研究課題/領域番号 |
22K02058
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
卯月 由佳 国立教育政策研究所, 初等中等教育研究部, 総括研究官 (00718984)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 社会政策 / 教育政策 / 機会の平等 / 公正 / 子ども / ケイパビリティ・アプローチ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、第1に、子どもを支援する社会政策が機会の平等概念に依拠すべき理由について、ケイパビリティ・アプローチを手がかりに検討することである。第2に、機会の平等概念を再検討して得られた知見をもとに、子どもや子どもの暮らす世帯に向けて行われる経済的支援、福祉的支援、教育的支援等がそれぞれ必要となる根拠を考察することである。先行研究や政策資料のレビューを通じてこれらの課題に取り組む。 本研究の特徴は、子どもへの社会政策において社会的投資戦略の影響力が過度に強まることを批判的に捉える一方、子どもの権利を主張するだけでは達成されない、その権利の実質的な保障に必要な議論を行うことである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は第1に、子どもを支援する社会政策が依拠する規範として機会の平等の概念が有効となる理由について、ケイパビリティ・アプローチを手がかりに検討することである。第2に、機会の平等概念を改めて検討して得られた知見をもとに、子どもや子どもの暮らす世帯を対象として行われる経済的支援、福祉的支援、教育的支援等の広義の社会政策の必要性について考察することである。 2022年度は、ケイパビリティ・アプローチとそれを発展させた先行研究を手がかりとして機会の概念を精緻化するとともに、その平等化を図るための社会政策の一つとして教育政策に着目し、その規範として公正の概念について検討した成果を学会等で発表した。 公正は、機会の平等化を推進するための政策や実践を方向づけるとともに、その過程や成果を評価する規範となる概念である。またこれは、一般的に理解されている分配に関わるだけでなく、関係や対話に関わる規範であることも先行研究レビューにより明らかとなった。そこから、子どもたちがお互いに尊重し合う関係のもとで学び合える機会を創造すること、またその機会を創造する様々な主体の公正な連携・協働を実現することが、公正を追求する教育政策の課題であることを議論した。 ケイパビリティ・アプローチが個人主義的であり、不平等の問題を十分に検討できないという批判に対しては次の応答も試みた。確かにケイパビリティ・アプローチは全ての個人が機会を保障されているか評価することを重視する点で倫理的個人主義に整理される。しかし、機会が適切な人間関係や対話により影響されることへの着目も促し、分析の対象には個人が置かれる文脈や社会関係も含まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2022年度はケイパビリティ・アプローチに関する国内外の文献と社会政策に関する先行研究の検討を通じて研究課題を精緻化することを主たる課題としていたが、学会等での発表も行えたのは順調な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、子どもの現在の多様性と将来の生き方の多様性をともに尊重した社会政策の設計を阻害する要因として、「社会的投資戦略」への期待と「自己責任論」批判が併存したまま、子どもを投資対象とみなした社会政策が支持を受ける状況を批判的に検討するものである。そこで今後は、「社会的投資戦略」と「自己責任論」批判を相対化し、子どもの多様性を尊重した社会政策を設計する上ではケイパビリティ・アプローチを手がかりとした機会の平等の追求が有効となることを議論する論文を執筆する。
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