研究課題/領域番号 |
22K02051
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
山本 耕平 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (40368171)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ひきこもり / ライフストーリー / 長期化 / オルタナティブ自立 / 支援ー被支援の克服 |
研究開始時の研究の概要 |
長期のひきこもりの後にオルタナティブな自立を可能にした当事者とその家族のライフストーリーを聞き取り,ライフストーリーから自立を可能にした諸要因を複線経路・等至性モデル(TEM法)を用い分析し、包括的支援を提起する。 本研究では,オルタナティブな自立を社会的自立と捉える。その自立を可能にした社会的助力や社会的方向づけに焦点をあて,ピアスタッフとなった過程を分析する。そのなかで,長期にひきこもる当事者のオルタナティブな自立を可能にする支援を展開する上で必要となるアセスメント・介入・実践評価を明確にする。とともに,それを可能とする制度や法の課題を提起する。
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研究実績の概要 |
本年度は、ひきこもり当事者のライフストーリーを分析する為に必要となるインタビュイーの選定とインタビューの実施を行なってきた。インタビューの選定において困難をきたしたことに、支援団体に紹介あるいは推薦を願った時に生じる支援者バイアスがある。本研究の最終目的は、当事者の語りから、当事者支援のアセスメント項目を設定することにあるが、「こうひきこもりと向き合って欲しいと思うが、その通りに進んできた」との支援者の認知バイアスを通しての当事者推薦や紹介になれば、アセスメント項目設定の困難が生じる。ただし、その支援者認知バイアスが当事者選択に働いているか否かはインタビューが終わるまで分からない。次に、インタビュー実施時の困難が、今回は、Zoomインタビューとして調査を行なった為、インタビューに求められる「間」や「沈黙」の活用が、従来の対面のインタビューより困難が生じた。分析において、その「間」や「沈黙」の分析をZoom録画をくり返し見返し、トランスクリプトに書き込む作業に時間を要している。 今後の分析を、20代・30代と40代・50代の二つのグループに分け行なうことにした。ライフストーリーを通して、両年齢層に共通してみられるコミュニケーションの困難さ等の生理的要因は、アセスメント項目の基礎的な共有要素として設定することが必要である。ただ、双方の年齢層に固有なアセスメント項目が存在すると考える。今年度は、その固有なアセスメント項目を分析する為に、トランスクリプトをできるだけ細分化せずに、当事者がその人生をより豊かにする為に必要としていることを求める作業を行なっている。それは、m-gtaの概念を活用し、カテゴリーを抽出する作業である。そのカテゴリーに注目しつつ、各自のライフストーリーをtem図で表し、sd(社会的障壁)sg(社会的支援)をアセスメント項目として求める作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの分析で、15人のライフストーリーを、「人・場・集団との関わりの困難さ」「コミュニケーション課題への気づき」「ピアのなかでの育ち」「任せておいた人生」「人生への焦り・不安」「支援・支援者との関わりの課題」「親との関わり」「学校・会社との関わり」のカテゴリーにわけ分析を進めている。これは、まだ理論的飽和にいたっているものではなく、そのカテゴリーさらには、それに含まれる概念もさらに分析を加える必要がある。 この分析を行なうなかで、予期しなかったこととして、断続的ひきこもり事例の存在がある。全体的なひきこもり期間としては、10年を経過しているが、そのひきこもりが断続的であり、時折、アルバイトに出たりセルフヘルプグループに参加する者が数名いた。本研究の目的が、オルタナティブな自立を支援する為に必要なアセスメント項目を求めるものであるが、その断続的ひきこもりを、オルタナティブな自立の一形態として入れ分析を進める必要があると考えた。そこから、オルタナティブな自立を「オルタナティブ就労を行なっている者、ピア集団やセルフヘルプグループでピア実践者を行なっている者、断続的就労とひきこもりを繰り返している者」として考える必要があると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方策としては、第一に、女性のインタビュイーが2名である為、女性のひきこもり経験者とを対象としたインタビューを増やす必要がある。2023年度には、一般社団法人ux会議とKHJの事務局にインタビュイーの推薦を依頼し、女性のひきこもり経験者のインタビュイーを探す。第二に、ひきこもり当事者が自身の体験を語り、教員・社会福祉支援者・社会福祉を学ぶ学生がもつひきこもりへの疑問を聞き取るなかで、当事者のオルタナティブな自立を困難にしている「常識」に問いかけ、オルタナティブ自立を可能にする為になにが必要かを社会と共に考える機会を設ける。この社会と共に考える機会の一つとして、2023年7月9日に、科研企画として公開シンポジウムを開催する。この公開シンポジウムは、“ひきこもり”という行為を、ひきこもり当事者の人生から学び、教育・福祉実践者がひきこもり当事者と向き合う際の焦り・葛藤を、双方の語りから明らかにすることを目的とする。その為には、参加者(とりわけ一般市民)がひきこもり当事者に対してもつ疑問について語り合うことが必要である。第三に、2022年度では、比較的少なかった不登校がながびきひきこもりとなっている事例や、不登校経験が社会との関係を困難にしてきた事例に対するインタビューを実施する。このインタビューを通して、教育実践や教育福祉実践が、ひきこもりと早期にかかわる為に必要となるアセスメント項目の検討を進める。第四に、今までに3回のインタビューを終えた事例をtem図で図示する。この図示は、アセスメント項目を求めることを目的したものである。現在、ひきこもり当事者がピアスタッフとなっていく過程において、その過程を促す要因と阻害する要因を仮定できているが、この仮定が妥当なものであるか否かを検討する取り組みが最終年度の課題となる。
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