研究課題/領域番号 |
22K02111
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
三野 たまき 信州大学, 学術研究院教育学系, 特任教授 (00192360)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 耳ゴム圧 / 圧センサ / 曲率半径 / 装着感 / シリコン / 空気バッグ法 / 水バッグ法 / 衣服圧 / 時定数 / ナノカーボン / 衣服圧測定法 / 衣服圧測定器 / 凹面 / 耳紐 / 快適性 |
研究開始時の研究の概要 |
見た目重視で過度に圧迫するサポートウエアが市場に出回っており、快適な衣服圧と製品作りの指標とを提供する必要がある。また、COVID-19の感染拡大予防としての長時間のマスク着用も半義務化し、耳紐の痛みが問題になっている。着心地・着け心地の良い衣服やマスクの開発・提案のためには、生じた衣服圧とその官能評価は直接法の方が、比較検討しやすい。そこで、凹面の体部位の測定が唯一可能な液圧平衡法に着目し、例えばマスクの耳紐圧(曲率半径3.5mmの凹面の圧)を測定できる受圧部の開発をまず目指す。更に、受圧部の強度を増して消費者が自らの衣生活の快適圧を測定できる、安価で丈夫な簡易衣服圧測定器の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
耳ゴム圧を測定するために、測定可能な曲率半径耳の3Dモデルを作り、耳の付け根の曲率半径を測定したところ、付け根から10mm程度背側にかけて2.5mmから1.5mm程度に変化し、大変小さいことが確認できた。衣服圧は曲率半径と張力により求めることができると言われているが、耳付け根のような凹部で、かつ小さい曲率の部位に発生する衣服圧を正確に測定することは、かなり困難であることを確認した。 その困難な点は、①測定部位の曲率半径が2.5mm、多くとも3mm程度と小さいこと。②センサの硬さは耳付け根部分より柔らかくあるべき。③耳紐圧を測定するためには、細いセンサの上に、上手く耳紐が乗り切れない。ことであった。これらを考えあわせると、従来の柔らかい受圧部を用いて、耳の耳介に沿うように受圧部をまず装着し、その上で耳紐を置き測定し、その後接着面積を求めて換算した方が、より正確な値が得られる可能性がでてきた。正確な接触面積を得るために、測定部位の様子を撮影し、後に算出することで、より正確な圧値が得られることも可能と考えた。 レオメータを用いた受圧部への圧縮は、従来用いている液圧平衡法式の水バッグ(25mm ×15mm×0.8mm)とAMI社製の空気バッグ(20mmφ、2ml空気を封入)で比較すると、与えられた圧の出力値が異なった。つまり、後者は前者の70%程度出力であることがわかった。ただしこれは5hPa以下の圧値を受圧した時に発生する現象で、それよりも高い圧値であれば、両者の差はほぼ等しかった。 そもそも圧測定の受圧部が測定部よりも硬いと圧値が正確に反映されない。そこで、受圧部自身が変形しないものの、測定対象を変形させない工夫が必要である。そうなると、受圧部は測定対象部よりも柔らかいことが必須で、空気バッグのような硬いセンサは適さないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度購入を予定していた機器が価格高騰のため、昨年度の予算も少し今年度に移行して対処したが、本年度の予算では購入できなかった。そこで、本目的にかなう圧縮測定器の借り入れを考えた。本学の他学部での借り入れも考えたが、遠方であるため、通勤に時間を取られ、納得のいくまで測定するには難しいことがわかった。そこで本学部内で代用可能な機器が無いかを探したところ、折しも昨年度退職した教員の備品の中に山電㈱のREONERIIがあった。ただし、コントロールPCがWindows8と古く廃棄されていたことから、同バージョンの機種PCを入手し、当時のバージョンのシステムとドライバーを組み込み、可動可能なまでに整備できた。そのため、当初の予定より、やや遅れているが、研究を進めている。 従来の液圧平衡法の受圧部の水バッグとAMI社製の空気バッグの受圧部を用い、REONER IIで加圧し出力波形を比較したところ、両者には差があることがわかった。REONERIIに備え付けられた押し棒と受け皿はともに固めなプラスチック製の樹脂でできており、この両者を用いて、それぞれの受圧部を弱圧で加圧すると、前者では圧波形が高く検出され、後者では低く検出されることがわかった。両者の受圧部を共に重ねて圧すると、後者の圧も前者の圧と同様に高く検出された。またその弱圧の範囲は5hPs以下であったが、それ以上の高圧では両者の出力にはそれ程の差が無かった。このことから、女性の腹部などの皮下脂肪組織が多く分布される箇所では、後者の受圧部を使用した場合、実際の発生圧力より低い圧が検出される可能性が示された。それは受圧部測定部位よりも硬さが硬いため、その部位に埋め込まれてしまうため、圧力をうまく伝達できないことが考えられた。このことから、耳圧や凹部の圧を測定する場合、凹部表面になじむ受圧部が必要であることが、改めて確認された。
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今後の研究の推進方策 |
①:圧縮特性と圧出力との関係:従来の水バッグ圧センサとAMIの空気バッグセンサーを用いて、対象物の圧縮特性によって、圧出力がどの程度変化するかを詳細に調べる。2液性のシリコンを調整し、硬さの異なる数種類の測定対象物を作製する。女性の腹部を再現するためには、適正年度の液状シリコンを作製し、これをシリコン膜で閉じ込め、疑似腹部組織を作る。これを対象物とした時の圧出力を2つのセンサーを使って出力させ、押し込んだ力と対象物によって分散する圧力との関係を明らかにする。これにより5hPa以下の低圧による圧出力と受圧部の硬さの関係が求まる。 ②5hPa以上の加圧にはレオメーターは不向きである。そこで、手持ちのデジタルフォースゲージを用いて簡易型の圧縮機を手作りする。この時の圧縮棒はステッピングモーターを使ってコントロールし、その距離をレーザー変位計を用いて測定する。これを用いて中圧から高圧の範囲の圧縮特性を調べる。 ③耳紐圧の算出:作成した耳介モデルを用い、実際に数種類のマスクを用いて、耳紐圧を測定する。また、その時の接触面積を求めるために、耳介にインクを付け、装着した時の接触限界を明らかにする。また、その時のイメージを撮影し、実際の耳紐の幅と伸びを記録する。後にイメージから耳紐の受圧部に対する接触面積を算出し、出力値の補正を行う。これにより、耳紐圧を再現する。 ④マスク着用時の耳紐のきつさ感覚を比率尺度で表し、これと③で求めた耳紐圧との関係を求める。この関係が上手く合わない範囲を求め、①と②の受圧部と測定対象物の圧縮特性関係性を含めて再度検討する。 ①から④により、より正確な耳紐圧が測定可能となる予定である。
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