研究課題/領域番号 |
22K02181
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
中田 理恵子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (90198119)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 葉酸 / 葉酸欠乏 / コリン / 脂質代謝 / ホモシステイン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、葉酸欠乏によって誘導されるホモシステイン・メチオニン代謝の乱れが、動脈硬化症や脂質代謝異常のリスク因子として作用するのか、分子レベルでそのメカニズムを解明することを目的とする。本研究の成果から、実験的エビデンスを基に葉酸の新規機能を明らかにするとともに、日々の食生活への応用から健康長寿社会の実現に寄与する葉酸摂取の重要性を提言したいと考えている。
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研究実績の概要 |
メチオニン代謝の中間代謝物であるホモシステイン濃度の上昇が、脳血管系疾患の発症に関わるリスク因子であることが注目されている。私たちは、葉酸の生体内での機能を明らかにすることを目指し研究を続けており、葉酸がホモシステイン代謝関連酵素の発現を遺伝子レベルで調節していることを明らかにし、葉酸が主要な調節因子であることを見出している。一方、メチオニンおよびコリンを欠乏させたマウスは、脂肪肝発症モデル動物として利用されている。葉酸はメチオニン代謝に必須であることから、葉酸あるいは葉酸とコリンを欠乏させた条件でも、肝臓への脂肪蓄積が誘導される可能性が考えられる。そこで、前年度に続き、葉酸あるいは葉酸とコリンを欠乏させたマウスを用い代謝変動の解析を行った。 C57BL/6Jマウス(雄性,7~8週齢)に、葉酸とコリンを含む高脂肪食、葉酸欠乏食、コリン欠乏食、葉酸・コリン欠乏食のいずれかを自由摂取させた。20週間後に血液、肝臓、脂肪組織を採取し、解析に用いた。 体重および脂肪組織重量に4群間の差はなかった。葉酸欠乏群では、血漿の総コレステロール、non-HDLコレステロール、遊離脂肪酸の減少が認められた。葉酸・コリン欠乏群では、葉酸欠乏群の変化に加え、血漿リン脂質の減少と肝臓トリグリセリドおよびコレステロールの増加が認められた。一方、コリン欠乏群ではこのような変化は認められなかった。 以上の結果より、高脂肪食摂取時に葉酸が欠乏すると脂質輸送に障害が生じ血漿の脂質量が減少すること、コリンを同時に欠乏させると肝臓の脂質量が増加し脂肪蓄積が誘導されること、葉酸・コリンの同時欠乏時の脂質代謝の変動にはコリンより葉酸の関与が大きいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホモシステイン・メチオニン代謝の変化が、脂肪肝発症に関連する可能性が考えられている。葉酸がホモシステイン・メチオイン代謝の調節に必要であることから、脂肪肝等の脂質代謝障害の進展に対する葉酸の影響を明らかにする必要があると考えて研究を進めている。 現在までに、高脂肪摂取時の葉酸欠乏は脂質輸送に障害を与え血中脂質を低下させ、さらにコリンが同時に欠乏すると増悪化し肝臓への脂肪蓄積が誘導されること、葉酸・コリンの同時欠乏時の脂質代謝の変動にはコリンより葉酸の関与が大きいことを見出しており、研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、高脂肪摂取時の葉酸欠乏が脂質代謝に障害を与え、肝臓への脂肪蓄積を誘導する可能性を見出した。そこで今後は、葉酸欠乏によって誘導される脂質代謝の変化が、ホモシステイン・メチオニン代謝に関わるベタイン(コリン代謝物)やビタミンB12等の摂取によって改善されるのか、あるいは葉酸の補充によって改善するのかを検討する予定である。ヒトへの応用を視野に入れ、ホモシステイン・メチオニン代謝を制御することによる脂肪肝のリスク軽減・予防の可能性を明らかにしたいと考えている。
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