研究課題/領域番号 |
22K02120
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 宏子 和洋女子大学, 総合研究機構, 研究員 (60165818)
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研究分担者 |
工藤 由貴子 和洋女子大学, 総合研究機構, 研究員 (50331468)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 女性労働 / 基幹産業 / 家庭内労働 / 労働配分 / 世代間関係 / ジェンダー / 家族変動 / ジェンダー関係 / 農村女性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、日本有数の高級茶の茶生産地を研究対象地域とし、高度経済成長期以降の地域基幹産業の盛衰と家族変動との相互関係について、女性労働と家族員の情緒関係に焦点を絞り、第1に1970年代から今日までに、地域の基幹産業である茶生産の発展、隆盛、衰退という劇的な変化に対応するため、直系家族の農家女性たちは、農業労働、農外就労、家事・育児・介護などの家庭内労働の世代間労働配分をどのように形成・変更したかを明らかにする。第2に、家庭内外での女性労働の変化は、世代間関係やジェンダー関係という家族員の情緒関係にどのような変化、緊張や葛藤を生じ、調整が行われたかなどを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、地域の基幹産業の盛衰と家族変動との相互関係について、①女性の農業労働や農外就労および家事・育児等の家庭内労働の夫婦・親子間の労働配分の変化、②家庭内外における女性労働の量的・質的な変化が夫婦関係・親子関係およびジェンダー関係に及ぼした影響を明らかにすることを目的としている。 本年度は、昨年度の京都西陣、結城紬産地、福井県内陸部の繊維産業地域、岐阜市の既製服産地などの繊維関係の地場産業が盛んな製造業地域に関する先行研究の検討に引き続き、川口締氏の『家と村 共生と共存の構造』(農文協)から日本農村社会の原型的構造、永野由紀子氏の『現代農村における「家」と女性-庄内地方に見る歴史の連続と断絶』(刀水書房, 2005)等から山形県庄内地方・青森津軽地方・山梨県勝沼地域における農業の機械化・兼業化などによる農業労働・集団的労働組織・互助システムなどの変化と女性の家庭内での役割分担・生活意識の変容、西尾敏男氏の『愛知で発展する主婦農業と問題点』(農林統計調査,1965)および渡辺めぐみ氏の『農業労働とジェンダー 生きがいの戦略』(有信堂,2009)から農業者の世代間の労働配分パターンなどについて検討した。 一方、新型コロナ感染症の影響が収まるにつれ、調査対象地域である静岡県藤枝市岡部町における高齢者調査が徐々に実施できるようになった。そこで、茶・ミカン・筍・水田・花の生産や養鶏業に長年従事してきた農家女性7名、岡部町役場に長年勤務した元役場職員5名に対する半構造化インタビュー調査と座談会を行った。 さらに、静岡県藤枝市社会福祉協議会による地域福祉事業基礎資料を閲覧し、岡部町内の5つの自治会別の世帯や人口に関する統計データ、地域福祉基礎データを集計し、平成21年から令和5年までの14年間におけるコミュニティの変化と課題について分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の先行研究の検討で特に注目されるのは、西尾敏男氏の『愛知で発展する主婦農業と問題点』(農林統計調査,1965)が農家女性の労働は「農業労働」と「家事労働」という二重の肉体的負担を負っていることを指摘している点、渡辺めぐみ氏の『農業労働とジェンダー 生きがいの戦略』(有信堂,2009)が家族農業経営におけるジェンダー・バイアスから性別役割分業が生じる過程を明らかにしている点であった。そして、農業者の世代間の労働配分パターンとして、「嫁世代は農業、姑世代は育児・家事」、「嫁世代は育児に専念し、姑世代は農業」、「姑は農業と家事・育児、嫁は雇用労働者」「嫁・姑ともにパートタイマー」が明らかになった。また、山形県庄内地方では、稲作の基幹労働力に男性を配置し、嫁世代は雇用労働者として工場等で働き、姑世代は育児・家事を担当するのが基本だったが、農家や農村をとりまく内外の状況変化に対応して、世代間分業と性別分業を重ね合わせながら、農作業と農外就業と家事労働といった多岐にわたる活動分野に家族成員をたくみに再配分しつつ、家産と家業を基盤とする生活保障システムとしての「家」を維持(永野2005)したことが明らかになった。 一方、岡部町地区の14年間の人口・世帯等の分析を進めたところ、岡部町では人口が5.7%減、年少人口が9.5%減、生産年齢人口が10.1%減であるのに対して、高齢化率は7.7%増、後期高齢人口は7.5%増、一人暮らし高齢者は13.8%増と、この14年間に少子高齢化が劇的に進んだことが明らかになった。しかし、その一方で老人クラブやふれあいサロンはすべて解散し、会員はゼロとなったことも浮かび上がった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度実施した半構造化インタビュー調査および座談会の録音データを整理し、①茶生産の盛衰に対応するために、農家女性の農業労働や農外就労、家事・育児・介護などの家庭内労働の世代間・夫婦間配分をどのように形成・変更したか、②女性労働および家庭内労働の世代間・夫婦間分業はどのように変化してきたか、③女性労働および家庭内労働の世代間・夫婦間分業は、夫婦関係・親子関係・嫁姑関係にどのような緊張や葛藤を生じ、どのような調整が行われたか、④岡部町の住民意識はどのように変化し、コミュニティはどのような課題を抱えているか、⑤困難になっている農業経営の世代間継承プロセスの実態と持続可能性などについて分析・考察する。また、岡部町の1970年代から今日までの産業構造と就業構造の変化、兼業化の推移などについて、①温州ミカンから茶生産への転換期、②茶生産の発展期、③茶生産の隆盛期、④茶生産の停滞・衰退期、の4期に分けて、本地域の基幹産業の変動について明らかにする。さらに、令和5年度に実施した調査および座談会の分析結果と岡部町における50年間の家族・地域変動に関する統計資料を踏まえて岡部町視察を実施する。視察では、岡部町住民・旧岡部町役場職員・町内の社協・福祉施設の職員らとの意見交換会・交流会を行う。意見交換会・交流会には、1980年当初より本調査研究の指揮をしてきたお茶の水女子大学名誉教授袖井孝子氏、本科研費の分担研究者である工藤由貴子氏にも参加をお願いする。 また、海外の共同研究者である韓国公州国立大学教授チェ・ジュンヨル氏、韓国忠南国立大学准教授キム・ジュヒョン氏らと韓国の中山間地域における農村家族・農村女性の視察・調査を行い、女性の農業労働や農外就労、家事・育児等の家庭内労働の夫婦間・親子間の労働配分の変化、地場産業の世代間継承プロセスなどについての比較研究を再開したいと考えている。
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