研究課題/領域番号 |
22K02141
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
横井 克彦 聖徳大学, 人間栄養学部, 教授 (10200883)
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研究分担者 |
許斐 亜紀 安田女子大学, 家政学部, 講師 (40529658)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 老化 / ミネラル / 微量元素 / ニッケル欠乏 / 高血圧 / ナトリウム利尿 / 栄養 / 鉄欠乏 / 行動異常 |
研究開始時の研究の概要 |
わが国は高齢化に伴い脳変性疾患が急増する一方で、鉄の摂取不足と高血圧が蔓延している。申請者は、鉄欠乏が疲労と精神症状を招き、超微量元素ニッケルの欠乏が陽イオン輸送に関連する機能(精子運動能、嗅覚、視覚等)を障害することを報告して来た。本研究では、ラットを用いた動物実験でニッケル欠乏による高血圧発症を示し、鉄欠乏による脳や行動の異常を検出し、その発症機序を検討する。
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研究実績の概要 |
わが国は高齢化に伴い脳変性疾患が急増する一方で、鉄摂取の不足と高血圧が蔓延している。また、生殖機能に関わる超微量元素であるニッケルは、同時に陽イオン輸送の調節因子であり、ニッケルの欠乏が高血圧の発症に関与している可能性がある。そこで本年度は、ニッケル欠乏が雌ラットの血圧に及ぼす影響について保存試料を用いて検討した。 ニッケル欠乏飼料の摂取で、飼育2週目から8週目まで収縮期血圧が有意に上昇し、飼育4週目から8週目まで平均血圧および拡張期血圧が有意に上昇した。一方、食塩の過剰摂取では、飼育8週目に初めて収縮期血圧のみが有意に上昇した。ニッケル欠乏による高血圧の発症は、単純な食塩過剰によるものより顕著であった。8週目に、絶食下での生理食塩水負荷後3時間の尿中ナトリウム排泄量は、ニッケル欠乏で有意に低下した。尿中塩素イオン濃度の尿中排泄はニッケル欠乏で低下する傾向はあるものの有意差はなかった。8週目に絶食下で生理食塩水負荷前に得た蓄尿中ナトリウムの排泄速度は、ニッケル欠乏、食塩過剰、交互作用のすべてが有意で、食塩過剰によって生ずる尿中ナトリウム排泄速度の上昇がニッケル欠乏で増強した。これは、ニッケル欠乏によってナトリウム利尿が低下した結果、本来摂餌中にほぼ完了するナトリウムの排泄が絶食中まで遷延し、ニッケル欠乏によって増強したものと推定される。絶食蓄尿中の尿中NO(硝酸イオンと亜硝酸イオンの和)の排泄速度は、ニッケルが充足している場合は食塩過剰で上昇し、全体としてはニッケル欠乏で有意に低下する効果が見られた。この間の尿中のニッケル排泄速度もニッケル欠乏で有意に低下した。 これらの結果から、ニッケル欠乏における高血圧の発症機序の1つとしてナトリウム利尿の低下があり、これにNO代謝が関与している可能性がある。また、ラットの行動についても動画の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しており、ニッケル欠乏で早期の段階から血圧が上昇し、高血圧を生ずることが明らかとなった。そのメカニズムとしてナトリウム利尿の低下が関与していることを示す結果が得られた。血圧調節ならびにナトリウム利尿の調節には、様々なメカニズムがかかわっているが、今年度の研究でNO(一酸化窒素)代謝が関与していることを示すデータが得られた。ニッケル欠乏によって尿中ニッケル排泄速度が低下することが明らかとなった。このことから、腎臓においてニッケルが血圧調節ならびにナトリウム利尿の調節に関与している可能性が考えられる。ニッケル欠乏による高血圧の発症は、食塩過剰による高血圧の発症より早いことも明らかとなった。また、ニッケル欠乏で行動の変化を生ずることを示唆する結果も得られたので、さらに検討を続ける必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、昨年度から引き続き、各種ホルモン類の分析やミネラルの分析を行い、ニッケル欠乏に伴う高血圧の発症機構について探索するとともに、行動解析の深化を図る。また、ニッケル欠乏に伴う生理学的な変化にかかわると想定されるタンパク質の遺伝子発現も検討する。
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