研究課題/領域番号 |
22K02166
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
緒形 雅則 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (20194425)
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研究分担者 |
幅田 智也 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (20286389)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 注意欠損多動症 / 良好生活環境 / 運動療法 / 高蛋白質ケトン食 / 生活環境 / 幼若期ドーパミン神経系傷害 |
研究開始時の研究の概要 |
注意欠損多動症(ADHD)は、成人後も多様な行動異常が続く慢性的な疾患であり、治療薬の長期服用にともなう副作用への不安も大きい。糖質を制限した食事が脳細胞の異常興奮であるてんかんの治療に用いられている。また定期的な運動や良い養育環境が子供の成長に良い影響を及ぼすことも知られている。一方で、それらを併用してADHDの治療につなげた研究やその効果発現の仕組みを調べた研究は少ない。本研究ではADHDモデル動物を用い、飼料、運動、飼育環境がその症状改善におよぼす効果を検討し、薬物に頼らずに、科学的に裏付けされた生活の一部がADHD治療へ応用できることを明示し、新たな治療法の開発の一助とする。
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研究実績の概要 |
生後5日目の幼若期ラットを用いてドーパミン神経系を選択的に傷害することにより注意欠損多動症(ADHD)モデル動物を作製した。作製には、ノルアドレナリン神経系保護のために、30分以上前に塩酸デジプラミン(25mg/kg)腹腔内投与を前処理として行い、続いて両側の側脳室にカテコールアミン神経毒である6-hydroxydomamine(50μg/side)を注入した。 今年度は飼育環境の改善として前年度の筒のみの使用に加えて、回転車をケージ内に入れ随意的に動物が運動をすることを可能とした環境群を加えて、ADHDモデル動物が示す異常行動に対する飼育環境の効果を検討した。行動実験として、新規環境下での行動量をオープンフィールド試験、不安関連行動を高架式十字迷路試験により解析をした。また慣れた環境下での行動量を24時間ホームケージ試験により調べた。 ADHDモデル動物は通常の飼育環境では、新規環境下で多動を、さらに不安の多い領域に行く時間の増加を示していた。また慣れた環境下では行動量の減少を示した。飼育環境の改善として筒のみを2個入れた環境の飼育では、モデル動物が示した前記の異常行動に対する顕著な改善効果は認められなかった。一方で、運動要素を取り入れた筒と回転車をケージ内に入れた良好環境飼育では、新規環境下での異常不安行動の有意な改善が観察された。さらに慣れた環境下での運動量減少に対しても改善傾向が認められた。 前年度の成果により定量的運動負荷としてのトレッドミルの条件設定が終了しており、今年度の結果から運動による異常行動改善効果が示唆されることから、モデル動物に対するトレッドミルの効果を検討した。現時点では、例数が少ないため明確な改善効果の判定は困難であるが、今後、例数を増やし次年度以降、詳細に有効性の有無を検討していく所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に、トレッドミル条件設定に想定以上の時間を費やしたことから、当実験の開始が遅れていた。さらに今年度後半に使用していたトレッドミルのベルトが劣化に伴い破損してしまい、実験の継続が不可能な状態になってしまった。その後、部品の入荷や修理に時間を費やしてしまい、新年度の4月以降に修理が終わる予定である。それらの理由からトレッドミル実験の遅れが生じ、現時点では十分な例数が揃っていない。 また実験計画では行動実験後に行う計画となっていた組織学解析においても、行動実験が不十分であり遅れていたことから、予定通りに解析が進まなかった。しかし、筒と回転車を用いた良環境で飼育した動物の脳サンプルの保存までは実験が進んでいることより、次年度以降に例数を増やすとともに、薄切と免疫組織化学染色を精力的に遂行していく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、トレッドミルの修理終了後にトレッドミル単独でのモデル動物の異常行動に対する改善効果実験を再開していく。その後、トレッドミル単独による改善効果が認められた場合は、回転車を含む良環境飼育との併用効果を検討していく。また次年度は、高蛋白質ケトン体産生食との併用効果に関する実験も始める。以前の研究により、ADHDモデル動物の異常行動に対する高蛋白質ケトン体産生食の単独処置は、多動や一部の異常不安関連行動を改善することが確認されている。今後、本研究の総括に重要であるケトン体産生食の単独効果は例数を増やし効果を確認しつつ、異常行動改善効果が認められた筒と回転車を含良環境飼育との併用効果、相乗効果を検討していく。また、トレッドミルは不随意な運動であり、強制的な側面を持つ運動による効果検討実験である。次年度は、今年度末に購入した回転数を定量的にモニター可能な回転車付き飼育ケージでの飼育を開始し、随意運動の効果を定量的に検討し、運動量と異常行動改善効果の相関性についても調べる。さらにトレッドミルの効果と比較検討を行い、随意、不随意の相違による運動効果の変化を明らかにする。 また次年度は最終年度であるため、これまでの行動実験結果をまとめ、発育環境、運動、ケトン体産生食の各効果を詳細に分析する。そしてモデル動物の異常行動に対する改善効果が最も良好であった処置の併用効果についても総括を進める。その過程で、併用効果検討実験に追加が生じた場合は、適宜、行う予定である。 行動実験の結果を整理、総括するのと並行して組織学的検討も進め、モデル動物の異常行動の背景にある脳内責任領域と運動、環境、ケトン体産生食が及ぼす改善効果の神経機構を確定していく。そして最終的には、生活環境因子である、運動、食事、発育環境の科学的に裏付けがされた治療への応用を実現すべく基礎研究結果を社会に開示していく所存である。
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