研究課題/領域番号 |
22K02033
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
神村 初美 東京都立大学, 人文科学研究科, 客員研究員 (80764654)
|
研究分担者 |
小平 めぐみ 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 准教授 (00611691)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 外国人介護人材 / 自立支援介護 / コミュニケーション / 汎用的参照枠 / 持続可能な外国人材の育成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、自立を促す介護コミュニケーションの特徴を暗黙知ではなく形式知として明らかにすることを目的とする。外国人材の国内外での育成及び支援に資する「外国人材のための自立を促す介護コミュニケーションの汎用的参照枠」を構築することで、持続可能な外国人材の育成を後押しし、高齢者の自立性に基づいた健康寿命の伸長に寄与するという創造的価値の創出につなげる。
|
研究実績の概要 |
コロナ禍により、当初計画していた、3施設、利用者 各5名(小計15名)、介護職 各5名(小計15名)、合計30名に対し調査を行うことはかなわず、2施設、利用者各1名、介護職各2名、合計4名への調査となった。調査開始は計画通り7月となった。なお、本調査ではベテラン介護士から介護を受けた被介護者にみられる言葉の変化を追った。詳細は以下である。 【方法】調査対象:自立支援介護を実践する介護施設に新規入居の利用者2名(認知症状あり)、調査方法:会話調査(入所時・1か月後・3か月後の会話をタブレットに録画)、ケア内容調査:会話調査時におけるケア内容を記録から抜粋。会話調査:挨拶・体調の聞き取り各3項目(他状況によって会話の追加)。介護士へのヒアリンク調査。調査期間:2022年7月~2022年11月。分析方法:帰納的分析手法。 【考察】①認知力の回復:2事例ともに認知力が向上し「人」の「ことば」を認識できるようになった。事例1は、長時間、話者に意識を向けられるようになった。事例2は、自己の発話に対する葛藤がみられるようになった。②動作能力:どちらの事例においてもボディランゲージがみられるようになった。③コミュニケーション力:事例1は、意味不明な発話「おっかないな」「黙って」は保持されたが、その発話時に、不安や愉快といった心象を示す表情が体現されるようになった。事例2は、入所時、文章としては辻褄が合っていたが、会話としては支離滅裂な状態であった。しかし1か月後、馴染みの介護士との会話が弾む。一方で、自分の言いたいことが「ことば」にならないという「葛藤」がみられた。これはコミュニケーション力向上過程でのメタ認知力回復の働きによって起こった自己葛藤であると考えられた。上述①②③における変化は、自立支援介護の実践により得られたものと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、被験者数が予定よりも少なくなってしまった点があげられる。これは、本調査では新規入所時からその変化を追うとしているが、そもそも自立支援介護施設においては、この新規入所者自体が少ないという現状によるものである。自立支援介護施設の場合、自立支援介護を十全と実施しているからこそ、利用者の健康状態が回復し利用者の入所期間は長くなる。ここから、新規入所者も限られてしまうという状態であった。この事象は調査開始後に判明したものである。 次に、コロナ禍により、調査協力施設でクラスターが発生した際などは、被介護者の「ことば」や「コミュニケーション力」そのものが戻ってしまい、ベテラン介護士が、どのような「ことばづかい」「やり取り」をもって促しているのかについての因果関係を探れなくなってしまった点があげられる。介護施設でクラスターが発生した場合、クラスター発生個所は隔離され、人との接触は避けられる。そのため、おのずと被介護者(被験者)に対する介護士の接触や声掛けも減る。ここから、被験者にみられていた言葉やコミュニケーションの変化の状態が元に戻ってしまい、効果が減退する又は見えにくくなる状態となってしまったことによる。 そして、やはりコロナ禍により直接、調査対象施設に赴くことが難しくなったため、調査の実施に際し、協力施設側にゆだねざるを得ない状態となり、データの質に影響が出ている点があげられる。録画された映像の拡張子が再生できない拡張子であったり、きわめて聞きづらい音声の状態で録音がなされていたりしたため、検証対象となるデータが限られてしまう結果となった。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、自立支援介護支援施設にみられる事情から被験者数が予定よりも少なくなってしまった点については、調査協力施設を増やし、対応を図っていきたい。次に、コロナ禍により、調査協力施設でクラスターが発生した際などは、被介護者の「ことば」や「コミュニケーション力」そのものが戻ってしまい、ベテラン介護士が、どのような「ことばづかい」「やり取り」をもって促しているのかについての因果関係を探れなくなってしまった点については、コロナ禍の終息を待って、検討していきたい。そして、やはりコロナ禍により直接、調査対象施設に赴くことが難しくなったため、調査の実施に際し、協力施設側にゆだねざるを得ない状態となり、データの質に影響が出ている点については、コロナ禍でありながらも本研究にご協力いただいているところからも、今後もオンライン会議などを利用し、コミュニケーションを工夫し、対応を図っていきたい。 2022年度は得られたデータから、自立支援介護実践施設における認知症の新規入居者の発話の変化(動作能力・認知力の回復・コミュニケーション力)を明らかにした。しかし、介護職員が自立支援介護の知識に基づきながら利用者の状態を捉え、ここからどのように声掛けをおこなったのかという視点での分析はまだ行っていない。そのため、今後の課題としたい。
|