研究実績の概要 |
本年度は、まず、ヒト大腸癌培養細胞のNox1及びその関連分子(NoxA1, NoxO1, p22-phox)の遺伝子について、それらの発現量(転写量)を定量性PCR法(qPCR)で定量するシステムの確立に取り組んだ。調査した細胞株のうち、JCRB細胞バンクより提供いただいたヒト大腸癌由来のDLD-1細胞はこれら全ての遺伝子を発現しており、今回の実験目的に合致することが分かった。次に、DLD-1細胞を種々の分化誘導剤(レチノイン酸、活性型ビタミンD3及びインターフェロンγ)で処理した後に、Nox1及びその関連分子(NoxA1, NoxO1, p22-phox)の遺伝子の発現量を定量した。その結果、レチノイン酸がNox1の転写量を約2倍に増強することが明らかとなった。これらの結果を受けて、細胞としてDLD-1、分化誘導剤としてレチノイン酸を用いてNox1及びその関連分子(NoxA1, NoxO1, p22-phox)の遺伝子発現の変化を評価するシステムの構築が完了した。次に、DLD-1細胞を種々のフィトケミカル+レチノイン酸で処理した際のNox1及びその関連分子(NoxA1, NoxO1, p22-phox)の遺伝子発現量を調べたところ、特にスルフォラファンが顕著な抑制効果を示した。来年度以降は、対象となるフィトケミカルの種類を増やして、それらの効果を検証して行く予定である。 一方、フィトケミカルが白血球の活性酸素産生系Nox2に及ぼす影響の解析については、緑茶の旨味成分として知られるL-テアニンがこれを強力に活性化することを見いだし、Microbiology and Immunology誌に発表した(Kikuchi H. et al., Microbiol. Immunol., 66: 342-349, 2022)。
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