報道で明らかになった。引き続き、高齢者施設において身体拘束および職員による虐待が存在しており、これらへの対応が急がれる状況が続いている。 採択初年度の2022年度は、ヒアリング調査に向けた準備を行うことが中心となった。調査を本格的に開始する前に、質問事項やインタビュー内容の組み立てを確認することを念頭に置き、プレ調査として、1989(平成元)年開設の神奈川県内の社会福祉法人(特別養護老人ホーム)の施設長(元生活相談員)に、介護保険開始前の措置時代の特養の利用者や職員の状況・環境について聴くことができた。 調査(1件目)は、東京・多摩地区にて老人病院での看護師長歴も長い現特別養護老人ホームの看護師長にヒアリングを行った。そこでは、1980年代半ばの看護教育においてはケアやインフォームド・コンセントの考え方はなかったこと、当時の精神科病院においては「身体拘束が当たり前」という状況であったこと、等が語られた。また、その後病院で身体拘束を廃止する際に、職種を超えて議論(チームアプローチ、チームカンファレンス)したこと、スタッフ教育とその体制が重要であることなどが語られ示唆を得ることができた。 2023年度(採択2年目)は、群馬県内の介護老人保健施設で「身体拘束廃止」の道筋について幹部職員の方々へのグループインタビューを行った。また、ナラティブデータを分析するための文字情報への変換の作業も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年度(採択2年目)は、計画に比して進捗は「遅れている」状況である。計画していた訪問調査の回数をこなすことができなかった。 採択初年度(2022年度)は、研究費採択を受け、機材を整えた。また、学内の研究倫理委員会においてインタビュー調査を中心とした本研究に関する研究倫理審査を受けた。指摘事項を受けて、調査に関する依頼文書および同意書等の様式および内容を整えた。またプレ調査1件を行い、1件目のインタビュー調整の段階で年度末を迎えることとなった。 2023年度(採択2年目)は、群馬県内の介護老人保健施設において施設幹部職員の方々にグループインタビューを実施することができた。身体拘束廃止の廃止を主導した施設長(医師)、当時の看護師長(現在は関連施設の施設長)、現在の看護師長、介護士長、事務局長(前支援相談員)より、それぞれの立場および視点から、施設における「身体拘束廃止」に向かう道筋と施設内チームの力動、職種および施設内役割(役職)での方針決定や責任等について、語っていただいた。病院(医療機関)を母体として当施設が開設された1996年時点では「身体拘束」は存在しており、看護の世界においては「抑制が当たり前」の状況があった。2000(H12)年4月に介護保険法での運営が始まり「(身体拘束は)やはりいけないのだ」ということが法的に共有されたものの、身体拘束をやめた日に利用者の転倒事故が起き、安全確保と責任を問われる事態が生じた。施設職員全体が施設のケアを共有しチームケアを行う「(本質的な)土壌」があり、身体拘束をしないことを「当たり前」と思う環境を作りあげることができたという。リスクマネジメントや家族・利用者本人との信頼関係の構築、高齢者(利用者)に対する姿勢、施設ケアの信念等を明確にしておくこと、そして今後の経営的課題等についても語られ、大きな示唆を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までに、プレ調査(施設長)と1件目のインタビュー調査(看護師長)、2件目の施設幹部スタッフへのグループインタビュー調査(介護老人保健施設)から多くの示唆を得ることができている。 2024年度は、調査の音声データのその分析を進めていく。あわせて、当初計画では本年度は8件の訪問調査を行う予定としているが、計画の修正・変更およびエフォートの見直しを行い、年度中の着実な訪問調査を行う。 あわせて、東京多摩地区の看護師長にヒアリングを行った特養において、介護士長(主 任)から別の立場からの意見をいただくためのヒアリング調査を検討している。その他、複数の病院および施設の管理職にヒアリング調査を行う調整を進めていく予定である。
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