研究課題/領域番号 |
22K02161
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大富 潤 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (10253915)
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研究分担者 |
大富 あき子 東京家政学院大学, 人間栄養学部, 准教授 (90352468)
井野 睦美 東京家政学院大学, 人間栄養学部, 助手 (30850739)
熊谷 百慶 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (70863083)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 未利用資源 / 食材開発 / 外食 / 観光 / 深海魚 / 物性 / 機能性物質 / 海上投棄 / 分類 / 低・未利用水産資源 / 外食産業 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、専門分野を異にする研究者が新食材の開発と水産資源の有効利用のための学際的研究に共同で取り組むものである。洋上フィールド調査に始まり、消費者対象の食味検査、食材開発、機能性物質の定量による外食産業や加工食品への導入に至るまでのプロセスを有する。 深海性の魚介類は分類学的研究や資源生物学的研究が遅れており、潜在的には市場価値がありながら有効利用されていない種が多い。本研究では敢えてそのような種に着目し、資源生物学的特性や個体群動態機構の解明を試みる。本研究は水産業の維持発展のための魚食普及への貢献を念頭に置いており、当該漁業者の所得向上と漁船漁業の活性化に寄与するものでもある。
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研究実績の概要 |
深海性の魚介類は分類学的研究や資源生物学的研究が遅れている。本研究は、フィールドでの定点資源調査による未利用資源の探索と生態の解明、さらには外食産業用の食材開発のための知見を得ることを目的としている。 鹿児島湾に同所的に分布するオオメハタ属の近縁な2種について、最適漁場を探索する目的で分布を調べた。その結果、オオメハタは湾奥部と湾中央部で採集され、水深200m以上の最深部にも出現し、先行研究とは異なる分布水深が示された。また、湾奥部で有意にCPUEが高かった。一方、ワキヤハタは湾奥部には出現しなかった。湾最深部では両種のCPUEに差はなく、それ以外ではオオメハタが優占していた。両種ともに、浅場では小型個体、深場では大型個体の割合が高かった。 未利用種のアイアナゴとニセツマグロアナゴについて、生、茹で、焼きの調理後の色と物性の変化を調べ、有用種のマアナゴ、低利用種のクロアナゴと比較した。その結果、焼きの色においてアイアナゴはマアナゴと差がみられなかった。茹でにおいてはマアナゴに比べて未利用2種はやや明度が低かった。焼きの物性については、マアナゴとクロアナゴのかたさ荷重および破断荷重に有意差はなく、未利用2種はマアナゴに比べて有意に軟らかかった。茹での物性については、アイアナゴはかたさ荷重及び破断荷重が、ニセツマグロアナゴはかたさ荷重がマアナゴに比べて有意に低く軟らかいことがわかった。 昨年度に引き続き、新たな魚種についてイミダゾールジペプチドの含有量を調べた結果、ワキヤハタに比較的多くのアンセリンの含有が認められた。また、アイアナゴ、ニセツマグロアナゴおよびマアナゴについて脂質量と脂肪酸組成を調べた結果、未利用2種はマアナゴに比べて脂質含有量が低く、異なる脂肪酸組成を示した。さらに遊離アミノ酸を定量した結果、未利用2種はマアナゴに比べてタウリンの含有量が顕著に高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールドにおける試験底曳網調査により、新たなる魚種について分布に関する知見が得られた。昨年度に引き続き、未利用なアナゴ類2種(アイアナゴ、ニセツマグロアナゴ)を食材開発候補種と考え、料理提供において重要な調理前後の色彩について有用種との比較に関するデータを増やすことができた。また、これらの種について脂質量と脂肪酸組成、遊離アミノ酸量に関する知見が得られた。特に、未利用2種のタウリン含有量が高いという興味深い結果が得られた。コロナ禍が緩和された今年度は、外食産業におけるメニュー開発に活かすための、一般消費者の食生活の現状および魚食に関する意識についてアンケート調査を行った。年度末を締め切りとして回答を得たため、分析は来年度となる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度もフィールド調査に基づく未利用資源の探索、生態学的特性の解明を継続し、更なる食材開発候補種を増やすとともに、未利用アナゴ類の料理の色彩や物性、脂質量、脂肪酸組成、遊離アミノ酸量等について、近縁な有用・低利用種と対比させながらデータを蓄積する。これらの種の調理性について、官能評価を実施し、実験データと官能評価の結果の関連性を検討する。さらに、今後もできるだけ多くの種について継続的に機能性物質の分析を進め、イミダゾールジペプチド(IDP)をはじめとする機能性ペプチドについて、種間の違いや種内の生息水深と機能性ペプチドの含有量の関係に関する新たな知見を得たい。 実践的な展開として、「かごしま深海魚研究会」による取り組みをさらに充実させ、料理店等との連携を深める。メニュー開発のために消費者意識をうかがうために実施したアンケート調査の分析も行いたい。
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