研究課題/領域番号 |
22K02098
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
永村 一雄 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60138972)
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研究分担者 |
袁 継輝 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10781437)
ALAM MD・ASHRAFUL 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (80866632)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 極値分布 / 再現期間 / 居住環境 / 極値統計 / 気象 |
研究開始時の研究の概要 |
降水量・風速、および1時間値気温データなどから、気象要素における種々の期間最大値の分布特性をもとめるべく極値分布を特定し、順序統計量として再現期間を推定する。その際、ベイズ統計を援用し、パラメタの分布特性そのものを推定したうえでモデルの評価を行い、これをもとに順序統計量を算出して再現期間を導出する。また、降水や風速、あるいは気温といった特定気象要素について、ベイズ統計を援用した最大値分布のモデル同定を目標とするだけでなく、各気象要素の同時生起確率も考慮した取り組みも併せて行う。
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研究実績の概要 |
(1)再現期間推定におけるMCMC手法の有意性の確認:気候変動による国内自然災害の大きなもののひとつは、降水による河川氾濫・洪水であり、これへの統計的資料として重要なものが再現期間の推定である。都市計画の基準として時間100-150mm降水量はそうした統計量のひとつである。近年の降水量をみると、再現期間100年が基準として成立するかは大きな課題である。現状の区間推定法のうち、MCMCによる確率モデル推定では、従来の推定より大きめの区間推定が示されるとの報告もあり、まずはこれを確認した。国内のアメダス1時間降水量より極値分布を求めて再現期間を推定したところ、やはりMCMC手法の推定結果は他手法に比し、あきらかに区間上方の拡大がみられ、結果として現状では危険度が増している状況であることが確認できた。 (2)最大降水量発現の経年変化:過去40年を10年区切とし、どの年代で最大降水量が発現しているかを全国800地点で調べたところ、あきらかに直近の10年が突出して多いことが有意に示された。同様に第2位、第3位順位などの順序統計量についてもこの傾向は表出しており、気候変動がこの10年で顕在化していることを歌付けた。 (3)複合気象要素の同時生起確率表現:上記現象も本来は複数の気象要素が同時に影響しあっての現象である。降水量や気温、あるいは風速といた単独要素の事象以上に、相互に依存した関係を記述できる確率統計モデルが必要である。計量尺度は無理としても、順位尺度ならば、コピュラモデルによる同時生起確率モデルが依存関係を記述できよう。実際に、建物の最大熱負荷設計指針に用いられる気温・日射・湿度の同時最大生起確率モデルを構成し、従来の手法にまさる構成法を構築できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温暖化の影響が顕在化したと考えられる近年の自然災害のうち、被害が甚大なものは河川氾濫や洪水のたぐいである。これらの直接的な因果にかかわる気象統計の一つは降水量であろう。過去40年分(1980-2020)のアメダス時間降水量をもとに、主要8都市での極値統計量を求め、時間100mmの区間推定を行って、指標の有効性を調べた。極値モデルには、一般化極値分布やグンベル分布など従来からよく用いられたモデルを流用した。また、モデルパラメタの推定、および区間推定には、従来法のほかに、MCMCによる確率推定も加味した。両者の違いが大きく現れたのは区間推定である。都市計画の基準に利用されることの多い時間100mm降水量について、再現期間を区間推定したところ、前者推定手法は比較的狭めの区間となったが、後者はとくに降水量が多い側の区間で幅が広がって推定された。この事象は海外の文献でも指摘されていたことであり、国内事例でも順調に再現性が確認できた。 また、温暖化の顕在化が経年でどう変化したかをさぐるべく、全国800地点を対象に最大降水量が発現した年代を探ってみた。これは過去40年を10年区切りに4区間とし、どの年代で最大降水量が顕著になったか、その傾向をみることができる。結果はあきらかで、直近の10年がもっとも発現頻度は高く、第2位、第3位順位の降水量においても、同様の傾向をあきあかにできたことは、当初の予定より早期に達成し得たといってよい。 くわえて、建物の空調設備設計に欠かせない最大熱負荷設計法に寄与するあらたな手法も開発した。これは複数の気象要素の同時最大生起確率を表現できるモデル表現であり、気候変動での複数気象要素の極値分布モデルのあらたな展開にも発展する可能性を秘めている。以上のように研究はいずれも順調に進展しているが、海外気象データの収集は思うように進んでいないのが懸念材料である。
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今後の研究の推進方策 |
国内での河川氾濫・洪水に資するための再現期間推定量の特定やその方法論はほぼ得られたので、今後は海外など他地域での適用を模索する。北米、欧州など先進国ではすでに適用事例が報告されだしているものの、気象災害が顕著で、かつ喫緊の課題として抱えている途上国の多いアジア州などでは、長期の信頼に足る資料が得にくく、報告自体も少ない。分担者の一人が母国バングラデシュの気象機関と資料入手に関して交渉中で、その許可が得られ次第、洪水に悩まされているバングラデシュでの同様の推定を行う。 降水以外の気象要素としては、インド周辺を中心に、毎年のように熱波が襲来している。国内でも、春先でありながら夏日となるなど、季節をまたいでの高温化の移行現象がみられることから、こうした傾向を統計的にあぶり出す統計量の選定をおこなう。 極値の発現は、複数の気象要素の極端現象が絡むことも多い。もともとこれまで取り上げた対象は単独要素での対応である。本来の発現事象は、複数要素からなる複合事象として発現している。そうした現象を対象にした統計量を求めるには、相互の依存関係を確率的に記述できる依存関係モデルが必須となる。幸いにも、そうした対象のひとつであった、建物の最大熱負荷設計法に寄与するコピュラモデルによる複数気象要素の同時生起確率分布モデル表現が援用できると考え、災害に関与する複数要素のとき込を検討する。
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