研究課題/領域番号 |
22K02150
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 滋賀短期大学 |
研究代表者 |
小山内 幸治 滋賀短期大学, その他部局等, 教授 (40204177)
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研究分担者 |
西尾 圭一郎 大阪公立大学, 大学院経営学研究科, 准教授 (20453368)
北野 友士 大阪公立大学, 大学院経営学研究科, 准教授 (90532614)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 金融リテラシー / 金融教育 / 金融ジェロントロジー / リタイアメントプラン / ファイナンシャルプランニング / 金融包摂 / 社会的包摂 |
研究開始時の研究の概要 |
わが国では高齢化の進行は喫緊の課題である。しかし、高齢者の抱える金融問題に焦点が集まる一方、ではどのような金融教育が高齢者や関係者に必要であり、どうやってそれを提供するのか、どのような金融教育が有効であるのか、といった臨床面での研究はほとんどなされていない。申請者らはこれまで金融リテラシーの現状や求められる金融教育の研究を積み重ねてきた。その蓄積を、全国各地の高齢者を支える公的機関等へのヒアリング調査とwebアンケート調査を通じて高齢者向けにアジャストし、高齢者の金融包摂を通じた社会的包摂を助ける教育プログラムを構築することを目指している。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、基礎データの収集、分析を通じて、若年者から高齢者までの金融リテラシーと金融関連の状況を整理した。筆者らは、令和5年2月8日から 約1週間ウェブ上で、全世代に向けた金融リテラシーとリタイアメントプランに関するアンケート調査を実施した。総サンプル数は2400人であり、年代の区分は男女別に18歳から34歳、35歳から49歳、50歳から64歳、65歳以上の4区分で行った。年代分布は各600人、男女比50%であり、均等である。内容は、①職業や年収に関する基本的な属性情報の質問2項目、②インフレーションや金利、分散投資など回答者の金融リテラシーを測るための質問6項目、さらに、③老後への備え、金融サービスの利用状況、金融トラブルへの遭遇など回答者の金融関連の状況に関連する質問10項目が含まれている。令和5年度は、上記のアンケートで得られたデータのうち、65歳以上の年齢層について統計的な分析を行った。その結果、現在の年金受給世代における金融リテラシーの高さは老後資金の準備状況にポジティブな影響を与えていた。また年金受給世代における継続的な収入源としての利子・配当所得、厚生年金、個人年金保険などにも金融リテラシーが影響を与えていた。さらに年金受給世代の物価上昇対策についても、金融リテラシーの高さがより適切な行動の選択につながっている可能性が指摘できた。加えてロジスティック回帰分析の結果から、利子・配当所得、金融リテラシー、金融機関等のオンラインサービスの利用、および厚生年金の受給(=現役時の有職者)、といった要素が年金受給世代における老後資金の準備状況について、統計的に有意な水準でポジティブな影響を与えていた。 さらに、大阪公立大学「介護相談窓口」の介護アドバイザーへのヒアリング調査を行い、介護アドバイザーからの視点の老後の金融問題に関するケース分析の必要性を認識した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 当初の研究計画では、初年度の現状分析を踏まえたうえで、高齢者の金融問題に日々取り組んでいる諸機関に対してヒアリング調査を行う予定であった。調査にあたって、各地域の関連諸機関にインタビューやアンケートの申し込みを行ったが、十分なデータを持ち合わせていない等の理由で、引受先が見つからなかった。 唯一、大阪公立大学に一時的に開設されていた「介護相談窓口」(令和6年3月閉所)の担当介護アドバイザーにたいしてヒアリング調査を行うことができた。この中で、高齢者の介護にかかわるケースの分析の必要性を認識した。しかしながら、データとしては十分とはいえないので、引き続きデータの収集を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、令和5年度に行ったアンケートの年代別の特徴を把握し、さらに高齢者層と他の年代層との違いを明確にすることに取り組んでいる。これにより、高齢者層への金融に関する支援を理解する上で有用な基礎資料が得られる。また、前年度までの現状分析を踏まえたうえで、高齢者の金融を含む問題に日々取り組んでいる諸機関で働いている職員を対象にヒアリング調査・アンケート調査・ケース収集を行う。これを円滑に進めるため、新たに現役の介護アドバイザーおよび現場と結びつきの強い大学院教授を研究協力員として依頼した。これにより介護にかかわる高齢者の金融包摂もしくは金融排除の実態、現場からみたデジタルデバイドの状況と金融リテラシーとの関係の実感、喫緊の課題となっている金融包摂のための支援策、高齢者の支援者もしくは介護者への金融教育的な支援の把握などを行う。ケースについては、ケース収集後、金融に関するカテゴライズを行い、高齢者の金融包摂もしくは金融排除、支える家族の金融問題などの実態を把握し、今後の支援策を検討する際に資するために学術誌等で発表し、基礎データとして公表する。
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