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いのちの電話のボランティア活動に対するスーパービジョンについての研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K02054
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分08020:社会福祉学関連
研究機関吉備国際大学

研究代表者

石田 敦  吉備国際大学, 保健福祉研究所, 準研究員 (10202996)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
キーワードいのちの電話 / ボランティア相談員 / スーパービジョン / 逆転移 / ピアサポート / 個人的成長 / ボランティア / 非専門職
研究開始時の研究の概要

本研究は、いのちの電話の相談活動で、ボランティア相談員が体験する逆転移に効果的に対応できるスーパービジョンの方法を明らかにする。相談員は、活動の中で外傷体験となる出来事に出会い、容易に傷つき、活動を中断したり、辞めたりすることがある。また混乱し、動揺した相談員の言動は、相談するクライエントに対しても有害な影響を及ぼしかねない。この点で相談員に役立つスーパービジョンが必要となる。本研究では、相談員及びその指導に当たるスーパーバイザーに対する面接からのデータと、相談員の逆転移の事例及び実施されているスーパービジョンの事例からのデータに基づき、求められるスーパービジョンについて分析・考察を行う。

研究実績の概要

令和5年度は、令和4年度に明らかとなったことをさらに追究した。つまり、逆転移を体験する相談員に有効であるスーパービジョンの要件を明確化しようとしてきた。その結果、その要件とは、主に次のものであることが明らかとなった。なおこれらの要件は、有効なスーパービジョンについての前もって立てていた仮説とほぼ一致するものであった。
・相談員がスーパービジョンを、相談活動に従事する相談員を援助するものであって、相談員を監視するものではないことを十分に理解していること。
・スーパービジョンのサポート機能は、相談員がスーパービジョンを有効に活用するために、常にスーパービジョンの一要素として提供される必要があること。
・相談員同士のピアサポートが、スーパーバイザーによる相談員への直接的なサポートと同等に有効な機能を発揮すること。
ただし以上を明らかにしていく過程で、さらに1点、興味深い事実に気づいた。それは、逆転移を体験した際に、スーパービジョンを有効に活用して士気を回復し、エネルギッシュに相談活動に復帰する者とそのようにはならない者とが存在しているという事実である。この事実は、その相違がどのような理由から生じるのか、一層探求する価値のある疑問に結びつくと思える。なぜなら、この疑問は、相談員への有効なスーパービジョンのありかたを一層深く考察するのに直接役立つヒントを教えてくれると思えるからである。目下の予想としては、スーパービジョンを有効に活用することができる相談員ほど、苦難に直面した際に、その苦難の体験を自己の成長の糧として活用し、自身の個人的成長を図る動機や能力を持っているという仮説が立つのではないかと考えている。この点については、これからの期間での研究課題の中心に据えたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の目的である、逆転移を体験する相談員に対する有効なスーパービジョンのありかたを明らかにすることについては、ある程度達成してきていると考えている。本研究を進めるうえで、協力を得ているいのちの電話センターのスーパーバイザーや相談員の多くが協力的な姿勢を示し、自らの体験を積極的に語ろうとし、研究者の求めるデータの収集が容易に進んでいることは、令和4年度の報告でも触れたが、改めて注目に値することとして申しておきたい。相談員は、自身の電話相談活動での体験についてむしろ語る機会が欲しいとすら思っているようである。このことは、苦痛な体験は誰かに共感され、受け止められたいという思いが相談員にはあり、こうして提供される相談員からの実証的なデータは、逆転移を体験する相談員に対して効果を発するスーパービジョンの構成要件を把握するのを容易にしている。
今後に残る課題は、逆転移に効果を発するスーパービジョンのより緻密な検討である。この点については、スーパービジョンを有効活用して、逆転移を克服し、エネルギーを回復するたくましい相談員とそのようにならない相談員に関するそれぞれの事例のデータを収集する必要があると考えている。今後に残るこの課題についても、相談員の協力的な姿勢からして、研究に必要なデータが比較的容易に入手可能であると思われる。
以上から、全体を概観して、本研究に着手する当初において立てていた仮説が大体において支持され、実証されてきていること、そしてさらに先行研究からの示唆により本研究で証明しようとしている仮説の妥当性が得られていることから、本研究の現時点における進展状況はおおむね良好であると言える。

今後の研究の推進方策

今後取り組むべき課題は、
・相談員の逆転移に対して実施されるスーパービジョンが逆転移の解決・克服に効果的である場合と効果的ではない場合の間に存在する、相談員の個人的特性に見られる相違を明らかにすること。
・そのうえで、スーパービジョンが逆転移の解決・克服に効果的となるように配慮するべきことを明らかにすること。
これらの課題に取り組むためには、質的リサーチを中心に据える必要があり、具体的には、個々の相談員の逆転移に関する個人的体験を中心とした事例によるデータを入手し、分析することとなる。個人的体験にまつわる事例には、個々の相談員の性格や心理状態に関連する情報まで含まれる可能性があり、今後、十分な倫理的配慮の下で、考察に必要な範囲にとどめ、関連する情報を得たい。なお、従来計画していた、十分なサンプル数を得て、年齢、性別、活動動機、経験年数等の属性データに基づいて相談員の逆転移体験の特性を把握し、考察するとした研究計画は、実施するとしても、この考察に必要な最小の範囲に限定することとする。
相談員個人の特性を考慮した逆転移への対応については、協力を得ているいのちの電話センターのスーパーバイザーの間では、目下のところ、関心が払われてないように思われる。相談員のプライバシーへの侵害、クライエントの利益よりも相談員の利益が優先されかねない危険性、そして取り組むスーパーバイザーに求められる技術的、時間的、そして労力的な負担が、懸念される課題となりそうである。クライエントの利益を実現するために相談員に働きかける過程で、個人的成長といった相談員の利益をも副次的に実現されるスーパービジョの方法についての考察を深めるため、協力を得ているいのちの電話センターはもちろん、その他のセンターのスーパーバイザーにも研究協議のための協力を得たい。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] いのちの電話相談員の個人的成長を配慮したスーパービジョン ―ボランティアの個性の尊重という視点から―2024

    • 著者名/発表者名
      石田 敦
    • 雑誌名

      吉備国際大学保健福祉研究所研究紀要

      巻: 25

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] スーパービジョンのいのちの電話相談員への応用に関する問題 ―相談員の非専門職業家ボランティアという立場に関連して―2023

    • 著者名/発表者名
      石田 敦
    • 雑誌名

      吉備国際大学研究紀要(人文・社会科学系)

      巻: 33 号: 33 ページ: 77-87

    • DOI

      10.57431/00001337

    • URL

      https://kiui.repo.nii.ac.jp/records/1375

    • 年月日
      2023-03-22
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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