研究課題/領域番号 |
22K02041
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
山田 千香子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (30311252)
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研究分担者 |
川口 一美 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (00352675)
小櫃 芳江 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (20233611)
池田 静香 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (70341857)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 顔の見える関係 / 高齢者の尊厳ある生活 / 離島地域 / つながり / 関係性 / 助け合いの生活文化 / おせっかい / ほおっておかない / 離島コミュニティ / 都市型集合団地の高齢化 / 地域包括ケア / 課題解決プログラム / 在宅ケアと在宅看取り / 初期介護支援 |
研究開始時の研究の概要 |
住み慣れた地域に最期まで住みつづけたい、これはたとえ僻地といわれる離島地域に住んでいても住民が抱く自然な想いである。しかし離島地域の現状はますます厳しさを増し人口減少・高齢化の進展、限界集落の拡大によって島の存続が懸念されている。本研究では医療・福祉資源の乏しい離島・僻地だからこそ求められる地域住民や地域を支える支援機能を解明し、地域集落を単位とした課題解決モデルを検討していく。比較対象として都市部における集合住宅団地での調査を実施する。介護の立場から在宅看取りを可能にするため、在宅ケアにおいて直面する介護の限界性を直視し、在宅看取り実現に必要な多職種間連携ネットワーク構築のモデルを検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、高齢者がさまざまな地域で充足して住み続けられる不可欠の要素を抽出することを目的とし、その対象地域として2か所を設定している。高齢化が著しく進行する長崎県小値賀町(離島であり過疎地)と、松戸市常盤平団地である。日本の対照的な二つのローカルな視点に基づき、全ての人を排除せず包摂するコミュニティ構築に 向けた実践について、必要な要素を学際的共同研究によって抽出することを目的としている。 二年目を迎えた2023年度は、コロナ禍の影響が一段落し、全体的にほぼ研究計画通りに研究調査が進んだ。2023年度研究実施内容:(1)小値賀町調査の実施:研究担当者4名参加。期日:2024年8月21日~24日。各行政担当者および地域住民に対するインタビュー(19名)の実施。※特に在宅看取り経験者2名、在宅介護中の方3名、施設長2名、診療所所長1名等、施設関係者や医療関係者の方々からヒアリングが出来た事は成果とつながった。(2)長崎県北松浦郡佐々町訪問(介護に関する先進的な取り組みで国からの表彰受賞自治体)担当者3名へのヒアリングの実施。期日:2024年8月24日。佐々町事業理事、佐々町多世代包括支援センター参事、センター長の3名。(3)大学祭で研究講演会を開催「小さな島の世界一」。期日:2024年11月18日。小値賀町学芸員1名、小値賀町元保健師1名を招聘して、島の現状や取り組み、島の課題について講演会を実施した。(4)医療財団法人アカシア会施設見学およびヒアリングの実施。アカシア会は内科のクリニックを中心に、認知症の医療とケア、家族・地域のトライアングル支援の協力体制を構築し、認知症の在宅生活を支援している。クリニックでは「もの忘れ外来」も実施し、在宅医療、在宅介護の限界点を高めることに挑戦している。現場を訪問させて頂き現場担当者3名の方々と大場敏明理事長先生にお話を伺った。(1名)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記区分(2)の理由として、下記にその根拠を示す。成果を『聖徳大学生涯研究所紀要第22号』(2024年3月発行)に発表した事。①「軽度認知症高齢者と地域共生に関する一考察―長崎県小値賀町のインタビューを参考に」(池田静香)、②「コミュニティを基盤とした介護支援(看取り)と地域包括ケア課題への考察-長崎県五島列島のひとつの島を事として」(山田千香子・小櫃芳江・川口一美・池田静香) 成果の詳細内容について一部を紹介する。参与観察やインタビュー調査により、各地域での高齢者をはじめとする地域住民のリアルな実態が見えてきた。 【離島コミュニティにおける相互信頼と深い人間関係が生まれる構造について】 顔の見える関係の最小単位は家族の次に「ご近所」であるが、そのご近所を構成する基本単位が機能していることが分かった。家族ネットワークの次に大事にしている関係性である。小値賀町の「ご近所」構成基本単位には、隣保班と十戸内がある。各町の世帯数に応じて「十戸内外」を1単位として隣保班が設けられ、班長を置く。笛吹地区では15町に区分され、各町には町の世話をする「総代」を置いている。この十戸内の役割を述べると、葬儀の際には親戚や十戸内の人が葬儀の準備を行うことが義務とされており、土葬をしていた頃は墓堀りの作業などを行ってきた。葬儀以外では、結婚式の参加、国民年金やゴミ収集料金の回収などが十戸内を中心に行われる。この葬儀に参加する、手伝いを行う義務があるという関係性が結果として地域社会の連帯感や相互扶助の意識を維持する事につながっている。しかしながら、介護保険制度の導入及びコロナ禍以降、その関係性に大きな変化が顕れている。介護保険法が制度として整備され浸透していくとヘルパーをはじめとした介護職、専門職へのケアニーズが高まり、サービス開始による利用高齢者の家族や地域との関係性の希薄化がみられることである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度の推進方策は、昨年の内容を踏襲した上で各地域の調査を継続し深めてゆくこと、最終年度のまとめと成果報告準備に入ることである。 (調査A)離島コミュニティ研究においては、具体的な個別事例を把握し、高齢者の視点から、①高齢者の医療と健康支援についてのネットワーク、②介護施設ネットワーク、③日常の生活支援に関するネットワークがどのように機能しているのか、その仕組みについての個別的事例研究をまとめる。また、地元において、島民に向けた調査成果報告会を開催する予定である。 それと同時に、(調査B)都市の高齢者について松戸市常盤平団地の調査を進める。①高齢者とその家族、②松戸市常盤平団地地区社会福祉協議会会長、③孤独死予防センター職員、④自治会役員等、⑤地域包括支援センター職員等へのヒアリングを継続する。 以上、日本の対照的な二つのローカルな視点に基づき、全ての人を排除せず包摂するコミュニティ構築に向け、新たな視座(多職種間連携の取り組み)の提供と具体的実践に貢献するプログラムを総括する。
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